【注意】この記事には一部ネタバレ要素が含まれるかも
大和市の映画監督宮崎大祐氏による2016年に公開された、大和をテーマとした映画「大和(カリフォルニア)」が厚木市(本厚木)の映画館で上映されるということで14日に見に行きました。
大和カリフォルニアの上映は1月11日~17日の1週間。11~13日の3連休は舞台挨拶などもあったそうです。

上映される「厚木のえいがかんkiki」は2008年に撤退した(旧)厚木パルコのビル(アミューあつぎ)の9階にあります。
アミュー厚木として再オープンした際に映画館もオープンしたものの最初の運営会社は2018年11月に撤退。別の会社が引き継ぎ、現在では「厚木のえいがかんkiki」としてミニシアター映画館として、3スクリーン体制で大きなシネコンで上映されないマイナーな映画や少し前に話題になった映画などを上映しているようです。
なぜ大和の映画を大和ではなく厚木で上映しているのか

学割を適用して1500円。整理番号が書かれた札(整理券)がチケット代わり
座席は自由席ですが上映開始10分前に集合してチケット購入順に入場(その時点で集合していない人はその後に入場)するというシステム。この時は5人ぐらいだったのであまり意味はなかったですが・・

大和(カリフォルニア)のパンフレット(500円)
冊子状ではなく、広げると片面が映画のポスター、もう片面に説明などが書いてあるめずらしい形状
ちなみにチケット購入、パンフレット購入共にクレジットカードが使えました。
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大和(カリフォルニア)は大和市の基地問題を主なテーマにした映画(上映時間119分)。タイトルは「厚木基地の敷地は米国カリフォルニア州の領土である」という大和の都市伝説が由来とのこと。
基地問題といえば日本ではまず沖縄をイメージすると思いますが、実は神奈川県も多くの米軍基地を擁する基地の県という側面があります。しかしながら神奈川の米軍基地は横須賀と県央地区に集中して、多くの神奈川県民は「基地の県」であるという認識はないでしょう。
大和市史の戦後の部を読むと基地問題にかなりの紙数を割いていることからもわかるように、戦後の大和の歴史と発展は、基地が都市発展の起爆剤となった一方で騒音問題をはじめとする「厚木基地」が大きなウエイトを占めています。
映画では主人公のサクラ(20歳前と思われる女性)を主役として、サクラのラッパーを目指すも上手くいかず先が見えない日常と、アメリカから訪問してくる異母妹で米国人のレイとの交流を通じてストーリーが進みます。
ロケ地の殆どが大和市内とその周辺の見覚えがある風景が多く登場していることで、ドキュメンタリーを見ているかのようなリアリティーを感じる一方で、映画内では台詞など直接的な基地問題には触れられません。ただ主人公達の生い立ちという設定や随所に現れる軍用機の騒音など「周辺」から基地問題を描いているのが特徴的です。
近年の大和市政が打ち出している「健康都市」や「70歳代を高齢者と呼ばない都市宣言」、私がこのブログで紹介している「ヤマトンによる精霊都市としての大和」を光とすれば、この映画でスポットを当てたのは基地問題や県内有数の犯罪発生率など大和の影の部分といえます。
ラスト近くで喧嘩に負けて路上に倒れて気を失ったさくらが基地のフェンス内に運び込まれ・・目を覚ませば基地の中ではなく、森と草原の風景の中にいます。この風景こそ厚木基地(飛行場)が出来る前の景色。いわば大和の原風景でしょう。
大和の原風景に触れることで、光があれば影もある。どちらか一方では成り立たない表裏一体のものであり光と影が融合することでアイデンティティが生まれることを認識させられます。
大和市のシリウスやポラリスのような田舎者には目に毒な壮麗な公共施設の話を人にすると返ってくる反応は大体は「大和は基地があるから金があるね」で集約されます。
大和が金があるように見えるのは、近年の市政が健康・福祉分野に予算を多く配分する反面で、中央線がある道路が限られ江ノ島線の連続立体化も進まないような貧弱な道路環境など、「基地の金」だけではないと思うのですが、「基地のお陰」とまとめることで、米軍基地を一地域に押し付けることへの免罪符になっているように聞こえます。この構図は本土人による沖縄もまた似たようなものではないでしょうか。
大和(+綾瀬)にありながら相模川をはさんだはす向かいの街の厚木の名で広く知られた厚木基地。そして大和の映画を大和ではなく厚木での上映。この事実もまた大和と厚木基地の関係性を表していると思います。

この映画が撮影された時期はシリウスが工事中だった過渡期の風景。これもまた時代の記録として貴重なシーンです。
2020/1/19 2:21(JST)