朝、目が覚めた時にベッドの上で、首を右に向けてみたら、筋肉の痛みが軽減していた。
(効いたわ! ロキソニン湿布のお陰!)
つくづく、安堵した。ベッドを出てから、上を向いたり下を向いたりする時、小さな痛みは残っている。前日までは50%の軽減だったが、80%軽減したという感覚があった。一度貼っただけで完治するほどの即効性ではなかったが、痛みが薄れたことには違いなかった。
頭痛は、朝、少しあったが、一番痛い〈シクッシクッシクッ〉という感覚ではなく、断続的に〈シクシク〉という感じになっていた。病院の薬って、何てよく効くのかと、うれしくなった。市販薬の風邪薬の効能に、〈頭痛・筋肉痛〉と記載されていたのに、頭痛には全く効かなかった。やはり病院の処方薬のほうが効くのだと、あらためて思った。
ともあれ、早く治ると医師が説明した〈魔法の薬〉は、1回の服用で完治するほどの即効性はなかったが、効いているという実感があったことは確かだった。
前日の昼寝は1時間で少し長めだったが、夜、寝つきが悪くなることもなく、薬のせいか、すぐ眠れた。真夜中に目が覚めることもなく、熟睡した。きっと薬の効果と、精神的にも落ち着いたためのような気がした。
前日に貼ったロキソニン湿布は、はがすことにした。
「かぶれを感じたら、すぐはがすこと」
と医師から言われたが、市販の冷湿布の時ほどかゆみに近いかぶれは感じていなかった。けれど睡眠中に汗をかいたし、湿布を貼っていない時間も必要ということを医師から言われたので、はがしたのだった。
やはり湿布というのは肌にとってストレスで、はがした瞬間、すっきり爽やかな気分になった。
朝の家事をすませて、パソコンに向かった。
スーパーや実家以外の外出の時はたいてい、出かける前にホームページや関連記事を閲覧し、翌日に再度、閲覧する習慣がある。初めての所であれ、行ったことがある所であれ、現地を見ていない時と、見て来た後では、違う印象や発見などがあるからだった。
Google検索に病院名を入力した。検索結果ページの右端に、口コミ欄がある。何となくクリックして、その一覧を見てみた。
口コミに関しては、私はあまり信用していない。商品であれ飲食店であれ、ほとんどの口コミはサクラとかヤラセとかの書き込みが多いという事実を知っているからだった。
ところが――。その病院の口コミ一覧を見て、驚いた。低評価や悪評の口コミが、多かったのである。
(この一覧の書き込みって、サクラでもヤラセでもないみたい)
そんなふうに感じられ、受診した投稿者による正真正銘の口コミばかりのようだった。
後日、近所の知人に、その病院へ行ったことを話したら、
「あそこは評判が悪いから、行ったことはない」
と言うので、多くの口コミも思い出し、何となく笑いたくなるほどおかしくなってしまった。それほど悪評高い病院とは知らずに行って来たことがである。
ただ、一覧の口コミの中に、整形外科は良かったというような書き込みがあった。サクラやヤラセでない限り、口コミというのは投稿者の体験と主観の相違があると、私は思っている。
病院のホームページを、再度、見てみた。前日の朝は急いでいて見落としていた〈外来担当表〉というページがあった。
担当医師名は、病院で渡された処方薬明細書に記載されていたから、記憶している。〈外来担当表〉のページに、その名前が記載されていると思いながらページを開くと――。
「えっ」と、思わず目をパチクリ。私が行った土曜日で整形外科の欄に、担当医師の名前の記載が、なかった。一人の医師名と、大学病院名整形外科医と記載されているだけだった。
(大学病院の整形外科医? どうして名前が記載されてないの?)
記載されている医師名は、看護師ミスで最初に診察室に入った時の名前だった。看護師から、「4番の診察室のドアのポケットにファイルブックを入れて、お待ち下さい」と言われ、待っている時に、ドアの上の診療科名と担当医師名のネームプレートを見て記憶していた。
〈外来担当表〉に一人の医師名と、大学病院名整形外科医と記載されているのは土曜日だけで、平日は一人の同じ医師名の記載だった。
(じゃ、〇〇先生って大学病院の医師だったの?)
