荻窪鮫

元ハングマン。下町で隠遁暮らしのオジサンが躁鬱病になりました。
それでも、望みはミニマリストになる事です。

垣根涼介の巻。

2013年05月21日 | 枯渇した生活に豊潤な読書を
垣根涼介著【勝ち逃げの女王 君たちに明日はない4】を読了しました。

数年前、読書好きな友人に『最近ハマった作家いる?』と問うたところ、友人は『垣根涼介』と答えました。

『ハードボイルド作品と、そうではない作品の両方があるんだよ。俺はハードボイルド作品の方が好きだなぁ』と言い、

『【君たちに明日はない】はあんまり好きじゃない。まずは【午前三時のルースター】を読んでみて』と言われました。

すなわち【午前三時のルースター】はハードボイルド作品であり、【君たちに明日はない】はそうではない作品という訳であります。

僕は天邪鬼なので、そうではない【君たちに明日はない】を読みました。

いちおう、リストラ請負人が主人公ではあるのですが、あくまで狂言回しとしての登場であり、毎回リストラの対象になる人物が真の主人公と言えましょう。

まず、このリストラ請負人という職業への着目がすばらしい。

しかも毎回、様々な職業従事者がターゲットになりますので、その業界の取材・調査も大変難業であろうと推察されます。

物語自体は、リストラ対象者がリストラを受け入れる・受け入れないを問わず、幸福な、あるいは未来への希望を感じさせる結末となっており読後感もよろしい。

但し【君たちに明日はない】もシリーズが進み、リストラ対象者の個性が既出のキャラクターとかぶるケースが増えて参りました。

短編で描かれておりますので、キャラクターを量産しなければならない。これは不可避な事であるのでしょう。

【池袋ウエストゲートパーク】シリーズも依頼人の個性やトラブル解決策がかぶり出した事と同じであります。

一方【午前三時のルースター】も友人の言いつけ通り読みました。

いやぁ・・・こりゃ僕はダメでした。

まず、ただの旅行代理店の営業マンがベトナム迄行って、いきなり銃撃されてるのにビビらないっての引っかかる。

暇だからくっついて来る相棒のキャラクターも紋切り型。

ニッポンにいる時は威勢の良かった少年も、ベトナム行った途端に草食化してしまうのも理解出来ませんでした。



読書というのは読み手によって千差万別である事を痛感します。

前述の友人は大沢在昌作品ですと【アルバイト探偵】シリーズが好きだそうです。

僕はやっぱり【鮫】ですな。

ちなみにいちばん好きな大沢作品は【湯の町オプ】です。