柳瀬氏とはどんな人物なのだろうか。。。
柳瀬氏は1984年(昭和59年)東大法学部を卒業して通商産業省(現経済産業省)に入省し、
2004年エリートコースとされる資源エネルギー庁原子力政策課長に就任。
そして2年後の2006年、原発推進を掲げた「原子力立国計画」をまとめ,
これが高く評価され2008年には麻生政権の首相秘書官として官邸入り。
2011年には経済産業政策局審議官になり、
2012年に第二次安倍政権の首相秘書官として二度目の官邸入りを果たす。
そして2017年から省内ナンバーツーの経済産業審議官を務めている。
柳瀬氏が第二次安倍政権で二度目の首相秘書官(事務)になったのは、
経産省の2年先輩で、現在も首相秘書官の今井尚哉氏の引きがあったからだとされている。
今井氏と柳瀬氏は、日下部聡・現資源エネルギー庁長官と並び、原発推進派として知られる。
今井氏、日下部氏らに目をかけられるきっかけとなった「原子力立国計画」は、
柳瀬氏の出世作の報告書であり、2005年に閣議決定され、
下記の「原子力政策大綱」の基本目標となった。
・2030年以後も、発電電力量の30~40%程度以上の役割を期待
・核燃料サイクルを着実に推進
・高速増殖炉の2050年の商業ベース導入を目指す
具体策として
・電力自由化時代の原子力発電の新・増設、既設炉リプレース投資の実現
・高速増殖炉サイクルの早期実用化
・我が国原子力産業の国際展開支援
・放射性廃棄物対策の着実な推進
を高らかにうたっている。
この政策に忠実に従った企業が、東京電力と東芝だった
「原子力政策立案に当たっての5つの基本方針」では、
国、電気事業者、メーカー間の建設的協力関係を深化。
このため関係者間の真のコミュニケーションを実現し、ビジョンを共有。
先ずは国が大きな方向性を示して最初の第一歩を踏み出す
とあり、経産省が示した大方針に電力会社やメーカーが従うという方式である。
この柳瀬氏が打ち立てた方針に最も忠実に従った企業が東京電力と東芝だった。
東電は当初海外進出には慎重だったが、
電力自由化を進めたい経産省は「海外に出ない限り東電に成長はない」と促し、
日本製の原子炉を輸出し、
日本の電力会社が原発の運営ノウハウを提供し、
日本の商社が燃料のウランを供給するという
「原発のパッケージ型輸出」に東電を組み込んだ。
東電よりはるかに積極的に原発のパッケージ型輸出に参画したのが東芝である。
東芝が米原発大手のウエスチングハウス(WH)を54億ドル(当時のレートで約6210億円)で買収。
「原子力立国計画」が発表された2ヶ月後の2006年10月に、見事に足並みを揃えた。
建設中の大間原発と上関原発の仕事が終われば、国内での新・増設やリプレースを望めない。
地元の理解を得るのは政治的に極めて困難な状況で、
原発メーカーにとっては従わざるを得ない状況だった。
東芝、日立製作所、三菱重工業の原発3社が原子力事業を続け、
原発関連の技術や人材を維持するには、海外に市場を求めるしかなかった。
原子力政策課長だった柳瀬氏はこうしたメーカーに
「我が国原子力産業の国際展開支援」を売り込んだ。
具体策は何一つ実現していない
驚くべきは、報告書が書かれてから12年が経過しつつある現在、
原発の新・増設、
高速増殖炉サイクルの実現、
放射性廃棄物対策といった
「原子力立国計画」に書かれた具体策が、
何一つ実現していないことだ。
政府は2011年の東京電力福島第一原発の事故後、
一時は全てが運転をやめた既存原発を再稼働させるのが精一杯で、
新・増設が語れる状況には全くなっていない。
高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」は廃炉が決まり、
放射性廃棄物対策については手付かずの状態だ。
「もんじゅ」に至っては、50年前に開発が始まり24年前に完成したが、
トラブル続きで運転できたのはたったの250日。1兆410億円の予算を注ぎながら
「高速増殖サイクルの早期実用化」にはほとんど貢献できなかった。
廃炉作業の、ナトリウム冷却材の抜き取りが技術的に難しく、
「30年で3750億円」という計画の現実性にも大きな疑問符がつく。
膨らみ続けるコストは、税金と電気料金で負担
2013年時点で政府は廃炉と賠償の総額を11兆円と見積もっていたが、
3年後には21兆5000億円に倍増した。
まだ放射能で汚染されたデブリを取り出す方法すら見出せていない状況で、
廃炉・賠償コストがどこまで膨らむかは誰にもわからない。
