一条きらら 近況

【 近況&身辺雑記 】

若作り男性

1999年10月15日 | 女のホンネ
 女性は年齢(とし)を取れば取るほど、見かけ年齢に差がつくと言われる。
 そこで、エステティック・サロンやフィットネス・クラブへ通い、テレビや雑誌の美容情報には常に関心を持ち、来る日も来る日も美容体操とストレッチを欠かさない。私自身を含めてだが、そんな涙ぐましい努力をして若さと美容に執着するのが、女性の本能であり宿命だと思う。
 男性は、どうか。先日、テレビで、芸能人ではなく一般人の男性たちが、二重瞼とかシワ取りの整形手術をしたり、エステで顔をパックしているのを見て、呆れるというより気持ち悪くなった。
 女友達と、その話をしたら、
「いるいる、うちの会社にも若作りオジンが」
 クスッと彼女は思い出し笑いした。彼女の話によると──。
 50代半ばの男性だが、いつも細身のジーンズはいて、若者が着るようなシャツを着ている。
 スーツは着なくていい職場だが、音楽や美術などのアート関係ではないから、ミエミエの若作りファッションはかなり目立つ。さらに髪型も、一般的な〈七三分け〉ではなく、前髪を下ろした感じも、若作りふうで童顔に見えるらしい。
 ある時、彼女は、若作りオジンの頭から足まで視線を這わせて言った。
「若いわねえ、○○さん」
「そうですか、フフ」
「服装が」
 アハハハハッと笑う彼女に、若作りオジンはジョークが通じないシラケ顔。
 その若作りオジンと仕事の担当が同じ彼女は、一緒に飲んだり食事したりすることがあるらしい。
 すると、必ず、年齢の話が出る。
(出ました、年齢の話)
 彼女は内心、呟くらしい。
「彼って年齢コンプレックスがあるのよね」
 彼女は私に言った。
「年齢コンプレックスね、聞いたことがあるわ」
 劣等感というより自意識過剰という意味のコンプレックスらしい。
 その若作りオジンとの話題で、他人の年齢の話に触れると、自分より年上の人の年齢を口にし、何故かバカにしたような口ぶりになるらしい。
 そして彼自身は、
「ぼくは40代に見られるんだ。50代に見られたことないんですよ」
 得意そうに、うれしそうに言う。
 彼が40代の時は、
「ぼくは30代に見られるんだ」
 と、言っていたのを、彼女は思い出し、そのことを言ったらしい。すると、
「そうだっけ。アハハッ」
 鈍感にも笑っているだけだったらしい。
 女性の皮肉というのは、男性に通じにくいことが多いものである。
 若作りオジンに、彼女は、めめしさを感じると言う。
 涙ぐましい努力をして若さと美容に執着するのは、女性である。男性の魅力は顔やスタイルではなく、人間性だと思う。人間としての魅力、内面からにじみ出る魅力に、女性は惹かれるのだ。
 また、服も髪型もメイクも、すべてが自己表現だと思う。男性はメイクはないが、その服、その髪型、そのメガネ、そのネクタイ、その靴やバッグなどに、相手から、または周囲から、こう見られたい、こんな人間に見られたいという自己表現と言えるかもしれない。
「どうしてそんなに若さにしがみつくの? どうしてそんなに若く見られたいの? どうしてそんなに老いが怖いの? そう言いたくなるわね」
 と、彼女。
「その若作りオジン、女性にモテたくて若作りするんじゃないのかもしれないわ。自分自身との闘いなのよ。迫り来る老いと死に対する恐怖。それはもう気が狂いそうなほどの恐怖かもしれない。何かの本で、産む性である女より、産む性ではない男のほうが老いと死に対する本能的な恐怖心が強いって、読んだことがあるわ」
 と、私。 
「それって興味深い見解ね。女性が強いのは、産む性だから、というのは読んだことがあるわ」
 こうして、若作りオジンの話から、男性と女性の違いについて、笑い混じりのお喋りが延々と続いた。 
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