2012年10月22日(土) 太魯閣峡谷の観光を終え、花蓮駅を午前10:34分発の台湾特急電車「太魯閣号=タロコゴウ」に乗車した私たちは、台湾の首都である台北へ向かった。
今回の台湾旅行で、台湾の特急電車に乗れることは、日本を出発する前からの楽しみの一つであった。
鉄道は訪れる国々で、風土があり、歴史があり、その国の人達との触れ合いがあり、旅の情緒を感じさしてくれるからである。
今回、乗車した特急電車は、花蓮と台北間を2時間余で結んでいる。
真新しい流線形の白い車体に、柿色のラインを横に走らせている。 車内も広々として、日本の特急電車とよく似た感じである。
私たちが花蓮駅から台北駅まで乗車した台湾特急 「太魯閣号」
花蓮駅を定刻に発車すると、すぐに駅構内の機関区に停車している赤い機関車が三輌並んで見えている。
日本の機関車とは少し形が違っているが、錆も見えず良く整備されているように感じる。
出発して間もなく花蓮駅近くの車庫に停車している機関車が見えてくる。
出発して間もない特急電車内の様子、この車輌は、ほとんどが私たちのツアー仲間たちである。
出発して間もない車内、同じツアー仲間でご満悦の表情の男性
花蓮駅を出発してしばらくした後、ご覧のような弁当が配られた、肉や揚げ物を中心とした弁当。 味は結構美味しかった。
出発して間もなく検察に訪れた車掌、当初は、にこやかで細い体つきから女性かな! と思ったが男性であった。
写真撮影にも笑顔で気軽に応じてくれる。
私は旅行や見知らぬ土地に行く道中など、車窓からの景観を楽しむのが好きである。
昼間の車内で居眠りすることはほとんどない。
移動する度にどんどん変わっていく景色を、眺めるのが大好きである。
移り変わる景色に興味のつきることもなく、特に、今回のような初めての台湾旅行では、なおさらのことである。
カメラを片手に車窓から風景を楽しみながら撮影していく。
特急電車の花蓮と台北の、2時間の間に車窓からの風景を100枚程撮影する。
車窓から・・・逆光で見づらいが台湾東部に広がっている豊かな田園風景。
電車は平野部や海岸沿いを走ったり、田園を走ったり、交互に繰り返しながら走行して行く。
車窓からの海岸線の風景。手前には洗濯板を敷いたような奇岩が見え、その向こう側には白い波が打ち寄せる美しい光景が見えている。
田園風景の中に、突如現れたイスラム教のモスクのような塔のある建物が見えてくる。 (車窓から)。
沖合の島と陸地の間を2艘の船が先を争うように白い航跡を残しながら走航している。その手前の砂利道をトレーラーがゆっくりと反対方向に向かっている。
今度は、海岸部から山沿いの路線に変わり、四方を山に囲まれた工場のような建物が見え、その手前には数台の車が走っている。
ここの山間部を通過すると、山の斜面に5~6階建ての高層住宅が見えはじめ、台北市近郊の都市部に近づいていることを感じる。
台湾に来て驚くのは、戸建て住宅が少なく、地方の街の中でも5~6階建の住宅が多いことである。 これは治安に関係があるのか!
