とね日記

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発売情報:初級講座弦理論 基礎編、発展編:B.ツヴィーバッハ

2013年10月13日 23時19分04秒 | 物理学、数学
初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ
初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ

内容
MITの学部学生向けの講義から生まれた教育的な弦理論の教科書。

“基礎編”では相対論的な開弦および閉弦の基本的な量子化までを丁寧に解説する。まず特殊相対論と光錐座標系、高次元時空、余剰次元のコンパクト化などの背景概念を導入し、非相対論的な弦の力学を復習する。そして相対論的な点粒子や弦の古典論を論じ、それらに対して光錐量子化を施して、Lorentz不変性の要請から弦理論の臨界次元が決まることや、弦の量子状態として光子や重力子が現れることなどを見る。最終章では超対称性を導入した超弦理論の考え方を簡潔に紹介する。

“発展編”では、“基礎編”で詳述した量子弦の基礎概念を背景に置いて、弦理論の多様な発展的側面を概観する。D‐ブレインと開弦を利用したYang‐Mills場の構築や、弦のKalb‐Ramondチャージ、T双対性の概念について説明し、D‐ブレインの電磁場を考察する。更に、弦理論を利用した素粒子モデルやブラックホールの統計力学、AdS/CFT対応などの応用的な話題を紹介する。共変な量子化についても簡単に言及し、最後の部分では弦のダイヤグラムを用いて弦の相互作用やループ振幅を論じる。“発展編”は超弦理論の入門書となっている。

日本語版の翻訳者略歴
樺沢宇紀
1990年大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻前期課程修了。(株)日立製作所中央研究所研究員。1996年(株)日立製作所電子デバイス製造システム推進本部技師。1999年(株)日立製作所計測器グループ技師。2001年(株)日立ハイテクノロジーズ技師


2日連続の発売情報記事となり、レビュー記事をお待ちの読者の方には申し訳ないのだが本が出てしまったのだから仕方がない。

紹介するのは超弦理論の教科書の中ではいちばんやさしいと定評のある入門書である。英語版はKindle版も出ているのでそろそろダウンロード購入しようと思っていた矢先、日本語版が発売されたというニュースが飛び込んできた。

翻訳の元となったのは2009年1月に刊行された次の本で、これが第2版でKindle版も出ている。

A First Course in String Theory: Barton Zwiebach」(Kindle版




この大著を翻訳されたのは樺沢宇紀先生。これまでたくさんの物理学書の翻訳を手がけてきた。この記事の最後に示すように先生の訳書はこれまで僕も4冊読んでいる。

そして今回丸善プラネットから出版されたのが次の2冊。分量が多いので2分冊になってしまったわけだ。タイトルや目次には「弦理論」と書いてあるが、基礎編のいちばん最後に「超弦理論入門」というセクションがあるので、少しだけ「超弦理論の入門書」なのだろうけれども、全体的には「弦理論の入門書」である。(追記:訳者の樺沢先生からコメント欄を通じて『“全体的には「弦理論の入門書」”という評言は,これはこれで正しい.しかしながら「発展編」のほうには,超弦理論を前提とした話題も結構含まれているので(定在的なD-ブレインを扱う話題は必然的に超弦理論の範疇に入る)両編あわせて「超弦理論の話題も含めた弦理論の入門書」と評しても悪くはない内容になっています.』とご説明いただいた。僕の記事の訂正として追記しておく。)

学部3年生から読めるそうなのだが、解析力学、場の量子論、相対論(特殊と一般)を学んでいることは必要だ。超対称性を加味した弦理論(超弦理論)を構築したケンブリッジ大学の天才物理学者マイケル・グリーン教授が「相対性理論や量子理論の知識が浅い人でも理解できる、新鮮なアプローチを取り上げる」と推薦している。

この第2版ではAdS/CFT対応、超弦理論 、orbifold、宇宙ひも、ひも理論のランドスケープ などを新しく網羅したという。

初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ
初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ

 

基礎編の目次

緒論
特殊相対性理論・光錐座標系・余剰次元
様々な次元における電磁気学と重力
非相対論的な弦
相対論的な点粒子
相対論的な弦
弦のパラメーター付けと古典的な運動
世界面カレントと保存量
相対論的な光錐弦
各種の光錐場とボゾン
点粒子の光錐量子化
相対論的な量子開弦
相対論的な量子閉弦
超弦理論入門

発展編の目次

D‐ブレインとゲージ場
弦のチャージと電荷
閉弦のT双対性
開弦およびD‐ブレインのT双対性
電磁場を持つD‐ブレインとT双対性
Born‐Infeld理論とD‐ブレインの電磁場
弦理論と素粒子物理
弦の熱力学とブラックホール
強い相互作用とAdS/CFT対応
弦の共変な量子化
弦の基本的な相互作用とRiemann面
弦のダイヤグラムの構造とループ振幅


