11月18日付で12月15日までで江ノ電バスの一部路線が廃止されることが発表されました。その廃止路線の中に、横浜駅~大船駅、横浜駅~栗木の江ノ電バスとしては珍しい横浜駅東口バスターミナル発着の2路線が含まています。
「乗務員不足の為廃止」を謳っていますが、昨今の市街路線バスは「乗務員不足以前」に「乗客不足」という問題がありました。「乗務員不足」というのは本当は運転を続けたいけど止む無くなのか、それとも世間体の良さそうな言い回しを狙ったのかは分かりません。
ただ市街路線バスの廃止は告知が1~2週間前、酷いと3~4日前ということがよくある中で、4週間前と早めに廃止を発表した部分は良心的だと思いますが、逆にいえばそれだけ利用者数が多いのかもしれません。
横浜駅~大船駅の路線にはだいぶ以前に野毛辺りから乗ったことがありますが、横浜駅から乗った覚えはないような・・。折角なので12月9日に横浜駅からお名残乗車をしてみることにします。
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横浜駅の乗場は東口ターミナルBレーン(中央)の11番乗場
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こちらが今回乗車する栗木行きのバス。神奈川県内では今となっては珍しい中央扉が4枚折戸なのが特徴ですね。
江ノ電バスは12月1日から系統番号表示が始まったのですが、この路線は「Y3」のようですね。半月で廃止になるのに系統番号が付与されたようで・・
なにはともあれ、「横3」のような漢字+数字のような系統番号にはしなかったのは良いことです。
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栗木行きは間隔があく時間帯があるものの概ね毎時1本、大船駅行きはランダムに設定されています。土休日の午前中に妙に充実してますが・・。
巷の路線維持路線とはちょっと趣が異なりますね
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この乗場から発車するバスは、今度廃止になる江ノ電バスの大船駅行・栗木行と神奈中バスの芹が谷行(77系統)の3路線。
江ノ電バスの大船駅行と栗木行は上大岡駅の先の関の下で分かれる形態。同じ横浜駅から発車して途中まで並行していることで、この2路線は兄弟路線のように見えますが、路線の性格は大きく違います(詳細は後程)
大船駅行は神奈中バスの桜木町駅(以前は横浜駅・本町4丁目発)~大船駅行のバスと多少経路が違うものの並走する形です
さて16時55分発に乗車します。乗客は約15人。以前の横浜駅西口~鶴間駅のバスのように(実質)廃止が決まっている路線の割には乗客も本数もあります。
値段は220円の先払い均一運賃。
横浜駅を出て旧東横線に並走する形で桜木町駅方面に向かいますが、紅葉坂バス停を出ると右車線に入り桜木町駅に入らず右折して野毛大通りに。野毛から日ノ出町駅方面に向かいます。
この区間、桜木町駅に入るバスは遠回りする形になるので意外に時間がかかりますが、それがないので早い。日ノ出町駅まで約10分。
日ノ出町駅のガードをくぐりそのまま直進。
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この桜木町駅に入らず日ノ出町駅から前里町を経由して吉野町駅付近で鎌倉街道に入るまでは神奈中バスとは異なる江ノ電バスオリジナルな経路。神奈中バスは本町4丁目~関内駅(羽衣町)~伊勢佐木長者町の方を経由します。江ノ電バスの経路の方が近道ですね。
このルートは横浜市電が最末期(1970年頃)まで走っていたルートの一つ。かってはそれなりの中心的な市街地だった雰囲気が車窓から感じられるものの、中心部が海側に移動してしまい、今となっては伊勢佐木長者町駅から弘明寺方面と同じく、平凡な街中といった雰囲気です。
かなり以前に乗った際は「右折して鎌倉街道に入ります」という妙に詳しいアナウンスがあったのですが、今はなくなり鎌倉街道に入り吉野町駅に。弘明寺を過ぎ、17時28分頃に上大岡駅に到着
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上大岡バスターミナルに入ります。ここ出来た当初は「ゆめおおおかバスターミナル」とか愛称があったような
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上大岡駅では降車場で乗客を降ろしつつ、3番乗場に到着。ここで結構乗客が入れ替わり、乗ってくる人も多く、上大岡駅発車時点が一番乗客が多い状態に。25~30人ぐらい。
乗客の乗車が途切れたところで、「32分の発車です。お待ちください」とアナウンスが入り更に2分の時間調整。鎌倉街道のバスは遅れるイメージがありますが、なんとここまで定時運転。もっとも特に道路が混んでるようなこともなかったのですが・・。
