京都の闇に魅せられて(新館)

*小泉改革の果てにあるもの

 日本の有権者が未来を託した小泉改革。
 その行方には何があるのか?

 それを知る、あるいは推測するために役立つ本を、私は2冊見つけた。
 今夜は、それを紹介したい。


 まずひとつは、『年収300万円時代の「経済設計」ノート』(森永卓郎監修、イースト・プレス発行)である。
 これは、ベストセラーにもなった森永氏の著書『年収300万円時代を生き抜く経済学』の図解付き応用・実践版ともいうべきものである。
 特に同書の「PART1・シナリオ編」では、「小泉改革が目指しているものとは何か?」とか、「社会は、我々の生活はどのように変化していくのか? それは何故なのか?」ということが、図解付きでわかりやすく解説されている。
 「PART2」と「PART3」では、ではどう生きればいいのか、という問題について森永氏の意見・提言が書かれている。
 序盤から森永氏は、小泉改革を以下のように切り捨てている。

 「改革なくして成長なし」といったわが国の首相が目指す構造改革の本質は、弱肉強食社会をつくることにある。日本の政治や経済や社会の仕組みを、すべてアメリカ型……弱い者の犠牲の上に社会が成り立ち、富める者はより富み、貧しい者は永遠に貧しいまま一生を終える……に変えていくのだ。

 これ以上の詳細は、本のネタバレになるので、ここでは言わないでおこう。


 もう一冊は、『2050年のわたしから』(金子勝著、講談社)という本である。
 この本は、政府などが出す楽観的な(というより「平成版・大本営発表」のような)未来予測を排し、経済学者である著者が(「それまでの傾向が続いていく」という仮定の下で)、独自に統計シュミレーションを行い、「2050年の日本は、どのような社会になっているか」という予測を立てたものだ。
 2005年時点で20歳、2050年時点で65歳になっているという鈴木高志という青年が語るという形で、論が展開していく。
 この予測は、「あらゆる分野で現在の平均的傾向が続いていく」という単純化された仮定の下でされている、という問題点を持つ。しかし、妙にリアリティがある。少なくとも、どう考えてもありそうにもない政府発表の「大本営発表」(経済財政諮問会議の『21世紀ビジョン』)よりは。あとがきにも書いてあるが「高齢化のピークとされる2050年に、何もかもがゼロになる」という、偶然にしてはあまりにも不気味で、妙なリアリティがある一致に、私は不思議とリアリティを感じ、恐ろしくなってくる。
 なお、以下にこの本に書かれている未来予測の一部を紹介する。

*2017年、中国のGDP(国内総生産)が、日本のそれを抜く。
*2050年、日本の財政赤字はGDPの5倍にまで膨れ上がる。
*救急車や消防車を呼ぶときにも、料金を請求されるようになる。
*2050年、主婦・学生を除く若年人口に占めるフリーターの割合が7割近くになる。
*2030年過ぎ、国民年金の納付率はゼロに。
*2050年頃、自己破産は100万件を越え、年間5万人近くが自殺する。

などなど、他にも衝撃的な予測がいくつも出てくる。
 そして、後半に著者なりの提言が書いてある。


 どちらも、読みやすいので、経済学等の素養がない人でも理解できると思う。
 そして……改めて、「弱肉強食」「市場原理主義」の小泉政権が大勝したことの意味を考えてみるといいだろう……。
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