道理でと呟きながら、Google検索に、処方薬明細書に記載されていた担当医師名を入力してみたら、複数のサイトがヒットした。
整形外科医として紹介のある大学病院名が、私が行った病院の〈外来担当表〉のページに記載されていた大学病院名と一致した。
(大学病院の整形外科の先生だったのね。道理で)
プロフィールを読んだり、写真を見たり、論文も書いている、比較的若いポジションの勤務医で、留学体験記などもあって興味深く読んだ。
(病院のホームページに、大学病院名整形外科医と記載されているというのは、その大学病院から外来担当に来るのは〇〇先生とは限らないってことかも。だから名前の記載がないのかも。輪番制なのかも)
(ということは、土曜日のあの日に病院へ行ったのは、私にとってラッキーだったわ! 平日だったら別の医師だったし、同じ土曜日でも他の日だったら大学病院の別の医師だったかも)
ラッキーだったわラッキーだったわと、ぴょんぴょん飛び跳ねたいくらい、うれしかった。
第一印象がとてもいい雰囲気の医師だった。信頼できる医師という雰囲気を、最初から感じさせられた。テレビで見かける専門的な言葉混じりにペチャクチャ喋る医師は嫌いだが、〇〇先生は落ち着いた穏やかな口調の素敵な声で、私の眼を見て話す、誠実で優秀で雰囲気が良くて魅力的な医師だった。
大学病院の医師と知ってから、道理でと何度も呟きたくなるのは、たとえば1度目に診察室に入った時の診察で、質問が多かったことだった。寝違いの原因で思い当たることはとか、使用していた冷湿布のメーカー名とか、診察申込書の欄にはない個人情報の質問とか、他にもいろいろ質問された。私からの質問が20%、あとの80%の質問が〇〇先生からだったと、後になって気づいた。医療機関へ診察に行って、あんなに多く質問されたのは初めてだった。
2度目に診察室に入った時は、レントゲンの画像を見たり薬の説明の紙を見るため、〇〇先生と膝が触れ合いそうなほど近くに椅子があって座っていたが、不快でもなく違和感もなかった。
医師と患者は相性が大事と言うが、私にとっては理想的に相性の合う医師だった。
私の好きな言葉、一期一会(いちごいちえ)とは、まさにこのことだと思った。整形外科的体調不良が、そう頻繁に起こるとは思えない。たとえ、また受診しても、〇〇先生が担当するとは限らない。忘れ難いほど貴重な一期一会だったことになる。
(今後、また整形外科的体調不良が起きたら、悪評高いあの病院へ、また行こうっと)
そう決めた。
(効いたわ! ロキソニン湿布のお陰!)
つくづく、安堵した。ベッドを出てから、上を向いたり下を向いたりする時、小さな痛みは残っている。前日までは50%の軽減だったが、80%軽減したという感覚があった。一度貼っただけで完治するほどの即効性ではなかったが、痛みが薄れたことには違いなかった。
頭痛は、朝、少しあったが、一番痛い〈シクッシクッシクッ〉という感覚ではなく、断続的に〈シクシク〉という感じになっていた。病院の薬って、何てよく効くのかと、うれしくなった。市販薬の風邪薬の効能に、〈頭痛・筋肉痛〉と記載されていたのに、頭痛には全く効かなかった。やはり病院の処方薬のほうが効くのだと、あらためて思った。
ともあれ、早く治ると医師が説明した〈魔法の薬〉は、1回の服用で完治するほどの即効性はなかったが、効いているという実感があったことは確かだった。
前日の昼寝は1時間で少し長めだったが、夜、寝つきが悪くなることもなく、薬のせいか、すぐ眠れた。真夜中に目が覚めることもなく、熟睡した。きっと薬の効果と、精神的にも落ち着いたためのような気がした。
前日に貼ったロキソニン湿布は、はがすことにした。
「かぶれを感じたら、すぐはがすこと」
と医師から言われたが、市販の冷湿布の時ほどかゆみに近いかぶれは感じていなかった。けれど睡眠中に汗をかいたし、湿布を貼っていない時間も必要ということを医師から言われたので、はがしたのだった。
やはり湿布というのは肌にとってストレスで、はがした瞬間、すっきり爽やかな気分になった。
朝の家事をすませて、パソコンに向かった。
スーパーや実家以外の外出の時はたいてい、出かける前にホームページや関連記事を閲覧し、翌日に再度、閲覧する習慣がある。初めての所であれ、行ったことがある所であれ、現地を見ていない時と、見て来た後では、違う印象や発見などがあるからだった。
Google検索に病院名を入力した。検索結果ページの右端に、口コミ欄がある。何となくクリックして、その一覧を見てみた。
