「生きるとは、自分の物語をつくること」2013/08
小川洋子(著)/河合隼雄(著)
作家の小川洋子さんと、臨床心理学者の河合隼雄先生との対談です。
私がこの本の中で感動したのは
河合先生がカウンセリングについて語る内容が、ものすごく深くて、また重いものであることでした。
「自分の物語の発見」
(本文より)
やっぱり死ぬよりは生きた方がええんとちがうか、とか、
なるべく好きな人と結婚した方がいいんじゃないかとかっていう、
いわゆる常識というものも、僕らは忘れてはいないんです。忘れてはいないけれど、
でも縛られたら駄目なんですね。
カウンセリングはスポーツに非常に似ていると思います。一対一の勝負です。
帰り際に「これが最後のご挨拶です」なんて言う人がいる。
「あ、どうぞ」と言った方がええ時もあれば、
「まあ、座って、ちょっと聴きましょう」って言わんとならん時もある。
「どうぞさよなら」と言って亡くなられたら、絶対的な失敗ですからね。
答え方はいっぱいある。
そういう時下手な人ほど「死ぬのはやめて下さい」と答えが一つしかない。
それしかないっていうのは駄目なんです。
そして、それはもう、すごく微妙なことなんです。
(本文終わり)
こういう話を聞くと、カウンセリングの仕事って本当に大変なんだなあと感じました。
さじ加減一つで人の生死を分けてしまうこともあるわけで…
私も河合先生のカウンセリングをぜひ受けてみたかったなあ。。。
「偶然に気づくこと」
(本文より)
ある時、治療がうまくいったことをしゃべったら、
「うまくいくはずや、偶然がいっぱい起こってるやないか」って言われました。
そして「ここまで偶然が起こるのは、やっぱり河合さんが上手いからやろうな」と言われました。
でも僕は何もしてない。
そういうことを起こしてくれる「場」というものがあると思いますね。
それから、都合のいい偶然が起こりそうな時に、
そんなこと絶対起こらんと先に否定してる人には起こらない。
道に物なんか落ちていないと思ってる人は、前ばっかり見て歩いてるから
いい物がいっぱい落ちとっても拾えないわけでしょ。
落ちてるかもわからんと思って歩いてる人は、見つけるわけですね。
だから僕は言いたいの。そんなんは僕らの身の回りに実はいっぱいあるんだと。
ただ気づかないだけじゃないかと。
(本文終わり)
これは治療の過程での「偶然」について語られているわけですが
治療中でなくても、何か自分の求めている答えとか、
気づかないだけで、案外身近にあるのではないか?
都合のいい「偶然」が起こるかもしれないし、起こらないかもしれないけれど…
何か宝物が落ちているかもしれないって、信じて歩いてみるのもいいかもしれない。
「傍にいること」
(本文より)
だから僕らは「頑張りや」は言わんと別れるんですね。
「あなたの持ってきた荷物は、私も持ってますよ」っていう態度で別れる。
(本文終わり)
「あなたの持ってきた荷物は、私も持ってますよ」っていう態度…
これはもう泣きそうになりました。
で、そのあと笑いました。
「望みがない時にどうするか」
(本文より)
僕は「望みを持ってずっと傍にいる」ことが大事だってさっき言いましたが、
「望みがない時はどうするんですか」って聞かれたんです。
すると僕の目の前におった人が
「のぞみのない時はひかりです」。みたらね、新幹線の売り場なんです(笑)。
あんまり感激したから、「あっ、のぞみの次はひかりだ」って言うたらね、
向こうはびっくりして、「こだまが帰って来た」って(笑)。
僕はこういう話するの大好きなんですよ。毎日やってます。
(本文終わり)
いやあ、実は私、ここ数年アンラッキーな出来事が続いていて
「望みがない時はどうするんですか」って誰かに聞きたかったんですが
もう、この文章を読んで、力なく笑ってしまいましたよ( ´艸`)