小関順二公式ブログ

プロ野球、アマチュア野球、野球史

首都大学リーグは菅野智之だけではない!という意地

2011-06-09 21:19:40 | 2011大学選手権
◇6月8日(水曜日)神宮球場・晴れ
全日本大学野球選手権
日本体育大対奈良産業大
辻 孟彦 4年・投手・右右・182/86 京都外大西→日本体育大

 辻は京都外大西3年だった07年夏、甲子園大会に出場している。成績は3回戦の長崎日大戦に4回3分の1を投げ(2度に分けて登板している)、5安打、2失点という記録が残っている。
 観戦ノートには「始動で上げた左足が回り込んでねじれが生まれ、そのねじり返しで投げる。スリークォーター、左肩の開きが早い。本格的な投手という感じがしない。それでも素材のよさは感じる。球筋のよさとボールの強さ、伸びもいい。育成能力のある大学、社会人へ行けば一変する」(確認できたストレートの最速は141キロ、クイックは1.28と1.40秒)。この辻が現在はヒジの位置がさらに下がり、サイドハンドに近くなっている。
 春のリーグ戦はドラフト1位候補・菅野智之を擁する東海大を2勝1敗で破り、これが決め手となってリーグ優勝を果たすのだが、この3試合すべてに登板し、次のような記録を残している。
 4/24 東海大3-0日体大……6回、7安打、2自責(3失点)
 4/25 日体大4-0東海大……9回、3安打、完封
 4/26 日体大1-0東海大……9回、5安打、完封
 まさに鉄腕と言っていい。春1シーズンでは新記録となる10勝(3敗)を挙げ、防御率1.35はリーグ3位、さらに驚くべきは「93回3分の1」のイニング数である。東浜巨(亜大)70回3分の1、小室正人(立大)66回3分の2という各リーグの主要投手とくらべると辻のタフネスぶりは際立つ(東海大の菅野智之は64回)。最高殊勲選手、ベストナイン受賞は当然と言っていい。
 しかし、5月21日に見た筑波大戦のピッチングはよくなかった。ストレートが右打者の内角高め方向に抜けるのだ。この試合に勝てば完全優勝へ王手、というプレッシャーがあったのかもしれない。4回3分の1を投げて3失点を喫すると早々と降板、チームも3対6で敗れてしまった。
 翌22日を3対0で完封(シーズン5完封はリーグ新記録)、23日を3失点で完投して優勝を決めても、私の中では21日の不甲斐なさが刻み込まれ、「ドラフト候補」と確信を持って言うことができなくなっていた。そして、この大学選手権の奈良産業大戦である。これが“抜け癖”にてんてこ舞いし、4回3分の1で降板した男と同一人物かと思った。
 ストレートが右、左打者に限らず外角低めにピタリと決まり、最速は147キロ。神宮球場のスピードガン表示なので割り引いて考えなければならないが、キレのよさはスタンドからでもよくわかった。横変化のスライダー、真縦に落ちるチェンジアップがあり、数少ない内角いっぱいのコースにこのチェンジアップを配し、外角主体のピッチングに奥行きを与えている。
 第1試合で期待していた中根佑二(東北福祉大)と浦野博司(愛知学院大)が本調子でなくがっかりしたが、そのあとに出てきた山形晃平(慶大2年・右左・176/77)、福谷浩司(慶大3年・右右・183/90)、真島健(東京国際大2年・右右・178/78)、伊藤和雄(東京国際大4年・右右・184/82)が期待以上のピッチングで、1日4試合の強行軍も苦にならなかった。こういう日が何だかとても嬉しい。
 


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