アレルギーの原因となる食べ物をあえて食べながら、子どもの食物アレルギーを克服しようとする試みが本格化している。医療機関ごとにばらばらだった治療の確立を目指し、複数施設の協力による臨床研究も始まった。
ただ、まだ確立した治療法ではなく、リスクも伴う。
卵、牛乳、小麦、ピーナツなど特定の食品を食べるとじんましんやかゆみ、皮膚の腫れ、嘔吐(おうと)などのアレルギー症状が出る食物アレルギーに悩む子は多い。
呼吸困難や血圧低下などの全身症状が激しく出る「アナフィラキシーショック」が起こる場合もある。2007年3月、文部科学省が調査したところ、小学生から高校生約1280万人のうちの2・6%が、症状が軽いケースも含め、食物アレルギーだった。
神奈川県立こども医療センターなどが臨床研究として独自に取り組んでいるのは「経□免疫療法」。
実は人間の体の仕組みからすると、□から入り腸で吸収される食べ物にはアレルギーなどの免疫反応が起きにくいとされる点を利用する。
同センターの栗原和幸部長は「食べることで、本来体が持っている免疫を強める」と説明する。
例えば、卵アレルギーの場合、まず、生卵の白身から作った粉を少しずつ飲む検査を実施、アレルギー症状が出る最低量を決める。
そこから1日数回、毎回の量を前回よりも20%ずつ増やしてジュースなどに混ぜて飲む。ある程度の量になったら卵料理に変えて、卵1個に相当する約60㌘が食べられるようになるまで続ける。
途中でアレルギー症状が起きたら、薬などで症状を抑えながら前の量に戻す。数週間で目標量に到達する子どもが多い。
07年から、卵、牛乳、ピーナツ、小麦のアレルギーを持つ5~14歳までの約40人に実施した。
短期間で急速に食べる量を増やしていくため、万が一に備え入院してもらう。アナフィラキシーを抑える処置をした子どもは1入いたが、最終的には全員、食べても症状が起こらなくなった。
これまで食物アレルギーに対しては「原因食物を除き、食べさせないのが常識だった」(栗原部長)。
だが臨床医の間では、少しずつ食べ続けていると、いつのまにか症状が起こらなくなるなどの現象は知られていた。数年前からは国内外で食べて治す治療が有効であるという実績が報告され始めた。
ただ食物アレルギーは乳幼児では5~10%と発症率が比較的高いが、小学校に入るぐらいまでに自然に食べられるようになる子どもも多いため、「低年齢の子どもがむやみに治療しても、不必要な場合も多い」と国立病院機構相模原病院の海老澤元宏部長は話す。
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