「父さん、これで何もかも解決すると思うんだ。ユジンとチュンサンは別れることにしたよ。だから父さんも心配しないで。」
「もうそんなところまで話が進んでいるのか、、、、なあサンヒョク、お前チュンサンのことをどう思う?彼のことを好きだったか?彼とどれくらい親しかったんだ?」
矢継ぎ早に質問する父親を前に、サンヒョクは目を丸くした。すると、ジヌは我に返ってバツが悪そうになってしまい、そそくさと帰っていくのだった。そんなジヌを、サンヒョクは不思議そうに見つめていた。
そのころ、病室で眠ったままのチュンサンの額を、チェリンがタオルで拭いていた。すると、チュンサンが眠りながらも「ユジン、、、」とつぶやくのが聞こえた。チェリンは顔色を変えたが、そこにちょうどサンヒョクが戻ってきた。
「二人はもう駄目なんだよ。彼のお母さんが猛反対していて、それで別れてしまったんだ。チュンサンも愛は錯覚だったって。」
「チュンサンが愛じゃないって言ったの?」
「うん」
しかし、サンヒョクはチェリンの目も見ないし、その声は不自然に上ずっていた。
「うそよ、そんなのウソ。彼は意識がなくたってユジンの名を呼んでる。彼はユジンを愛してる。あなた、私に秘密にしていることがあるんでしょ?」
いまだにチュンサンに未練のあるチェリンには、チュンサンの気持ちが手に取るようにわかっていた。チェリンは射貫くような目でサンヒョクを見つめた。
サンヒョクはこれ以上嘘はつけないと観念して、二人は病院のロビーで座って話をすることになった。
「チェリン、あの二人はあの二人はね、兄妹なんだよ。」
チェリンは夢にも思わない展開に、言葉を失った。
「父親が同じなんだよ。ユジンの父親とチュンサンの父親は一緒なんだ。」
チェリンはそれを聞くと、呆然となってしまい、ただただ目の前を向いていた。かつて愛した相手と、かつては憎んだ友達だったが、そんな残酷な事実に直面しているとは、あまりにかわいそうでならなかった。チェリンは友人としてどうにかしなければと、チュンサンの病室に戻っていくのだった。
同じころ、チュンサンは独り意識を回復していた。目を開けると、そこはいつか見たような光景で、看護師が隣に立っており、真っ白な病室の天井が見えた。チュンサンはそっとつぶやいた。
「ああ、目覚めてしまったんだ。もう2度と目を覚まさなくてもよかったのに。」と。そしてノロノロと病院着から私服に着替えおわると、検査結果が出るまでは退院して、自宅に帰ろうとしていた。するとそこに、チェリンが入ってきた。何気ない様子で
「あら、着替えたのね。検査は済んだ?もう帰れるの?」
と言うチェリンに、チュンサンは目を丸くした。
「なんで君がここにいるんだ?」
「行きましょう。迎えに来たのよ」チェリンは優しい笑顔でそう言うと、チュンサンを自宅まで車で送ってあげた。
チェリンは何も言わずに、チュンサンを部屋まで連れて行き、ソファに座ったのを見届けるといった。
「ゆっくり休んで。じゃあ、行くわね」
そして立ち去ろうとしたが、決心したように戻ってくると涙を浮かべて言った。
「チュンサン、あなたユジンにきちんと話した方がいいわよ。二人で逃げちゃえばいいのに。あなたたちは知らなかったんだし、出会いたくて出会ったんじゃないもの。いったいどうしろっていうの?」
チュンサンは隠すことをあきらめて静かに言った。
「いつ知ったんだよ」
「ずっと、ずっと前よ。」しかし、チュンサンはそんなことはないと知っていた。
「サンヒョクか」
「あなたたちが普通に別れたと思ってた。でも、そんな別れ方をして、私が喜ぶと思う?そんな別れ方じゃ、そんな嫌な別れ方じゃ、それっきり会えなくなったら、あなたに戻ってきてって言えないじゃない。何で何にも言わないの?ちょっと、カンジュンサン、何とか言いなさいよ」
チュンサンは涙を流しながら、不器用な口調で励ますチェリンを、優しい目で見つめて言った。
「ミニョンさん、て呼ぶのやめたのか?」
「そうよ。あなたはカンジュンサンでしょ?」
ミニョンを求めても愛が報われないチェリン、ユジンを愛しても決して手に入れられないチュンサン、二人は今、同じ立場にいた。チュンサンは初めてチェリンの気持ちが痛いほどわかるのだった。チェリンに申し訳ないとも思った。二人が初めて友人として分かり合えた瞬間だった。そしてそのままソファに座って、静かに痛みの涙を流し続けるのだった。