私は、大変きゅうりがすきであった。
だから、苗を買ってきておいしいきゅうりをつくりたかった。
小さな場所で作ることはできるのか不安であった。
しかし、ちいさなたべれるぐらいのきゅうりがなっていた。
わたしは、心が躍り本当によかったと思った。
ある人は、きゅうりがなっているのを見ておどろいていた。
ところが、ところが、ところが、
きゅうりの苗が、倒されていた。
きゅうりはすぐに枯れてしまった。
本当に、どうしてきゅうりが倒されたのかわからなかった。
きっと、あいつがいたずらしたに違いなかった。
でも、きゅうりが枯れてから、私は二度と作れなくなった。
大好きなきゅうりなのに、なったとたんになぎたおされたのだ。
私が、その苗をかたずけていると、楽しそうに男は通った。
あいつが、あいつが、またいたずらしたのだ。
いろいろないやがらせもあったが、きゅうりまでいたずらして倒したのだ。
くやしいけど、泣き寝入りした。
でも、あいつしかいないのだ、人の不幸を喜ぶあいつなのだ。
わたしは、きゅうりがほんとうにすきなのに。
わたしは、そいつと二度と、もうめをあわせないようにして、暮らした。
たったすこしのしあわせさえも、あいつは摘み取る悪魔だった。
そんなやつは、きょうも長生きしている。
自分はいい人間みせて、小さなきゅうりの苗さえも、ころした。
悪魔は、いつも私の造っているものを見て、またいつか困らせるためにねらっている。
そのおそろしい、顔は、いつも見ると怖いので。
わたしはそれからは、見ることのないように、そっと生きたのだ。