2009-05-08
1.アフカへ
キラシャの恋心
2009-02-01
君がいるだけで
そばにいるだけで
こころが ホッとして
あったかい…
なにをしてても
どこへ行こうとも
君のこと どんな時も
忘れない…
君が好きなこと
君を好きなこと
いつまでも 続けられると
いいのに…
いつの日にか
大人になって
君と笑って 話せる日が
来るかな…
キラシャの春休みの予定は、いっぱいだ。
アフカ・エリアの停戦が正式に決定し、MFiエリアとアフカ・エリアを結ぶ航路便も、再開した。
パールのふるさと、アフカ・エリアにいる家族から、戦争に反対する団体を経由して連絡があり、パールの帰郷を望んでいるとのこと。
オパールおばさんは、この日を待ちかねていたように、パールと一緒にアフカ・エリアへ行く支度を始めたが、パールは急に帰るのが怖いと言い始めてしまった。
パールは戦争で大やけどを負ったから、整形手術を行い、以前の顔とは違っている。
元のパールの顔しか知らない人に、今の顔を見せるということは、パールにとって、とても勇気のいることなのだ。
パールは悩んだ末に、キラシャが一緒について来てくれたら、アフカに帰ってから、どんなにつらいことがあっても、大丈夫な気がすると、キラシャに相談した。
キラシャは、亡くなったキャップ爺の遺言で、死んだら自分の骨を広い外海に流して欲しいと言われていた。
だから、キラシャの春休みは、パパとボートでのんびりと外海へ行く予定になっていたのだ。
パールからの突然の話に、「えっ?」っとびっくりしたキラシャ。
でも、ホスピタルにいる間にいろんなことがあって、ひとりでは耐えられないくらいつらかったとき、パールがそばにいてくれるだけで、どんなに心がホッとしたことだろう。
それを考えると、パールの頼みを簡単に断ることもできなかったし、入院中にパールから聞いたアフカの自然を、見てみたいなぁ…という気持ちもあった。
オパールおばさんも、パールとキラシャに安心してもらうため、私がキラシャの旅費と旅の間の保護者も引き受けましょうと、キラシャの両親を説得した。
両親と相談した結果、おじいさんのお骨流しは、キラシャがアフカ・エリアから無事に帰ってから行くことになり、キラシャの旅支度がバタバタと始まったというわけだ。
キラシャが他のエリアに行くのは、これが初めてではない。
イルカの調教の勉強を理由にして、おじいさんとフリーダム・エリアのあちこちで行われているイルカ・ショーをハシゴしたことがあった。
小さな島で育ったキラシャには、フリーダム・エリアの壮大なドームが眩しくて、何もかも別世界のモノにしか思えなかった。
移動するたびに、人混みに酔ってしまい、ホテルでゲーゲー吐いてはおじいさんを心配させ、MFiエリアの食べ物でなきゃイヤだと、散々駄々をこねて、困らせていたキラシャだった。
そんな大変な思いをして出会ったイルカ達とのふれあいは、今でも忘れられない、キラシャの心にしまってある大切な宝物だ。
キラシャの両親は、キラシャが食事のことで、パールの家族に迷惑をかけないだろうかと、ずいぶん心配した。
ところが、キラシャはそんな両親の心配をよそに、「アフカに行ったら、そこでしか食べられないモノを食べてみたいンだ…」と楽しそうに言う。
キラシャは笑顔で航空船に乗り込み、パールとともに旅立った。
アフカ・エリアの滞在は、1週間の予定だ。
サリーとエミリにアフカ行きのことを相談したとき、募金活動をしている間に、いろんな人から遊び道具をたくさんもらったから、それを届けて欲しいと頼まれた。
戦争で、自分の居場所だけでなく、遊び道具をなくしてしまった子供達が大勢いるからだ。
担任のユウキ先生に旅行の許可願いを申請したときは、アフカ・エリアにいる間も、MFiエリアの子供としての自覚を忘れないこと、
パールには、いろいろつらいことが待っているだろうから、そばで元気づけてやって欲しいと頼まれた。
キラシャは人に何かを頼まれると、やる気満々になるタイプだ。
パールに何が待っていようと、自分にどんな試練が降りかかってこようと、精一杯そばで応援してやらねば…と、意気込んでアフカ・エリアへと向かった。