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吉恋本家では番外編に、付き合いだしてからのバレンタインのエピソードがありますが…。
今回、まだお互いの気持ちが通じてない状態のバレンタインエピソードを考えてみました。
本家エピソードでも、譲二さんにばれないようにチョコを隠す場面がありますが、他のメンバーと違って、一緒に暮らしている分、ヒロインは苦労しますね。(;^ω^A
♥♥♥♥♥♥♥
ドキドキバレンタイン~その3
2月14日、バレンタイン当日。
今年はバレンタインが土曜日なので、朝からクロフネを手伝っている。
マスターへのチョコとプレゼント(部屋で使って貰えるようなスリッパ…ちゃっかりお揃いで自分のも買ってある)は厨房の戸棚に隠してる。
渡す機会を何度か見計らったけど、まだ渡せてない。
譲二「百花ちゃん、ごめんね。バレンタインなのに手伝ってもらって」
百花「いえ。気にしないでください」
譲二「だって…、ほら、一昨日作ったチョコだってまだ渡せてないんでしょ?」
百花「ハルくんたちには昨日学校で渡しました。1日早いけど…」
マスターは苦笑した。
譲二「それは…早々と義理だってわかって、みんながっかりしたんじゃない?」
百花「いえ、みんな喜んでくれましたよ…。
一護くんは『こんな甘いもの食べられるか!』って文句いいながらカバンにしまってましたけど…」
譲二「へぇ~。あの甘いもの嫌いの一護がね…。
ちゃんとカバンにしまってたんだ…」
百花「一護くんの甘いもの嫌いのことすっかり忘れてて…。
一護くんだけチョコじゃない方がよかったかな…」
譲二「いや、一護なりに嬉しかったと思うよ。
何しろ百花ちゃんの手作りチョコレートだからね」
百花「本当はマスターに手伝ってもらったものですけど…」
譲二「しーっ。それはあいつらには秘密にしておかなきゃ…。本命の彼にもね」
マスターの笑顔があまりにも無邪気だったから…、少し胸が痛んだ。
やっぱり本命の相手が自分だとは思ってないんだよね…。
譲二「それで…りっちゃんにはどうするの?」
百花「りっちゃんには午前中に来た時に渡しました」
譲二「え? そうなの?」
百花「はい。マスターが厨房に籠ってた時に…。
チョコを渡したらすぐに帰っちゃったから…」
マスターは少し真面目な顔で私を見つめた。
譲二「…もしかして…。本命チョコを貰ったのはりっちゃんなのかな?」
百花「いえ…。りっちゃんもみんなのと同じチョコですよ」
りっちゃんはチョコを渡した時に喜んでくれたものの、その箱の小ささに義理と直ぐ気づいたみたいで、「ありがとう」といいながらも直ぐに帰ってしまったのだった。
マスターは少し考え込むと私に優しく言った。
譲二「百花ちゃん。厨房に賄いを用意してあるから、それを食べたら今日はもう上がってくれていいよ」
百花「マスターは?」
譲二「俺は合い間で食べるし、昼時が過ぎてお客さんもひと段落ついたから…後は俺一人で大丈夫だよ」
「さぁ、早く早く」と急き立てられて、用意された賄いを食べると成り行きで出かけることになってしまった。
隠してあったプレゼントの紙袋も一緒に持って出る。
♥♥♥♥♥♥♥
冬の空は晴れて、空気は冷たいものの穏やかな日差しが降り注いでいる。
とりあえず、タコ公園のベンチに座ってため息をついた。
私って…、どうしてこう意気地がないんだろう?
チョコの話題になった時に思い切ってチョコを渡せばよかった…。
お店にはまだお客さんが二組くらいはいたけど…。
チョコに気持ちを伝える手紙は添えてあるのだし、それさえ渡せれば…。
よしっ。気合いを入れるために両手で頬を軽く叩いた。
外気に触れて頬も冷たくなっている。
決心が鈍らないうちにとそのままクロフネに帰った。
ちょうど、残っていたお客さんが会計を済ませて店を出て来たところだった。
百花「ありがとうございました」
客「あら、ウエイトレスさん。お使いの帰りなの?」
百花「はい…まあ」
客「ごちそうさま」
お客さんはにっこり笑って去って行った。