膨らみ続けるコストは、結局、国民が
税金と電気料金で負担することになる。
加計学園の問題は
文部科学省が獣医学部の新設を「首相の意向」として、
首相と極めて近い人物の学校にだけ認めたことだ。
森友問題も首相と首相夫人が近い人物の学校に
国有地を格安に払い下げした「首相案件」が
民主主義では考えられないという問題である。
しかし「実害」という意味では数億円、10数億円レベルの話だ。
一方、柳瀬氏が書いた「原子力立国計画」は、
東芝を海外での原発事業に誘い、総額1兆4000億円という途方もない損失を生み、
「もんじゅ」でも1兆4000億円、「フクシマ」でも21兆5000億円の国費が費やされる。
国富の喪失についてどう考えているのか
米国で進んだシェールガス革命、欧州で進む再生エネルギーの利用拡大。
IT企業が加わって電力をより効率よく使うスマートグリッド。
電力を取り巻く環境は凄まじい勢いで変化している。
「原子力立国計画」の「資源のない日本にとって原子力は必要不可欠」という思想は、
太陽の光、洋上風力発電の開発に反している。
島国の日本は、世界第9位の排他的経済水域(447万平方km)を持つ。
加計問題について、真実を語るべき柳瀬氏だが、
ライフワークである「原発推進」がとんでもない規模の国富を喪失させていることについて、
どう考えているのか。。。
東芝の解体の陰に
柳瀬氏が潜んでいたことを
ほとんどの国民は知らない。
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加計学園で“時の人” 柳瀬元首相秘書官のライフワークは ... - 文春オンライン
加計学園問題で一躍有名になった経産省の柳瀬唯夫経済産業審議官。獣医学部の新設について愛媛県職員や学園幹部らと面会したかどうかについて、国会で参考人として招致される見通しだ。
柳瀬氏の経産官僚としてのライフワークは「原発推進」であり「獣医学部の新設」ではない。そして、原発推進については「記憶にない」と言えぬ証拠がある。原子力政策課長時代の2006年に自らが中心になって書いた報告書「原子力立国計画」だ。
加計学園について国会で答弁する柳瀬審議官 ©時事通信社
異例だった二度目の首相秘書官
1984年(昭和59年)東大法学部を卒業して通商産業省(現経済産業省)に入省した柳瀬氏は、2004年、エリートコースとされる資源エネルギー庁原子力政策課長に就任する。
そして2年後の2006年、原発推進を掲げた「原子力立国計画」をまとめた。これが高く評価されたのか、2008年には麻生政権の首相秘書官として官邸入り。2011年には経済産業政策局審議官になり、2012年に第二次安倍政権の首相秘書官として二度目の官邸入りを果たす。
首相秘書官を二度務めるのは異例のことだ。そして2017年から現在に到るまで省内ナンバーツーの経済産業審議官を務めている。
柳瀬氏が第二次安倍政権で二度目の首相秘書官(事務)になったのは、経産省の2年先輩で、現在も首相秘書官(政務)を務めている今井尚哉氏の引きがあったからだとされている。今井氏と柳瀬氏は、日下部聡・現資源エネルギー庁長官と並び、省内では「原発推進派」として知られる。
59年入省の柳瀬氏が、57年入省の今井氏、日下部氏らに目をかけられたきっかけは「原子力立国計画」であり、柳瀬氏の出世作と言える。
報告書の中身を見てみよう。
2005年に閣議決定された「原子力政策大綱」に定めた基本目標である
・2030年以後も、発電電力量の30~40%程度以上の役割を期待
・核燃料サイクルを着実に推進
・高速増殖炉の2050年の商業ベース導入を目指す
を実現するための具体策として
・電力自由化時代の原子力発電の新・増設、既設炉リプレース投資の実現
・高速増殖炉サイクルの早期実用化
・我が国原子力産業の国際展開支援
・放射性廃棄物対策の着実な推進
を進めることを高らかに謳っている。
忠実に従った企業が東京電力と東芝だった
「原子力政策立案に当たっての5つの基本方針」には、こんなくだりがある。
〈国、電気事業者、メーカー間の建設的協力関係を深化。このため関係者間の真のコミュニケーションを実現し、ビジョンを共有。先ずは国が大きな方向性を示して最初の第一歩を踏み出す〉
つまり経産省が示した大方針に電力会社やメーカーが従うという護送船団方式である。この柳瀬氏が打ち立てた方針に最も忠実に従った企業が東京電力と東芝だった。
