荻窪鮫

元ハングマン。下町で隠遁暮らしのオジサンが躁鬱病になりました。
それでも、望みはミニマリストになる事です。

横山秀夫の巻。

2013年04月15日 | 枯渇した生活に豊潤な読書を
平成の松本清張=横山秀夫著【64(ロクヨン)】を読了しました。

実に7年振りの作品だそうです。

いやぁ面白かった。

いわゆる【弁当箱】サイズの640ページを越える大作であります。

僕は横山秀夫の作品は大好きで【顔 FACE】を除く全てを読破しております。

警察組織が舞台でありながら、切った張ったのデカ物語ではなく、管理部門・事務屋をメインとしたフィクションとしては比較的陽の当たらない部署の人間たちの心理を描く物語の多い作家です。

古い話で恐縮ですが、真保裕一の【小役人シリーズ】を彷彿させますな。

横山秀さんは【半落ち】で直木賞候補となりましたが、北方ソープ謙三や林デブス真理子の謀略により受賞には至りませんでした。

【欠陥】と北方ソープや林デブスが指摘した事項は、実際【欠陥】ではなかった事が後に判明しました。どうしてくれんだよ!

北方ソープは直木賞の選考委員でありながら、直木賞貰ってませんから意地悪に及んだんでしょう。

林デブス如きに作品の優劣を語る資格なんぞありません。おまけにこのデブスババアは読者迄愚弄しやがりました。

さて【64(ロクヨン)】、久々の横山秀さん作品という事もあったので【D県警】という表記がありながら【エース・二渡】の名が出て来る迄【D県警シリーズ】とは気がつきませんでした。

このヒトは本当に小事を大事として描くのが上手いなぁ、と今更ながら感じました。

又、その心理描写が紋切り型ではなく、ありとあらゆるヒトに理解出来るものとして存在するのです。

涙を流す人間を【脆い】と評する割には自身もちょいちょい泣いちゃうD県警広報官・三上が主人公。

その三上が、昭和64年に発生し、いまだ未解決である幼女誘拐殺人事件に端を発した警務部と刑事部の暗闘に巻き込まれる、といった内容が主軸です。

ただ、どうしても最後の解決に導くプロットがあまりにも薄い感覚であったのは否めませんでした。

物語のほとんどに重いリアリティが流れていただけに、いささか残念です。

この感覚は実は【半落ち】でもありました。

ラスト、主人公の動機がどうしても薄く感じでしまい、理解出来なかったのです。

とまぁ、どんな作品でも引っかかるトコってのはあるもんです。

もうひとつ引っかかったのが【暴力団関係者】を【マル暴】と呼称した事です。

これはこの作品に限った事ではありません。

勿論、本来の使用方法としては正しいのでしょうが、エンターテイメントの場合は通常【マルB】と読んだ方が通りが良い様な気がします。

【マル暴】というとどうしても『暴力団担当の警察官』という印象が強いと思います。鮫の読みすぎかなぁ。

今回、捜一課長の松岡とその下につく敏腕刑事の緒方と峰岸が良かった。

捜一出動直前迄の陰湿な警察官の描き方と異なり、読者にカタルシスを与えるキャラクターとしての登場であります。

エンターテイメントはこうでなきゃ。やっぱ。

僕も松岡の下で働きたいですよ。そりゃ。



TBSで二渡を演じる上川隆也。三上は誰が演じたらしっくり来ますかね。