「やさしい」とはいっても、やはり超弦理論の本だ。書店で立ち読みしてからお買い求めになったほうがよいかもしれない。アマゾンの読者レビューは英語版のほうに日本語で3件投稿されているので参考にされるとよいと思う。

追記:訳者の樺沢先生からコメント欄を通じて次のようなご説明をいただいたので付記しておく。先生ありがとうございました。

内容的に,先日のNHK「神の数式」第2夜や,大栗博司氏の日本語の著作にシンクロする部分をたっぷり含んでいます.また「学部学生向け」とうたってあるだけあって,教育的な配慮の行き届いた,読みやすい本だと思います.ただ,字面を追うことは容易であっても,これだけの内容をきちんと理解するのは(学部生はおろか,大方の理系のマスターコースの学生にとっても)なかなか大変ではないかと思います.MITで理論物理をやろうという学生なんぞの頭は,並の出来ではないのでしょうね.私の訳業の指針は「私程度の頭の持ち主(並の理工系修士修了程度・理論物理専攻経験なし)でも,読めば理解できる(少なくとも理解に近づいた気分になる)訳書を提供する」ということなので,読者にとってテキストの議論がさらに飲み込みやすくなるように随所に訳註を入れてあります.(頭のよい人々の中には,余計な差し出口と揶揄する人もいるでしょうけれども.)



関連記事:

初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6da996449afaf50f8cf0f4f84881da0e

初級講座弦理論 発展編:B.ツヴィーバッハ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ff65ac32a5a9b397d8833a7ca155cb68

販売状況:日本語の超弦理論・M理論の教科書
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/61e4dd2232d54cf4a5f3da1aeb83975a

発売情報: 弦理論: ディビッド・マクマーホン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6a0d2d2bbb8b1d2803c29204381cc00f


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関連記事2: 樺沢宇紀先生の訳書で、これまで僕が読んでレビュー記事を書いた本

サクライ上級量子力学〈第1巻〉輻射と粒子:J.J.サクライ
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場の量子論〈第1巻〉量子電磁力学:F.マンドル、G.ショー
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/08726ab931904f76d9c26ff56d219e53

場の量子論〈第2巻〉素粒子の相互作用:F.マンドル、G.ショー
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/95d908cd752af642964cbff7ea7f0301
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2 コメント

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Re: 訳者よりひと言 (とね)
2013-10-14 08:56:17
樺沢先生

はじめまして。
直接コメントをいただき光栄に思います。

記事内容の不正確だった点、失礼いたしました。またわざわざ訂正文や(本書の難易度も含めて)内容のご説明をお送りいただき、ありがとうございました。コメント欄だと見逃す読者もいると思いますので、本文記事のほうに転記させていただきました。

私も本書を読めるくらいに自分の学習進度が早く到達できるよう、がんばって勉強いたします。でも、とりあえず先生が訳された日本語版を今週中に購入しておきます。

研究者を目指すくらいの人ならば英語で読めるのは必要事項でしょうけれども、研究者は目指していず英語を読むのが遅い人もかなりたくさんいると思います。日本語版を通じてこの本がより多くの人に読まれることを願っています。
返信する
訳者よりひと言 (樺沢宇紀)
2013-10-14 06:20:45
はじめまして.樺沢です.
拙訳書を紹介いただき,ありがとうございます.
紹介記事に対して,ひと言コメントをしておきます.
“全体的には「弦理論の入門書」”という評言は,これはこれで正しい.しかしながら「発展編」のほうには,超弦理論を前提とした話題も結構含まれているので(定在的なD-ブレインを扱う話題は必然的に超弦理論の範疇に入る),両編あわせて「超弦理論の話題も含めた弦理論の入門書」と評しても悪くはない内容になっています.そういう意味では,「発展編」の袖紹介文に「超弦」という術語を全く含めなかったのは,今回,私の落ち度だったかなと思っています.

内容的に,先日のNHK「神の数式」第2夜や,大栗博司氏の日本語の著作にシンクロする部分をたっぷり含んでいます.また「学部学生向け」とうたってあるだけあって,教育的な配慮の行き届いた,読みやすい本だと思います.ただ,字面を追うことは容易であっても,これだけの内容をきちんと理解するのは(学部生はおろか,大方の理系のマスターコースの学生にとっても)なかなか大変ではないかと思います.MITで理論物理をやろうという学生なんぞの頭は,並の出来ではないのでしょうね.私の訳業の指針は「私程度の頭の持ち主(並の理工系修士修了程度・理論物理専攻経験なし)でも,読めば理解できる(少なくとも理解に近づいた気分になる)訳書を提供する」ということなので,読者にとってテキストの議論がさらに飲み込みやすくなるように随所に訳註を入れてあります.(頭のよい人々の中には,余計な差し出口と揶揄する人もいるでしょうけれども.)
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