俺を軍神にさせてくれ!そうすりゃ靖国に奉られ、少なくとも家族には数十年間軍人恩給が支払われるんだ!
魔球が夢だった野球青年は後に軍神とされたのかどうかはわからないけど、フォークの達人がハマの大魔神として活躍していたことは記憶に新しい。物語の主人公は甲子園の優勝投手、そして大学野球を続けながらも肩を痛めて魔球を研究していた青年並木(市川海老蔵)。速球はもう投げられないと諦めていたが、彼は魔球開発を夢見て野球に打ち込んでいた。しかし、彼の同級生でマラソン選手の北(伊勢谷友介)が召集令状の届く前に志願したり、中学生でも出陣しているという話を聞くにつれ、自らも志願する道を選んでしまった。
恋人美奈子(上野樹里)にさえ軍の秘密を漏らすことはできない。特攻で自分が死にゆく身であることすら伝えることができないのです。戦友同士では家族のためにだとか夢を追い求めるためにだと語り合えるのに、正直な心を伝えられないことの悲しさが伝わってきました。終戦間近、日本は負けると皆わかっていた状況下で、「何のために二度と帰れないと知りながら回天に乗ったのか」というテーマが半ば自暴自棄とも思える言動で重くのしかかってきます。
面白いことに、この映画は戦争の悲惨さを直接的な映像にすることを意図的に避けているように思えます。それが並木の父(三浦友和)の「お前、敵を見たことあるのか?」に集約され、敵だって人間であること、アメリカ人は野球も好きなんだという単純なことを改めて教えてくれます。「国って何だ?」といった問答も、愛国心が議論される現代的なテーマに絡めて考えさせられました。もちろん、当時は「お国のため=天皇のため」ですから、見たこともないので「家族のため、恋人のため」だとしか答えようがありません。
たまたま朝の連ドラ『純情きらり』が敵国の音楽であるJAZZがテーマとなっているので共通項があって興味深いのですが、どちらも三浦友和が父親であるという偶然も見過ごすわけにはいきません。そのほか、俳優陣の中で気に入ったのが柏原収史。突撃直前の表情が凄まじいものがありました。全体的には抑え目の演出であり、日記の朗読によって補完するような内容だったため、小説を聞かされているような感覚に陥ってしまったのがマイナスポイントでした。それでも人間魚雷=回天についての知識を与えてくれる、戦争を理解するためには必見の映画かと思います。
★★★★・
魔球が夢だった野球青年は後に軍神とされたのかどうかはわからないけど、フォークの達人がハマの大魔神として活躍していたことは記憶に新しい。物語の主人公は甲子園の優勝投手、そして大学野球を続けながらも肩を痛めて魔球を研究していた青年並木(市川海老蔵)。速球はもう投げられないと諦めていたが、彼は魔球開発を夢見て野球に打ち込んでいた。しかし、彼の同級生でマラソン選手の北(伊勢谷友介)が召集令状の届く前に志願したり、中学生でも出陣しているという話を聞くにつれ、自らも志願する道を選んでしまった。
恋人美奈子(上野樹里)にさえ軍の秘密を漏らすことはできない。特攻で自分が死にゆく身であることすら伝えることができないのです。戦友同士では家族のためにだとか夢を追い求めるためにだと語り合えるのに、正直な心を伝えられないことの悲しさが伝わってきました。終戦間近、日本は負けると皆わかっていた状況下で、「何のために二度と帰れないと知りながら回天に乗ったのか」というテーマが半ば自暴自棄とも思える言動で重くのしかかってきます。
面白いことに、この映画は戦争の悲惨さを直接的な映像にすることを意図的に避けているように思えます。それが並木の父(三浦友和)の「お前、敵を見たことあるのか?」に集約され、敵だって人間であること、アメリカ人は野球も好きなんだという単純なことを改めて教えてくれます。「国って何だ?」といった問答も、愛国心が議論される現代的なテーマに絡めて考えさせられました。もちろん、当時は「お国のため=天皇のため」ですから、見たこともないので「家族のため、恋人のため」だとしか答えようがありません。
たまたま朝の連ドラ『純情きらり』が敵国の音楽であるJAZZがテーマとなっているので共通項があって興味深いのですが、どちらも三浦友和が父親であるという偶然も見過ごすわけにはいきません。そのほか、俳優陣の中で気に入ったのが柏原収史。突撃直前の表情が凄まじいものがありました。全体的には抑え目の演出であり、日記の朗読によって補完するような内容だったため、小説を聞かされているような感覚に陥ってしまったのがマイナスポイントでした。それでも人間魚雷=回天についての知識を与えてくれる、戦争を理解するためには必見の映画かと思います。
