映画館の予告で見たいと思っていた「引っ越し大名」を先日見に行ってきた。「のぼうの城」とか「超高速参勤交代」と同じ監督の作品という。
歴史マニアの小生、これまでも「武士の家計簿」とか「包丁侍」など見てきたが、今回の作品は、参勤交代とともに江戸時代の大名にとって宿命だった国替えをテーマとしているところがツボに来た。
小生もいわゆる転勤族で、引っ越しは何度もしたが、大名ともなれば・・・で。
物語は姫路から日田(大分県)への国替えを命ぜられた松平直矩(及川光博)の引っ越しをテーマとして進行する。ちなみに松平直矩は実在の大名で生涯七度の国替えを命ぜられたという。
場所も江戸から遠くなり、さらに石高は半減という大ピンチに引っ越し奉行を任ぜられた片桐春之介(星野源)の命運は・・・というもの。
詳細はご法度だから避けておくが、サラリーマンの宿命である転勤・左遷・リストラ・・・いろんな要素がちりばめられていて楽しめるだけでなく、身にもつまされる内容であった。
また、今でいえばキャリアとノンキャリアにあたる武士のランク(しかも世襲で代々変わらない)の悲哀なども取り込まれていてマニアにも楽しめるものだった。
個人的な趣味だが、及川光博、高橋一生、高畑充希、松重豊などまさにハマリ役で、いい作品になっていると感じた。
特に改めて素晴らしいと感じたのは高畑充希の演技だ。失礼ながら図抜けた美人という感じではないが、時にフワッと、時にシリアスに・・・変幻自在に漂ってくる空気感は彼女ならではだ。
また歌が上手いことでも定評のある彼女だが、この作品の中ではそれも楽しめる。もちろん、高橋一生の写真のような波乱の展開もお約束だ。
といいつつ、いよいよこれでハッピーエンド・・・かと思ったところからの感動の展開にはすっかりやられてしまった。
国替えと参勤交代が、日本のサラリーマン独特のスタイルを形成したことは疑いのないところだ。
小生自身も当たり前のようにやってきたが、世界的に見ればありえない制度のようだ。皮肉にもそのルーツは江戸時代にあったというのは象徴的だ。
一方で、検地から国ごとの数量的なランク付けが可能になり、結果として国替えができたのだが、それはすなわち大名(および家臣)がサラリーマン化したことを意味する。
さらに参勤交代などで大名はお金を使うのだが、結果として街道沿いにはお金が落ち、流通が発達した。
信長・秀吉の流れで貨幣経済が進みつつあった時代を米本位制に戻そうとした家康だが、皮肉にも徳川幕府の政策で結果的には貨幣経済が進行したし、百姓は生産性の向上で、(表向きはともかく実態は)とんでもなくリッチになった。
歴史にタラレバはないが、いろんな要素が歯車のように絡んでいることを改めて実感してしまった。
なんて理屈をこねなくても、純粋に楽しめる作品である。皆さまにもお勧めしたいなあ。
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