救急入口ではない自動ドアから入っていくと、院内は昨夜と全く別の場所だった。
子どもの泣き声や順番を待つ人たちでザワザワする外来。
チェックのベストに黒いパンツスタイルで、案内担当の方が行き交う。
夫とふたり、北側の病棟エレベーターに向かい無言で乗り込んだ。
6階で降りて無人のナースステーションを通りすぎ、
姑の名前が書かれた小さなプレートを確認して個室のドアを開けると、
予想に反しA叔母の姿はなかったのでホッとする。
姑は白い部屋の中で、点滴のバッグを二つもぶら下げて眠っていた。
「お義母さん、まだ寝てるんだ…」
正月でも早寝早起きの姑が。
珍しいこともあるんだなぁと寝顔をのぞいて、パイプ椅子に腰かける。
かすかにノックの音がしてドアが開き、背の高いナースさんがおはようございます、
と頭を下げた。今どき回診もパソコン同伴らしい。
「お世話になります、いかがでしょうか」
会釈して姑の様子を伺うと、ナースさんは点滴を指さしながら言った。
「昨日はなかなか吐き気がおさまらず、点滴で吐き気どめを入れています。」
「あれから、まだ吐いていたんですか?」
「そうですね、明け方も…」
音は立てずにテキパキと手を動かしながら、パソコンに何やら打ち込んでいく。
昨夜も思ったけれど、この病院のナースさんは綺麗だなぁ、と
徹夜明けだろう色味のない頬に見とれた。
「もうすぐ日勤の者と交代しますので」
仕事に集中しているせいか見られるのに慣れているのか、動じない態度で
最後に点滴の目盛りを見ると、夜勤のナースさんは静かに出て行った。
「今のも美人だったなぁ。昨日の人は、黒い下着が透けてたし」
ニヤついた夫がひとりごちる。こんな時に。いつものことながら呆れる。
「お義母さん、ずっと吐いてたんだね」
「悪いもんでも食ったのかな?…デパ地下で、何買ってたっけ」
あっけらかんと夫は言い、スマホのゲームを始めたその時…
子どもの泣き声や順番を待つ人たちでザワザワする外来。
チェックのベストに黒いパンツスタイルで、案内担当の方が行き交う。
夫とふたり、北側の病棟エレベーターに向かい無言で乗り込んだ。
6階で降りて無人のナースステーションを通りすぎ、
姑の名前が書かれた小さなプレートを確認して個室のドアを開けると、
予想に反しA叔母の姿はなかったのでホッとする。
姑は白い部屋の中で、点滴のバッグを二つもぶら下げて眠っていた。
「お義母さん、まだ寝てるんだ…」
正月でも早寝早起きの姑が。
珍しいこともあるんだなぁと寝顔をのぞいて、パイプ椅子に腰かける。
かすかにノックの音がしてドアが開き、背の高いナースさんがおはようございます、
と頭を下げた。今どき回診もパソコン同伴らしい。
「お世話になります、いかがでしょうか」
会釈して姑の様子を伺うと、ナースさんは点滴を指さしながら言った。
「昨日はなかなか吐き気がおさまらず、点滴で吐き気どめを入れています。」
「あれから、まだ吐いていたんですか?」
「そうですね、明け方も…」
音は立てずにテキパキと手を動かしながら、パソコンに何やら打ち込んでいく。
昨夜も思ったけれど、この病院のナースさんは綺麗だなぁ、と
徹夜明けだろう色味のない頬に見とれた。
「もうすぐ日勤の者と交代しますので」
仕事に集中しているせいか見られるのに慣れているのか、動じない態度で
最後に点滴の目盛りを見ると、夜勤のナースさんは静かに出て行った。
「今のも美人だったなぁ。昨日の人は、黒い下着が透けてたし」
ニヤついた夫がひとりごちる。こんな時に。いつものことながら呆れる。
「お義母さん、ずっと吐いてたんだね」
「悪いもんでも食ったのかな?…デパ地下で、何買ってたっけ」
あっけらかんと夫は言い、スマホのゲームを始めたその時…
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