東電は当初、海外進出には慎重だったが、電力自由化を進めたい経産省は「海外に出ない限り東電に成長はない」と促し、日本製の原子炉を輸出し、日本の電力会社が原発の運営ノウハウを提供し、日本の商社が燃料のウランを供給するという「原発のパッケージ型輸出」に東電を組み込んだ。
東電よりはるかに積極的に原発のパッケージ型輸出に参画したのが東芝である。東芝が米原発大手のウエスチングハウス(WH)を54億ドル(当時のレートで約6210億円)で買収したのは、「原子力立国計画」が発表された2ヶ月後の2006年10月。官が打ち出した大方針に見事に足並みを揃えた。
原発メーカーにとっては従わざるを得ない状況でもあった。建設中の大間原発と上関原発(いずれも運転開始時期は未定)の仕事が終わってしまえば、それ以降は国内での新・増設やリプレースを望めない。地元の理解を得るのは政治的に極めて困難な状況が続いているからだ。東芝、日立製作所、三菱重工業の原発3社が原子力事業を続け、原発関連の技術や人材を維持するには、海外に市場を求めるしかなかった。原子力政策課長だった柳瀬氏はこうしたメーカーの窮状に目配りし、原子力立国計画の中に「我が国原子力産業の国際展開支援」を盛り込んだのだ。
具体策は何一つ実現していない
驚くべきは、報告書が書かれてから12年が経過しつつある現在、原発の新・増設、高速増殖炉サイクルの実現、放射性廃棄物対策といった「原子力立国計画」に書かれた具体策が、何一つ実現していないことだ。
政府は2011年の東京電力福島第一原発の事故後、一時は全てが運転をやめた既存原発を再稼働させるのが精一杯で、新・増設が語れる状況には全くなっていない。高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」は廃炉が決まり、放射性廃棄物対策については手付かずの状態だ。
「もんじゅ」に至っては、50年前に開発が始まり、24年前に完成したが、トラブル続きで運転できたのはたったの250日。1兆410億円の予算を注ぎながら「高速増殖サイクルの早期実用化」にはほとんど貢献できなかった。おまけに廃炉作業は、冷却材であるナトリウムの抜き取りなどが技術的に非常に難しく、現在、示されている「30年で3750億円」という計画の現実性にも大きな疑問符がつく。
膨らみ続けるコストは、税金と電気料金で負担
期間とコストが底なしにかかりそうなのは福島第一原発も同じ。2013年時点で政府は廃炉と賠償の総額を11兆円と見積もっていたが、3年後には21兆5000億円に倍増した。まだ放射能で汚染されたデブリを取り出す方法すら見出せていない状況で、廃炉・賠償コストがどこまで膨らむかは誰にもわからない。膨らみ続けるコストは、結局、国民が税金と電気料金で負担することになる。
加計学園の問題は文部科学省が「不必要」と判断し、長年、認可しなかった獣医学部の新設を「首相の意向」を錦の御旗にして、首相と極めて近しい人物が経営している学校にだけ認めたことに疑念が集まっている。森友問題も首相と首相夫人が近しい人物が経営する学校に国有地を格安に払い下げしたのではないかという疑いだ。「首相案件」が横車を押せるようでは法治国家の看板を下ろさねばならない。民主主義を掲げる国としては由々しき問題である。
しかし国富を損なう「実害」という意味では数億円、10数億円レベルの話だ。一方、柳瀬氏が書いた「原子力立国計画」は、東芝を海外での原発事業に誘い、総額1兆4000億円という途方もない損失を生んだ。「もんじゅ」でも1兆4000億円、「フクシマ」でも21兆5000億円の国費が費やされる。
国富の喪失についてどう考えているのか
米国で進んだシェールガス革命、欧州で進む再生エネルギーの利用拡大。IT企業が加わって電力をより効率よく使うスマートグリッド。電力を取り巻く環境は凄まじい勢いで変化している。
「原子力立国計画」の通奏低音になっているのは、「資源のない日本にとって原子力は必要不可欠」という思想だが、太陽の光は平等に降り注ぐ。島国であるがゆえに日本の排他的経済水域は447万平方キロメートルと世界第9位の広さを持つ。洋上風力発電にはもってこいだ。
加計問題について、国会で事実をつまびらかに証言してもらいたいのはもちろんだが、ライフワークである「原発推進」がとんでもない規模の国富を喪失させていることについて、柳瀬氏はどう考えているのか。別の機会にでも、じっくり聞いてみたいテーマである。
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