「母さん…!」
処置室の入口で、姑に大声をかける夫をたしなめる人はいなかった。
姑は処置室の入口に向かってななめ後ろ向きの姿勢で、車椅子に座っていた。が。
カポッ、カポッ…
透明なビニール袋で覆ったプラスティック容器を持って、吐き続けているようだ。
固形物は出てこないが、喉の奥からカポッ、カポッ…
背筋の冷たくなる音がする。
夫の呼びかけに一瞬目を上げ、再び顔を落とした。
当直の医師は消化器内科が専門だと自己紹介し、これから脳のCTを撮ると言う。
あらためて、ナースさんから持病はないか、普段飲んでいる薬は?
と聞かれ皆 首をふった。
「姉さんは、大きな病気したことない」とA叔母。夫も頷いた。
そして、再度待合室で待つように促され、ぞろぞろと廊下に出る。
夫と子と3人並んで座り、自然に指先をつなぎあう。
A叔母の長女の、うるんだ視線を感じた。
処置室の入口で、姑に大声をかける夫をたしなめる人はいなかった。
姑は処置室の入口に向かってななめ後ろ向きの姿勢で、車椅子に座っていた。が。
カポッ、カポッ…
透明なビニール袋で覆ったプラスティック容器を持って、吐き続けているようだ。
固形物は出てこないが、喉の奥からカポッ、カポッ…
背筋の冷たくなる音がする。
夫の呼びかけに一瞬目を上げ、再び顔を落とした。
当直の医師は消化器内科が専門だと自己紹介し、これから脳のCTを撮ると言う。
あらためて、ナースさんから持病はないか、普段飲んでいる薬は?
と聞かれ皆 首をふった。
「姉さんは、大きな病気したことない」とA叔母。夫も頷いた。
そして、再度待合室で待つように促され、ぞろぞろと廊下に出る。
夫と子と3人並んで座り、自然に指先をつなぎあう。
A叔母の長女の、うるんだ視線を感じた。