口コミに関しては、私はあまり信用していない。商品であれ飲食店であれ、ほとんどの口コミはサクラとかヤラセとかの書き込みが多いという事実を知っているからだった。
ところが――。その病院の口コミ一覧を見て、驚いた。低評価や悪評の口コミが、多かったのである。
(この一覧の書き込みって、サクラでもヤラセでもないみたい)
そんなふうに感じられ、受診した投稿者による正真正銘の口コミばかりのようだった。
後日、近所の知人に、その病院へ行ったことを話したら、
「あそこは評判が悪いから、行ったことはない」
と言うので、多くの口コミも思い出し、何となく笑いたくなるほどおかしくなってしまった。それほど悪評高い病院とは知らずに行って来たことがである。
ただ、一覧の口コミの中に、整形外科は良かったというような書き込みがあった。サクラやヤラセでない限り、口コミというのは投稿者の体験と主観の相違があると、私は思っている。
病院のホームページを、再度、見てみた。前日の朝は急いでいて見落としていた〈外来担当表〉というページがあった。
担当医師名は、病院で渡された処方薬明細書に記載されていたから、記憶している。〈外来担当表〉のページに、その名前が記載されていると思いながらページを開くと――。
「えっ」と、思わず目をパチクリ。私が行った土曜日で整形外科の欄に、担当医師の名前の記載が、なかった。一人の医師名と、大学病院名整形外科医と記載されているだけだった。
(大学病院の整形外科医? どうして名前が記載されてないの?)
記載されている医師名は、看護師ミスで最初に診察室に入った時の名前だった。看護師から、「4番の診察室のドアのポケットにファイルブックを入れて、お待ち下さい」と言われ、待っている時に、ドアの上の診療科名と担当医師名のネームプレートを見て記憶していた。
〈外来担当表〉に一人の医師名と、大学病院名整形外科医と記載されているのは土曜日だけで、平日は一人の同じ医師名の記載だった。
(じゃ、〇〇先生って大学病院の医師だったの?)
道理でと呟きながら、Google検索に、処方薬明細書に記載されていた担当医師名を入力してみたら、複数のサイトがヒットした。
整形外科医として紹介のある大学病院名が、私が行った病院の〈外来担当表〉のページに記載されていた大学病院名と一致した。
(大学病院の整形外科の先生だったのね。道理で)
プロフィールを読んだり、写真を見たり、論文も書いている、比較的若いポジションの勤務医で、留学体験記などもあって興味深く読んだ。
(病院のホームページに、大学病院名整形外科医と記載されているというのは、その大学病院から外来担当に来るのは〇〇先生とは限らないってことかも。だから名前の記載がないのかも。輪番制なのかも)
(ということは、土曜日のあの日に病院へ行ったのは、私にとってラッキーだったわ! 平日だったら別の医師だったし、同じ土曜日でも他の日だったら大学病院の別の医師だったかも)
ラッキーだったわラッキーだったわと、ぴょんぴょん飛び跳ねたいくらい、うれしかった。
第一印象がとてもいい雰囲気の医師だった。信頼できる医師という雰囲気を、最初から感じさせられた。テレビで見かける専門的な言葉混じりにペチャクチャ喋る医師は嫌いだが、〇〇先生は落ち着いた穏やかな口調の素敵な声で、私の眼を見て話す、誠実で優秀で雰囲気が良くて魅力的な医師だった。
大学病院の医師と知ってから、道理でと何度も呟きたくなるのは、たとえば1度目に診察室に入った時の診察で、質問が多かったことだった。寝違いの原因で思い当たることはとか、使用していた冷湿布のメーカー名とか、診察申込書の欄にはない個人情報の質問とか、他にもいろいろ質問された。私からの質問が20%、あとの80%の質問が〇〇先生からだったと、後になって気づいた。医療機関へ診察に行って、あんなに多く質問されたのは初めてだった。
2度目に診察室に入った時は、レントゲンの画像を見たり薬の説明の紙を見るため、〇〇先生と膝が触れ合いそうなほど近くに椅子があって座っていたが、不快でもなく違和感もなかった。
医師と患者は相性が大事と言うが、私にとっては理想的に相性の合う医師だった。
私の好きな言葉、一期一会(いちごいちえ)とは、まさにこのことだと思った。整形外科的体調不良が、そう頻繁に起こるとは思えない。たとえ、また受診しても、〇〇先生が担当するとは限らない。忘れ難いほど貴重な一期一会だったことになる。
(今後、また整形外科的体調不良が起きたら、悪評高いあの病院へ、また行こうっと)
そう決めた。