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チュンサンとユジンが別れた昼下がり、サンヒョクの父のジヌは病院からDNAの結果を知らされていた。
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「先生、本当にこの結果は間違いないんですね?」
崩れ落ちるように座りながら、ジヌは声を振り絞った。
「親子鑑定の結果はほぼ100%間違いないです」
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冷静な声で説明する医師の言葉を聞いてもなお、ジヌは信じられなかった。おもわず椅子から落ちてしまうほどその衝撃はすさまじかった。ジヌは結果の用紙をつかむと、タクシーを飛ばしてミヒのもとへ向かった。
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ミヒはピアノの練習をするためにスタジオにこもっていたが、そんなことはジヌには関係なかった。ジヌはスタジオにずかずかと入り込むと、ミヒに疑問をぶつけた。ミヒは露骨に顔をしかめて言った。
「ここまで何の用があるの?あなたとまだ会わなければいけないの?」
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しかし、ミヒのその失礼な言い方も、ジヌは全く気にしていなかった。ジヌは目を見開いて言った。
「本当なのか?本当なんだな?」
ミヒはぽかんとした顔をしてジヌを見つめている。
「本当なんだな?チュンサンが僕たちの子だということは?」
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ミヒは「僕たち」と言う言葉に激しく反応した。ついにばれてしまったのだ。この人だけには知られたくなかったのに。ミヒはあきらめて椅子に座ると、消え入りそうな声でつぶやいた。
「そうよ、、、チュンサンはあなたの子よ」
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ジヌはもはやミヒの顔を見ていなかった。やはり、と言う思いとなんで今まで黙っていたんだ?という怒りとショック、チュンサンへの思いで心は乱れていた。それだけ聞けば十分だ、今は独りきりで頭を冷やしたい、ジヌはよろよろとスタジオを出て行った。背後でバタンと扉が閉まると、ミヒは本当の孤独の中に閉じ込められた。自分が仕掛けた人生をかけたゲームがすべてばれてしまった。これから自分はどうすればいいのだろうか。ミヒは自分のことしか考えられなかったのだった。
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そのころ、チュンサンは独り、ユジンがくれた模型を見つめていた。何度も手でその感触を確かめるとユジンのぬくもりを感じられる気がした。そして外を見ようと立ち上がった瞬間、いつもの何倍ものめまいがふいに襲ってきた。
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そのまま激しくフロアに倒れた音を聞きつけて、受付嬢が慌てて部屋に入ってくる音がした。そして、再び総合病院に運ばれていったが、チュンサンの耳にはもう何の音も聞こえていなかった。
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次にチュンサンが目を覚ました時には、チュンサンはベッドに寝かされており、ベッドわきには看護師と心配そうな顔をしたドクターが自分の名前を呼んで立っていた。
「カンジュンサンさん、わたしはずっとあなたに連絡を取りたかったんですが、連絡が取れずに困っていたんです。検査の結果をお知らせしたかったんです。」
チュンサンは医師に説明してもらうため、自分の頭の画像データを見るために診察室に移動した。
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医師によると、チュンサンは2度目の自動車事故により、頭に血腫ができているということだった。事故の直後は血腫は見られなかったものの、徐々に血腫ができ始めており、最近では視神経を圧迫しているという。このまま放置すると失明の可能性もある、それどころは命の危険もあるので、一刻も早く決断をと、医師は深刻な表情で告げた。チュンサンは聞いた。
「手術をすれば直る可能性はあるんですか?」
しかし医師は苦悶の表情を浮かべた。
「血腫の位置が悪すぎて、それは断言できないんです。しかし、放置することはできません。後遺症を覚悟で手術するしかないんです。」
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なおも早く決断を、と焦る医師を前に、チュンサンは「少し考えさせて下さい」と言うと、無理やり診察室を出て退院するのだった。チュンサンは帰り道に歩きながらずっと考えていた。ユジンを失い、視力も失い、もしかしたら命までもついえてしまうかもしれない、もう何も希望が残っていない。ユジンと約束した『お互いの思い出を大切に生きていく』ことすらかなわなそうだった。チュンサンはもはや泣く元気すら残っていないのだった。