見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

住民の世代交代を視野に入れた都市計画

2007-07-29 01:40:38 | 欧州
高見幸子さんが案内してくださったエコシティ「ハンマビーショスタッド」は、ストックホルム市が2004年のオリンピック招致キャンペーンの売り物のひとつとして計画した環境モデル都市だ。残念ながら、招致合戦の結果、アテネに軍配が上がったのだが、計画はその後も粛々と進められ、現在は各国からの視察が相次ぐワールドワイドなモデル都市となった。

そもそも、環境汚染に浸った工業地をモデル都市に生まれ変わらせているというのだから、語るに尽くせぬほどの話題満載の地区である。
高見さんに案内されながら路面電車の走る新しい街並みを歩くと、「持続可能なエコ都市」のポイントをそこかしこに見ることができる。
(1)行政と企業との協働で建設しているソーラー発電モデル住宅
(2)可燃ごみを地下タンクに一括回収しバキュームする分別ゴミ収集システム
*ゴミのバキューム口
(3)雨水の浄化処理場

(4)余熱を利用した地域暖房プラント
(5)多彩な環境配慮型商品を扱うスーパー

(6)市民環境教育推進センターの設置と運営
日々の生活を送る住民たちの気持ちが気になるくらい、各国で試みられているあらゆる環境配慮を盛り込んだ街だ。
しかし、実は最も印象的だったのは、環境都市のシステムよりも、この都市開発が「世代交代」を視野に入れた長期計画に沿ったものであるという計画性だった。
日本の多くの自治体や業者は、一定期間に宅地を開発し住宅を供給する。住宅を購入しようとする家族の年代や構成はおよそ似ているため、そのコミュニティは同世代集団として人生を送ることになる。若い家族世代のうちは地域が活気に満ちるが、やがて一斉に高齢化に向かう。ストックホルム市は、それを避けるために、10年以上の年月をかけ、住民の世代交代が順次進むよう計画的な宅地整備と住宅供給を行っているというのだ。
特定時期に一斉入居した公営住宅地区が、高齢化の渦中で悩んでいる例を目の当たりにしてきた。自治組織が機能しないという地区課題への対応に苦慮した経験があるだけに、このストックホルム市の長期展望に立った都市計画の先見性に敬服するしかない。
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