「死者のざわめき 被災地信仰論」磯前順一 著 河出書房新社
この本は面白い!東日本大震災をテーマにしたものでは一番では……。とはいえ、残念ながら自己関心の範囲であるのだが……。
なんと言っても本の題がいい。「死者のざわめき!」だぜぇ……なにそれ?しかもそれに「被災地信仰論」とまで云っている。それだけで、その表題を見ただけで、自分がざわめきだした。なんだこれは?ただそれだけで、買ってしまった本である。面白くないはずはない。
確かに面白い。どこが面白いの!、と云われればいささか心もとないのだが……?
まずそれのひとつは、著者でもある磯前順一の見識の広さが反映された表現である。つまり、その表現は突然に出現した災害の闇から、さらにその奥の深い闇までを睨んだものになっている。そしてそれは、ただのヒューマンなルポや被災者に対する同情だけの善意に溢れたルポルタージュとは違った表現になっている。むろんヒューマニズムや善意が悪いと云っているのではない。ただそれだけの表現ではあまりにも紋切り型で面白くないし、歴史が抱えている奥深い闇まで表現できなし、ましてや死者のざわめきなど聞こえようもない。
だからと云って、この本は昏い本ではない。災害による膨大な瓦礫の中から、その微かな希望の物を見出しそれを物語ってゆく、その表現がこの本の奥行きにもなっている。
それは、瓦礫の中から見つかった地蔵さんを物語る語りによく現はされている。
後はそれぞに本を読んで貰えれば…………。いずれ、道端の地蔵さんから天皇制までの語り口は中々なスケールでもあり、色々考えさせられる。少しく民衆史的様相も考えなければならないのか?更なる俗世界の奥へ。
ただこの本の著者である磯前順一と云う人は、国際日本文化研究センター教授の肩書きで,宗教・歴史研究とあるのだが、色々検索して調べてみるとただそれだけの枠に収まる人ではないような気もするのであるのだが……。
宗教的表現研究者か?いずれ学的な枠組みでは何処に入る人なのかは定かではない。よけいなことではあるのだが…………。
また,同じ著者で「ザ・タイガース 世界はボクらを待っていた」集英社新書と云う本もある。まだ読んでいない。
どの様な語り!物語になるのか?
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