さて上大岡駅を出て早々に鎌倉街道と別れて、片側1車線の幅は広くないものの昔からの街道といった感じの道を走ります。
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横浜刑務所の横を通り栗木を目指します。終点の栗木は上の地図で「トリミングショップ」の辺り。
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約2分遅れの17時46分頃に終点の栗木に到着。上大岡駅からは14分。バスの行先や車内放送は「栗木」ですがバス停の表示は栗木町。折返し場でもなんでもない単なる路上のバス停な変わった終点です。
この栗木バス停の場所は根岸線の新杉田駅と洋光台駅の間。どちらに歩いても約20分。一番近い駅は京急線の杉田駅で約10分という場所。
何処の駅にもちょっと距離がある町から中心部の横浜駅に直結。という、郊外部直結スタイルのバス。沿線の住民には利用価値がありそうな路線ではありそうです。
横浜駅発着の江ノ電バス路線、開設時には他社(神奈中)との縄張り争いなど一悶着あったようですが、横浜駅~大船駅の方は神奈中バスの当て馬的な路線な一方で横浜駅~栗木の方は郊外の住宅地直結という性格が異なる路線です。
横浜駅~上大岡駅の間の区間は今回の廃止で江ノ電バスが走らなくなります。1日1~2本でも残して権利維持を図らず廃止というのは、この区間の路線バス事業に対して、将来性がないと判断したからでしょうか。
桜木町駅に入らず野毛~日ノ出町~前里町を経由するルートは江ノ電バスオリジナルだと書きましたが、神奈中バスの経路ではある中心市街地の関内駅~伊勢佐木長者町付近を通らず日ノ出町駅を経由するルートなど、路線開設時の会社間の調整の結果なのかな?とも感じます。
日ノ出町~前里町付近も旧市街とはいえ往時の中心部である関内・伊勢佐木町周辺は通らない。また昭和40年代頃までは横浜駅は今のように開発されず鉄道の乗換えの為駅のような駅だったことを考えると、横浜駅直結とはいえ東口が開発され横浜駅の中心性が増すまでは、厳しかったのかも??という気もします。
横浜駅から栗木まで12.1km・約48分で220円、途中の上大岡駅から栗木の約15分でも同じく220円。乗客にとっては嬉しい運賃ですが、「均一運賃、どこまで乗っても220円、何処までも乗られたら儲からない」を地で行くような路線です。
この1時間前、私は大和市立病院前から大和駅の2.2㎞12分で210円払って神奈中バスに乗りましたが、それと較べると随分と距離当たりの運賃に差があります。
この運賃差、今回の路線廃止を含めて色々と思わせるものです
さて栗木に着いてから私は新杉田駅を目指して約20分歩くことに。
横浜市郊外は戦後の高度成長期に急速に開発が進み野山が住宅地に変貌してできた街です。その中で栗木町バス停付近は、高度経済成長期以前の昔からの集落があったエリアなのかな?という印象を受けます。ここからgooglemapで道を確認して新杉田駅を目指しますが、駅の方からは時折歩いてくる人の姿が・・。緩やかにカーブを描く片側1車線の軽い山道を歩きます。寒い・・😨
ちなみに栗木から杉田駅方面の道は磯子駅発着の横浜市営バスが通りますが、栗木の近くで時刻表を見たら磯子駅行きが約10分後。新杉田駅に行きたいのでバス乗らず歩きます。
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さて10分ほど歩いて京急の杉田駅に出ます。
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杉田駅の踏切を渡り更に先に。ここからJRの新杉田駅方面は昔ながらの商店街になっています。
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商店街を抜けると広い道路の先に上にマンションが乗ってる香港風なショッピングモールが現れます。ここが駅かと思いきゃ駅はまだ先
この辺りには根岸線開業前は横浜市電が来ていたので、市電の駅と京急線の駅の間に商店街が出来た弘明寺のような街ですね
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一見ローカルな雰囲気ながら全国チェーン店が並ぶショッピングモール内を歩いてさらに先
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連絡橋でもう1本広い道路を超えると根岸線開業時に臨海部に新設された新杉田駅に到着します。
昔からの村だった雰囲気の栗木から昭和初期に出来た京急線の杉田駅。そこから商店街を抜けて臨海地区に昭和40年代になって出来た新杉田駅。横浜駅~栗木のバスの名残乗車から、思わぬ形で横浜市の都市発展の歴史にふれることになりました。
2019/12/11 21:31(JST)