見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

民主主義が育つ環境(その3)

2007-08-03 02:29:19 | 欧州
「この国では、小さい時から子どもに自己決定の訓練をさせ、その決定に責任をもつことを学ばせるんです」と語る高見幸子さんは、ストックホルム大学卒業後15年間の教職経験をもつ。
スウェーデンの教員は、子どもたちに民主主義の基本を徹底して教えるよう、求められるという。
「教育の目標として掲げられているのは、民主主義社会で機能できる人間を育てるということです。そのためには、(1)批判力をもったこどもを育てる(2)自由と平等の機会を与える(3)連帯感を育てるの3つが重要とされています」「連帯感」は公共心や市民意識といったレベルのもので、集団主義とは異なる、と高見さん。自分の税金が公共や他人の福祉のために使われるのは、連携して社会を築いていくこと、というように考える。
問題は、(1)の批判力をもつということだろう。批判力は論理的思考力に裏づけされる。批判的なものの見方を肯定する社会と、思考停止状態で体制に従うことをよしとする社会とは、「自己決定」の起点が大きくことなる。議論は決して争いではないのだが、対立軸に立つことを「争い」と受け取り、批判することは相手を否定することであるかのように思われがちな日本社会とは大きな違いである。
「中・高校では、国政選挙の模擬選挙を行うんですよ。各党の政治方針や政策をクラスで議論させることもします。学校は、民主主義社会に生きる大人になるためのトレーニングをする場でもあるんですね」
批判や議論を発展的な方向に導くために、論理的思考能力を育てることは、議会制民主主義社会では欠くことのできない教育である。環境教育を推進する高見さんの理念には、こうした民主主義教育の体験が生きている。
日本では「議論」や「批判」が、相手の人格否定につながる感情論になりがちなのはなぜなのだろう。自分の過去を反省しつつ、今の日本の教育は自分の時代とは大きく変わってきていることを期待したい。
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2 コメント

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多分変わってない (B型パパイヤ)
2007-08-13 09:47:08
興味深く読みました。この間神野直彦の講演を聴いた時、民主主義教育についてスエーデンの例を挙げていましたが、まさにこの通り。考えてみると、民主主義体制においてそれを機能させる人間を育てないと、民主主義が機能しないってことになるわけですよね。今の日本が突き当たっている問題はここかなって思いました。しかしだとすると根はひじょうに深い。教育に関して言えば、子供達の様子を見ている限り大きく変化しているとは思えません。だいたい教育改革とか掲げていても民主主義教育に関心があるようには全然見えないですから、子供の様子を見るまでもありませんけどね。自明のものって勘違いしているとしか思えないですね。
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日本社会が避けるもの (ワイン)
2007-08-14 21:01:09
「民主主義」を教えるためには、教員がその素地を持っていなければならないということですね。私自身、それをどう教えてきたかというと曖昧で反省することばかりです。阿部首相は、教育改革について大胆な発言をしていますが、例えば、選挙の投票率を上げる努力とか、愛国心というより、公共や民主主義について教えるべきという議論は出ているのでしょうか。
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