★★★★・
トラックバックありがとうございます。
>「国って何だ?」といった問答も、愛国心が議論される現代的なテーマに絡めて考えさせられました。
近く改憲、憲法9条の見直しが囁かれる中、もう一度原点を考えさせられた思いです。
あのような犬死のような死もまた戦争における死なのですよね。
海老さま、ちょっと老けすぎでした。
キャッチボールもあまり上手くなかったような・・・(汗)
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窮鼠猫を噛むのごとく、現代でも自爆テロが横行している。61年前の日本とほとんど同じ体制の国も今なお存在している。
映画からのメッセージがとても解りにくく、何とでも感じることが出来たので、今回の映画は少し残念だったかなと思いました。
>人間魚雷=回天についての知識
とにかくこの複雑さにはでした。
人間魚雷という言葉は知っていても、それに纏わる事実など、知らないことはまだまだたくさんあるのだと思いました。
本当の意味での愛国心、あの当時にあったのでしょうか?
自暴自棄が的を射ているような気がしますが・・・。
いつもありがとうございます。
愛国心という言葉以前に「国ってなんだ?」と改めて感じさせられました。国のことを考える前に人間がそこに集まっていることを忘れてしまいがちですが、個人よりも国という得体の知れないものを尊重する人が多かったんですよね・・・
>ミチ様
残酷シーンを一切排除した戦争映画も珍しいのかもしれません。敵艦も小さく映し出されるだけの静かな映画。「敵を見たことあるのか?」という隠されたテーマが重みをもって訴えてきたように思いました。
日本が負けることをわかっていながら特攻する気持ちに悲しくなってきました。
>祐。さま
敗戦の色が濃くなってくると、一撃必殺の手段ばかり考えてしまいがち。なんとなくギャンブルに似ています。最後はやけくそですよね。国策自体が自暴自棄で、天皇や軍上層部以外の者は皆捨てごまでした・・・
映画の出来としてはそれほどでもなかったのですが、メッセージは感じ取れました。回天について知る上では貴重な映画だったと思います。
>たいむ様
人間魚雷。ほんとに今まで何も知りませんでした。
太平洋戦争において、知らないことはまだまだ沢山あると思います。秘密を守り通した生き残った軍人さんもだんだん少なくなってきていますが、もっと教えていただきたいと思っています。
愛国心も戦争が始まった頃まではあったと思いますが、末期になると皆自暴自棄だったのでしょうね・・・悲しいことです。
もったいない感じがしました。
戦争のことを否定しないのも最近の傾向かもしれません。
英語は禁止されてたと思うのにキャッチボールとか普通に喋っていたのも印象的でした。あれは野球に対する思いを表す演出なのかな。
日記の朗読はたぶん実際にそういう遺品が数々あるのでそれを表現してるのかなって思いました。
海老さまはやっぱり老けすぎだったでしょうか。
もっと若手の俳優のほうがよかったかもしれませんね。
>かのん様
ラベルの「ボレロ」は知っているのに、実は俺もラベルがフランス人だとわかりませんでした。平気で店内でかけてるんだからドイツ人なんだろうと・・・(汗)
敵国の英語をそのまま使っていたのは、わずかながらの反抗精神だったのか、それとも観客にわかりやすくするためだったのか・・・わかりません。
やっぱり俺は回天に関する知識が不足しています・・・
>サマンサ様
回天の操作手順は複雑すぎですよね。こんな大変なことを覚えてまでして特攻しなければならないなんて、俺には無理です。
特攻機関係の映画は何本か観ていると記憶していますが、練習中の事故や、実戦で途中で帰ってくる映像とか、いい映画がいっぱいありますよね。
日曜日のドラマを見逃したため、今後の再放送の予定をしっかりチェックしておきたいと思います。
まさに回天を知るための作品でした。
人間魚雷として知ってはいても、知識としては不足でしたし、
予備生が多かったのも、操舵方法の難しさもあったのかもしれませんね。