電車はだんだんと台北市中心部に入って行く。 車窓からは20階建位の高層住宅が多く見え始めてくる。
台北駅(地下駅)に定刻の12時35分に到着する。 下車すると台北駅前に待機していた専用バスに乗り換える。
台湾の首都としての玄関にふさわしい、堂々とした風格ある駅である台北駅。 駅前には広い広場があり、公園のように綺麗に整備されている。
台北駅前に展示されている歴史ある蒸気機関車
台北駅から専用バスに乗り換えた後、15分程の場所にあり、衛兵の整然とした交代式で有名な忠烈祠に向かって行く。
車窓からの台北市内、道路の中央では地下鉄工事か! 多くの工事用の建設機材が見えている。
忠烈祠の専用駐車場に到着すると、目の前には中国風の大きな門がある。
この大門には、大理石と赤塗りを施してトンネルのようにくり貫いた通路が三列並んで造られている。
真ん中の一番大きな入口の左右には、真っ白な制服の衛兵が、鉄砲を片手に持って台の上に立っている。
衛兵は身動き一つせず、目も一点を見つめている。
かなり訓練を積まないと、こうしたことは出来そうもない。
ガイドのリンさんによると、衛兵に選ばれた人達は、台湾軍人のエリートで、身長や体重などと出身学校などから選ばれているようである。
その奥には、大理石を敷き詰めた広場があり、中国風宮殿づくりの本殿が見えている。
威風を放つ忠烈祠門、奥には本殿が見えている。
ガイドのリンさんによると、台湾では徴兵制がしかれ、男性には1年の兵役義務が行われている。
一年間の兵役義務を終えると、体格的にもたくましく、精神力も強化されて、立派な青年になることから、
台湾企業では先を争うように求人が多いとのこと、逆に、何かの理由で兵役をまぬがれた人達には、
就職も、結婚も非常に厳しいとのことだった。
将来のエリートといわれ、入り口門の左右に立つ衛兵、しぐさや体つきから相当な訓練を積んでいるように感じる。
本殿は戦争や国民党政府のために亡くなった方々の英霊を祀るために1969年に創建された。
正門前では一時間に一度、衛兵の交代式が行われる。
一糸乱れるぬように整然とした、規律ある美しい動きに感心する。
まずは本殿前で、二組が左右に向かい合って、交代式の式典がはじまっていく。
本殿前の式が終わると、手足を規律ある方向に動かしながら、入り口門まで整然と進んで行く。
交代式は多くの観客の見守る前で整然と行われる。 私もこのような儀式は初めてで、秩序のある動きに思わず見とれる程であった。
交代式が終了すると、再び、門に置かれている台の上に立つ衛兵
忠烈祠での衛兵による交代式を見学した後、同じ台北市内にある 「故宮博物館」 に向かった。
故宮博物館は小高い山の麓に建てられ、15分ほどで到着する。
台湾が世界に文化芸術の総合発信基地として、自慢する博物館だけあって、
多くの見学者を乗せた観光バスがひっきりなしに出入りしている。
パリのルーブル美術館やロンドンの大英博物館と並ぶ世界屈指の博物館として有名な、国立「故宮博物館」。
故宮博物館は、中国の明や清の皇帝コレクションを中心に65万点以上もの中国文物を保有している。
しかも、その展示宝物の数々は、日中戦争や国共内戦といった戦禍をまぬがれ、奇跡的に台湾に運ばれてきたものがほとんどである。
だが、常時展示されているのは、その一部にすぎなく、定期的に展示品を入れ替えているようであるが、
全部見るのには30年以上かかるといわれ、所蔵する宝物の数が、膨大であると伝えられている。
故宮博物館はカメラの持ち込みが禁止されているために、写真撮影ができなくて、お見せ出来ないのが残念である。
私たちが見学した故宮博物館は、1階から3階までの展示場で、日本語のイヤホンガイドを耳にあてながら、
先に3階まで上がり、降りるコースで見学する。
3階には新石器時代~220)漢代の玉器・銅器。陶器などが展示されている。
2階には六朝~1912清代の書画や 陶磁器・漆器などが展示されている。
1階には清代皇室の珍蔵や仏像などが展示されている。
1階に設置されている孫文の像、後ろの壁には 「博愛」 の額が掲示されている。
故宮に展示されているものは、ほとんどが歴代皇帝のコレクションだけあって名品ばかりであるが、
ツアー旅行での1時間程の見学時間は、駆け足で見学する様なもので、じっくり見ることはできない。
ガイドのりんさんから、何点かの展示品について説明があったが、なるほど、とうなずくばかりであった。
細工の細かさや、色合いの美しさなど、日本では見られない展示品である。
故宮博物館を見学した後、台北市内にある免税店に立ち寄り、ホテルには18時30分頃に到着する。
