小関順二公式ブログ

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優勝候補、横浜高敗れる

2012-07-26 15:41:52 | 2012年観戦記・高校野球

◇7月25日(水曜日)晴れのちくもり
神奈川大会準々決勝/横浜スタジアム
桐光学園4-3横浜

 桐光学園の2年生左腕、松井裕樹(左投左打・174/74)が横浜打線を封じ込めたという試合である。横浜ベンチはスターティングメンバー9人のうち右打者を8人揃えた。山内達也、田原啓吾、拝崎諒という左打者を外したのは、左腕のスライダーを左打者では攻略できないと考えたからだろう。しかし、松井の縦変化のスライダーはほとんど真縦に落ちる。つまり求められていたのは高低の攻めに対する適応力だけで、右であろうと左であろうと関係なかった。ならば、せめて足の速い拝崎は起用してもよかったのではないか。
 まず紹介したいのは、打者走者の各塁到達タイム。全力疾走の基準「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12.3秒未満」をクリアしたのは桐光学園の4人6回に対して横浜はわずか1人1回だった。8回表終了まで1対1の接戦で、こういうときにモノを言うのが脚力。それを考えると、左対左の有利・不利だけで拝崎をベンチに置いたのはまずかったと思う。
 桐光学園の3回の1点は、先頭打者の1年生・8番武拓人(遊撃手・右投左打・171/68)の遊撃安打(一塁到達4.06秒)が突破口になった。バントで二塁に進んだあと、2死から2番宇川一光のタイムリーで先制のホームを踏んだ。
 8回も先頭の武が遊撃内野安打(一塁到達4.10秒)で出塁し、バントで進塁したあと、1番鈴木拓夢の内野安打で1死一、三塁とし、2番宇川がスクイズを失敗、チャンスは潰えたかに思えた。しかし、2死一、二塁から3番水海翔太、4番植草祐太の連続安打で2点追加し、さらに安打、押し出しの四球で決定的と思える3点を奪い、4対1とした。
 この回、武以外でも鈴木の内野安打、宇川のスクイズ失敗のときの一塁到達が4.3秒未満を記録し、横浜内野陣は守っていても気の休まるときがなかっただろう。

 桐光学園の松井は抜群の出来だった。とくによかったのが、8人揃った右打者への外角低めのストレート。さらに、ほとんど真縦に落下してくるスライダーが抜群のキレで、横浜打線はこれらの緩急に手も足も出なかった。投球フォームにも触れると、腕を振った軌道をなぞるように上半身がかぶさっていく。このフォームの要因となる前肩上がりは一見コントロールミスを誘うように見えるが、実際にはコントロールを安定させるほうに寄与していた。
 横浜で目立ったのは1年生の4番、高濱祐仁(一塁手・右投右打・181/83)だ。7回にはマウンド上の松井を直撃するライナーを放ち(二塁ゴロ)桐光学園ベンチを震撼させた。さらに9回には1死三塁の場面で、バットにボールを吸着させるような呼び込みで、一気にこれを左中間フェンスまで運び、三塁走者を迎え入れた(三塁打)。
 横浜は確かに敗れたが、この一打を見られたことで来年に期待を持ち越すことができた。ファンの思いを背負い込まなければならない高濱は大変だが、先輩の松坂大輔も涌井秀章も筒香嘉智も、背負い込んだ苦労の分だけ大きくなった。高濱にもそういう選手になってもらいたいと思った。

※都市対抗、高校野球の観戦記はホームページでも掲載しています。http://kosekijunjihomepage.com/


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