やっと出力が出ない原因がわかった。
スクリーン・グリッドの扱い方がむづかしい球のようだ。
この球は プレートには500V掛けることができるが SGの
最大電圧は350Vだ。
そもそもこの球は軍用、戦闘機のレーダーのために設計された
ものなのでオーディオとしてしての 動作例がない。
というか、最大規格以外は資料ないに等しい。
Web上にも 製作例を見つけることができなかった。あったとしても
シングルアンプの例だった。
私の手持ちの雑誌に掲載されたものとしては
・管球王国の 第5号に是枝氏が発表された A級動作のppアンプ
・MJ誌2000年5月号に掲載された松岡氏の 6AR6(6384の類似管)のppアンプ
しか知らない。
是枝氏の回路については、発表された当時、真似て作ってみたので
だいたいのことは分っていたつもりだ。その時は、独特の音というか
かなり個性的な音に聴こえたことと、JBLの375ドライバとあまり相性が
良くなくて、キツイ音に聴こえたので、常用のアンプにならなかった。
是枝氏は、CETRON製を使って発表されていたので、私も最初はそれを
入手して(当時は秋葉原で入手できた)使ってみたが、この球は
意外にヤワで、8本ほど調達したうち2本がプレートが真っ赤になり
オシャカになったのを憶えている。あまり良い印象がない。
記念と 手持ちの6384がダメになったときの代替用に手元に2本だけ残して、
オークションで処分した。
6AR6も試に買ってみたが、シングルで使っても 6384に比べると
普通の音だったという印象だ。ただ、6RA6にも製造したメーカーで
かなり違うらしい。TUNG-SOL製は、正統なものらしい。が、たぶん
今では入手難だろう。これも記念1本だけ残して処分した。
先ほど、その残りもののCETRON製とTUNG-SOL製を比べてみたが
全然、造りが違う。ガラスの厚みが違う。軽く叩くとCETRON製は ゴッツ
という感じだが、TUNG-SOL製はガラスが鳴る。
だが本命のBENDIX製の6384も、入手できた6本にはバラつきがあった。
キチンと球の頭頂部分にゲーッターがちゃんと残っていて シリアル番号が
印刷され、セラミック製のベースにちゃんと HY-G-300ともあれば
ベースの印刷されていたであろう文字が綺麗に無くなっていたものも
あった。ゲッターが8割飛んでいるものもある。
今回、試したうちの1本はプレートが赤熱してしまった。
ということで、現在はゲーターが飛んでしまったもの1本しか残っていない。
ということで、本題に戻ると、出力が10Wで頭打ちになるのだが、一つ
おかしな現象を見た。入力を上げていくと 6384のプレート電流が減るの
だ。プレート電圧が360V、SG電圧が280Vくらいの設定なのでAB級動作の
はずなのて出力の上昇に伴って電流も増加するはずなのに逆の現象が出る。
2-3日悩んだ。で、EL-12やEL-256 などもSGの扱いがむづかしいと
いうのを思い出した。で動作中のSG電流を測ってみた。
すると、無信号時の電流は なんと0.7mAくらいしか流れていない。
要するにSG電圧をプレート電圧より80Vくらい下げるために抵抗を使って
落としていたので、意外に大きな22KΩを使っていた。これも普通のアンプから
みると やけに大きな値だ。無信号時に電流が流れないためにこういう値に
なる。が、出力を上げていくと 突然、SG電流がガーンの流れ始める。
しかし、ある時点で逆に減りだす。
つまり、22KΩという高い値の抵抗が入っているので電圧降下も大きく
なる訳だ。なので、早い段階で出力が飽和してしまう。
それを確認するために、A級動作の設定にしてみた。プレート電圧290V、
スクリーン電圧もそのまま 同じ290V。 電圧を下げる必要がないので
抵抗が入らない。これだと14Wの出力が得られた。
でも、何んとか出力30Wくらいは欲しい。
松岡氏の6AR6ppの回路をよく見ると、SG電圧は定電圧化されている。
成るほどそういうことかと思ったが、氏の場合は定電圧をVR105MTと
いう定電圧放電管を使っている。そういう古風なのは嫌いなので
石を使ったのを考えてみたが、シャーシ内には もうそのための
スペースは無い。そこで思い付いたのは オーディオ専科の森川氏が
発表している EL-156ppでは、SG電圧をツェナー・ダイオードで簡易に