ホテルに到着した後、色々とオプションが計画されているが、
私たちはこのオプションには参加せず、妻と二人で、ホテルの近くにある夜店に、夕食を兼ねて出かけることにした。
ホテルで少し休養した後の午後 7時過ぎに妻と二人で、ネオンが輝く街の中に出かけていく。
夜店が立ち並ぶ繁華街は、ホテルから徒歩で10分足らずの所にあった。
まず最初に食事を摂ろうと思い、露店のメニューを見ていると、「美味しそうだナー」 と思った店があった。
しかし、満席のために他を探すことにした。
色々な店があったが、なかなか思うような店がない。
仕方なく夜店の並ぶ通りから少し外れた所に行ってみると、海鮮を中心とした店があり、入ってみることにした。
入ってみると、日本語はまったく通じず、ジェスチャーと隣席で食べている人の料理をみて、オーダーを決定するような状況だった。
オーダーした料理が運ばれてきて、いざ食べようとすると、こん度は食べ方が分からない。
困惑していると、隣席にいた若い夫婦客が、親切丁寧に指導してくれた。
ほんとにありがたかく、台湾の人達の、私どもに対する心の暖かさを感じるひと時であった。
内容の料理も、美味しく、あっさりとした台湾料理で、大満足であった。
賑やかな台北市内の夜店を妻と二人で散策する。
散策と食事に出かけた台北市内の夜店。 大勢の人達で賑わい、街の生活の楽しさが伝わってくる。
食事と夜店の散策を終えた後、ホテル前まで帰ってくると、急にコーヒーが飲みたくなってくる。
探してみるとホテルの真ん前に喫茶店があり、入ってみることにした。
席は空いていて片隅に座ると、日本語の分かる女店員が来る、
コーヒーとクラッカーのようなデザートを注文するが、クラッカーはないとのことだった。
しかし、女店員は 「少し待ってください」 といって、コーヒーと一緒にクッキーのようなケーキを持ってきてくれた。
ホテル前の喫茶店で心温まる対応をしてくれた日本語の分かる女店員とママさん
女店員にいきさつを聞くと、この喫茶店のメニューには、ケーキなどのデザートはなく、
たまたま、女店員が自分で食べるために、家で料理して持ってきたもので、お金も要らないとのことだった。
私は驚くと同時に、女店員に申し訳ないので、お金はどうしてもとってほしい、と再三申し入れたが、どうしてもとってくれなかった。
私たち夫婦は、この店の女店員の心の暖かさ、日本語は分からなかったが、終始笑顔で対応してくれたママさんへの
感謝の気持ちと、うれしさで一杯だった。
10月23日(日) 台湾最終日の朝、早くから昼食を済まし、7時には専用バスでホテルを出発する。
今日の空は晴れ渡り、湿度も少なくすがすがしい天気になっている。
車窓からの朝の台北市内の様子
ホテルを出発してから近くにある免税店に案内される。
私は台湾を訪れる前から台湾のお茶に興味があり、何点か購入して帰りたいと考えていた。
朝が早いにも関わらず営業している台北市内の免税店、ツアー仲間達が入店して行く。
特に台湾茶は、亜熱帯気候で標高1200m位の高山で、
朝晩に霧が発生するなどの寒暖差の激しい 気候がお茶の栽培に適しているといわれている。
中でもウーロン茶は、一般のものより風味があり、それに、台湾の製茶技術が活かされて絶品な名茶が育っている。
私が興味を持ったのは、凍頂烏龍茶、高山烏龍茶、阿里山高山茶であった。
特に凍頂烏龍茶は、数年前に、”花粉症に効果・・・” のあるお茶としてテレビで紹介されていた。
台湾のウーロン茶は、乾燥した茶葉は黒っぽい色をしているが、熱湯を注ぐと茶葉が広がり、グリーンの色に変わる。
飲んでみると香りもよく、新緑のようなすっきりした味のお茶である。
免税店で買い物を済ました後、近くにあり、参拝者の絶えないことで有名な 「行天宮」 という寺院に案内される。
10分ほど走行すると、車窓からの赤い塀に囲まれた赤い屋根の寺院が見え、多くの参拝客でにぎわっている。
赤い塀に囲まれ多くの参拝客で賑わう 行天宮入口門
行天宮は、三国志でおなじみの武将 「関羽」 を祀っている廟である。
関羽は戦いの神様としてと、初めて帳簿とそろばんを使った人物であることから商売の神として広く拝められている。
境内は多くの参拝の人と線香の香りが、とぎれることはない、といわれている。
細かい装飾を施した柱と赤く両端が反りあがった屋根、屋根の上には龍や鳳凰の彫り物がある行天宮入り口門
行天宮の門と反りあがった屋根、両端には色彩豊かな龍の彫り物があり、中央には赤い玉が飾られている。
中国寺院の特徴である反りあがった屋根と、その周辺にとりつけられている龍や鳳凰の飾りもの。
行天宮入り口門にある柱に掘られた龍の細工
門をくぐり境内に入って行くと参拝客の多さに驚かされる。 リンさんの案内で線香を持って境内に入るツアー仲間の人達
境内には線香の煙に包まれ、青い法衣をまとった信者の人達の読経が流れ、寺院独特の神聖な雰囲気がかもしだされている。
線香は女性が右手、男性が左手で供える作法があり、供えた後、拝殿に向かってお参りをする。
正面に見えるのが本堂の拝殿、全員が拝殿の向かってお参り。
線香の煙に包まれた境内には、昔から伝わる鉦の音や、信者の読経が流れている行天宮の拝殿前
それにしてもすごい人気の行天宮、線香の煙で包まれた境内で、読経と共に手を合わせて熱心にお参りをする人達。
台湾の人達の信心深さには驚かされる。
日本の寺院と違って、台湾の寺院は相対的に色彩豊かで、色艶やかである。 それに、きめ細かい彫り物細工なども見事である。
それに引き換え日本の寺院は,白木が多く、あまり多くの色を使ってない様に思える。
伊勢神宮で代表されるように、無塗装で素材そのものを活かした、簡素な建築物と
庭園をうまく調和さしたような寺院が、日本では多いように感じる。
ひっきりなしに、多くの参拝客を乗せてやってくる行天宮前の路線バス。
行天宮の見学と参拝を終えた後、私たちを乗せた専用バスは、帰国のために台北空港に向かった。
空は晴れ渡り、車窓からは台北の都市風景が美しく見えている。
高速道路の車窓からは、手前に清らかに清んだ川が流れ、その向こうには幾棟もの高層建築物などが、美しい街並みを造りだしている。
小高い丘の上に建てられ、元迎賓館として使われていた中国宮殿式建築の円山大飯店(車窓からの光景)
車窓から 広い川に架かった橋と林立する高層建築物の台北市内の光景
車窓から工事中(高速道路 ?) の建造物と 台北市内の超高層建築物
台北市街の行天宮から台北空港まで約40分程で到着する。 時刻も午前10時30分頃であった。
空港に到着して早速、出国手続きを済ませる。
しかし、時間的に少し余裕があり、免税店で買い物をしたり、同じツアー仲間の人達と一緒に、
コーヒーなどを飲みながら談笑して過ごしていた。
台北空港の通路から見た空港、近代的な設備の整ったかなり大きな空港である。
搭乗前のロビーから、私たちが搭乗する飛行機
私たちを乗せた飛行機は、定刻の12時30分に台北空港を飛び立ち、関西空港へ向かう。
離陸した直後の台北空港の景観
台北空港を離陸して間もなく、浜辺に白波が打ち寄せる美しい光景が見られた。
飛行機はぐんぐん上昇し、10,000m位に達すると水平飛行に移り、日本時間17時00分ごろに関西空港に到着する。
今回の台湾旅行は、10月19日~23日までの4泊5日で台湾を一周する旅であった。
台湾は九州と同じくらいの面積を有している島で、亜熱帯と熱帯気候に分かれている。
各観光地間は、ほとんどがバスで移動して観光地を巡って行ったが、どこに行っても道路の立派さには驚かされる。
高速道路も広く、車線も片側3車線もあり、車はスムーズに流れている。
一般道でも道幅も広く造られ、初心者の方でも運転はしやすい様に感じる。
また、台湾の人達も街の中で出会っても好意的で、親日的な人達が多いように感じる。
台湾は外国という違和感がなく、日本国内にいるようにさえ思うこともしばしばあった。
ガイドのリンさんの豊富な知識には驚かされたが、台湾における日本の開発計画や、
労力を惜しまずに台湾発展のために貢献した多くの日本人の実話が、
エピソードを交え、分かりやすく紹介してくれた。
それにひきかえ、中国大陸からやってきた国民党の、無秩序の軍人たちが行った虐待行為、我慢に我慢を重ねていた
人達が、露天商の老女への虐待をきっかけとして発生した、2.28事件の大騒動に発展していく話などをしてくれた。
この事件から、台湾では本省人(以前から台湾に住んでいた人達)と、外省人(中国大陸からやってきた人達)に分かれて呼ばれている。
これは、ほんとにひどい事件で、台湾出身の李登輝総統が誕生するまでの40年間も続いている。
現在の台湾は民主国家に生まれ変わっているが、この悲劇の本質は、
支配する国民党の人達のあまりのモラルの低さと、支配される台湾(本省人)のモラルの高さにあったように思える。
台湾の人達のモラルの高さは、日本時代に築かれた法や道徳・教育水準の高さなどが、大きく影響しているように思える。
このツアー旅行で色々な方々と、親しく話をさしていただいたり、共に行動したり 楽しい旅行であった。
また、機会があれば台湾を訪れたいと思う。
出来れば、車中泊の気ままな旅が出来れば最高であると、空想が浮かんでくる。