安定化している。これは使えそうだと思い、やってみた。
これは、一応、成功。出力も28Wまで伸びた。これで一応、目的は達成
された。
音はというと、これが、かなり良い。ありきたりだが、分解能が高い。
高域の音が力があり、綺麗だ。弦楽四重奏などが特にいい。
空間の再現力がいい。これは、たぶん私の手持ちの球の中では
EL-156に次ぐ球かも知れない。El-12ppの渋い音も 捨て難いが。
ということで、C3mを使ったライン・アンプとの組み合わせで ご機嫌な
音を出してくれている。
今井美樹の「PRIDE」も STUDIOに居るみたいに いい。
Norah Jones の 「Come away with me」は いま一つ 高域に癖を
感じるが、なかなかいい。
荒井由美の「海をみていた午後」もいい。
Rickie Lee Jonesの 「Pop pop」もいい。
大滝詠一の「A Long vacation -- 雨のウェンズデイ」も最高だ。
なぜか、山下達郎の「OPUS」を聴いてみたが、「高気圧ガール」は
いかにも、宅録の音みたいで レンジが狭く よくない。
「クリスマス。イブ」は、なんとか合格ラインといったところだ。
彼はあまり いいオーディオシステムを持っていないのだろうか。
それとも、原音のクオリティが良くないのだろうか。ちょっと残念。
たぶんLPだと違うのかも知れない。明日にでも聴いてみよう。
今回のアンプによる 成果は 大滝詠一の 「A Long Vacation 」が
うるさくなく、かつ大滝さんの声が ちゃんと前面に定位してくれたのが
うれしい。
今回のアンプは、私にとって 久しぶりにいい結果をもたらしてくれた。
私は約20年前に6384を使ったppアンプを制作しました。『管球王国21号』の自作派のコーナーで紹介されています。
ベンディックスのペアチューブ、同じくベンディックス610を3本使って整流管としていますが、2本使いで様々な整流管が使えるようになっています。
前段は12AU7です。現在差してあるのはテレフンケンの球に替えて、RCAの球です。
約20年、毎日2~12時間聞き続けていますが、不具合、雑音など一切生じず、透明感のある音を再現してくれています。
スピーカーはレイオーディオのKM1Vを17年ほど使用中です。
聴く音楽のジャンルは「演歌以外」。自分ではトリオのバンドでエレクトリック・ベースを弾いていますので、ジャズやロックが少し多いのですが、クラシックも3割ほど入り込んできます。今もジノ・フランチェスカッティの朗々たるヴァイオリンが鳴り響いているところです(ラロのスペイン交響曲)。
色付けを極端にまで排除した作りのアンプ
とスタジオモニター専用スピーカーですので、素直な音だと思っております。なにせ故障知らずなのがありがたいです。故障しても自作アンプなのですぐ直せますが。
実際のシステムの音は聴いたことはありませんが、木下氏がガウスのウーファーを使ったシステムで公の場に出られたときは、注目しました。でも私のようなレベルの者にとってはとても手が届きませんでした。
来年には70歳なので、高域の聴力も衰えているようなので、数年前に大型のスピーカーに係る物は全て処分しました。
今は、Blogにも書いていますが、私にとって最後の真空管アンプ EL156ppを完成させようともがいています。
果たして、6384ppを超えるアンプを作れるのかは、分かりません。
コメント、ありがとうございました。
貴重なコメントありがとうございます。最近は、このブログに書き込みしていなかったもので、コメントに気が付くのが遅くなりました。
私が6384を知ったのも『管球王国2』の記事です。確か5号の是枝氏の製作記事だったかと思います。そのときは6383はCETRONでした。ほぼCopyして作ってみたのですが、力不足で期待した音は出ませんでした。
その後、試行錯誤、紆余曲折しながらなんとか、納得できるアンプを作ることができました。現在はメインのアンプとして手造りのSP(DynaudioのウーファーとJBLの1インチ・ドライバーの組み合わせ)で鳴らしています。
私自身の最後のアンプ作りとして EL156ppを作りかけていますが、もう以前のようにガムシャラに作る気力がありません。現在シャーシ加工でストップしたままです。