とね日記

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群の発見:原田耕一郎

2024年04月07日 16時09分25秒 | 物理学、数学
群の発見:原田耕一郎」(オンデマンド版

内容紹介:
数学のあらゆる分野で欠かせない「群」。しかし、なぜ、「群」の考えが必要なのか。それはいつ頃どのように誕生したのか。ラグランジュ、アーベル、ガロアの足跡をたどりながら、対称性の美や方程式の可解条件が「群論」にまで昇華していく過程をていねいに物語る。

2001年11月21日刊行、248ページ

著者について:
原田 耕一郎(はらだ こういちろう、1941年 - ): ウィキペディアの記事
有限群論を専門とする日本の数学者である。
1941年群馬県生まれ。1965年東京大学理学部数学科卒業。名古屋大学理学部助手、プリンストン高等研究所所員、イリノイ大学研究員、ケンブリッジ大学研究員などを経て、オハイオ州立大学教授。


理数系書籍のレビュー記事は本書で488冊目。

本書は超弦理論研究の第一人者である大栗博司先生が、お若い頃に影響を受けた数学書として「探究する精神 職業としての基礎科学:大栗博司」の中で紹介していた。名著であることはそれ以前から知っていたため、買い置きしたまま未読の状態が続いていた。

重い腰を上げて読み始めたのには、きっかけがあった。僕が大学4年のゼミでお世話になった東京理科大学理学部応用数学科(当時)の江川嘉美先生が定年退官され、その最終講義(案内ページ)を聴講する機会を得たことだ。僕が入学したばかりの頃、先生は理科大で研究者としてスタートをきったばかり助教授よりも格下の助手をされていた。その後、助教授、教授、名誉教授と昇進し、定年をお迎えになったのだ。月日の流れがはやいことにあらためておどろかされた。

江川先生のご専門は離散数学、グラフ理論である。それにもかかわらずゼミで僕たちが教えていただいたのは群論だった。なぜグラフ理論ではないのだろう?在学中も、そしてその後もそれは謎のままだった。ところが最終講義を受講してその謎を解くことができたのだ。

当時の先生は駆け出しのグラフ理論研究者である。理科大に職を得る前、オハイオ州立大学で教鞭をとられていた原田耕一郎先生の指導のもと学位を取得された。つまり江川先生の博士論文は群論だったのである。これが僕たちがゼミでグラフ理論ではなく群論を教えていただいた理由である。。また、僕たちは本書「群の発見」を書いた原田耕一郎先生の孫弟子だということがわかり、とても驚いたのだ。

群論の入門書として、本書は中級者向けである。ラグランジュ、アーベル、ガロアの足跡を辿りつつ、「対称なものは美しい」という観点や方程式の可解条件が「群論」にまで昇華していく過程が解説される。記述は数学史的な部分と教科書的な部分が交互に構成され、最終的に「ガロア理論」の入門書として完結する。

章立ては次のとおり。詳細の目次はこの記事の最後をご覧いただきたい。

第1章 シンメトリー
第2章 代数方程式の解法と群の誕生
第3章 ガロア理論
第4章 群論の基礎
第5章 ガロアの最後の手紙
第6章 アーベルとガロア

本書は、代数方程式の解法における対称性を扱ったガロア理論の入門書であり、歴史的背景や理論の発展を丁寧に解説している。著者は、群論の専門家であり、親切な問題や豊富な例を用いながら、理論をわかりやすく伝えています。

良い点:

- 歴史的背景を踏まえた解説により、読者は群、環、体という概念の発展やガロアの足跡を追いながら、理論を理解できる。
- 理論に沿った問題や例が豊富に提供されており、読者は実践的な理解を深めることができる。
- 進行する章ごとに難易度が増していくが、予備知識を補いながら読むことで、代数をイメージできるようになる。

難点:

- 初心者向けではなく、群論の予備知識が必要な場面がある。
- 章の進行が難しくなるため、予備知識の不足を感じる読者もいるかもしれない。

読者が注意すべき点:

- 初学者には少し難解かもしれないが、積極的に問題に取り組み、読み進めることで理解が深まる。
- 群論の予備知識がある程度必要なため、十分な準備をしてから取り組むことが望ましい。

本書は、ガロア理論と群論の要点を扱い、読者に自ら理解する機会を提供している。歴史的な視点から理論を解説することで、読者は代数方程式の解法における対称性や群論の重要性を深く理解することができるのだ。


原田先生は、本書の続編にあたる「モンスター 群のひろがり」もお書きになっている。本書の次に読んでみたい数学書だ。

群の発見:原田耕一郎」(オンデマンド版
モンスター 群のひろがり:原田耕一郎」(オンデマンド版)(正誤表)(紹介記事
 


関連記事:

モンスター 群のひろがり:原田耕一郎
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群論への30講:志賀浩二著
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4d07e42584724f4b72433be8f2738653

群論入門(新数学シリーズ 7):稲葉栄次
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f971ae2de623dd448868ad6ecca20051

群・環・体入門:新妻弘、木村哲三
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7f58114fe89f69d8e9a306fe819a6398

ガロア理論の頂を踏む: 石井俊全
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/be7d2e4dbc9a86966cad1356025d4525

数学ガール/ガロア理論:結城浩
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a5450818389e0220779e363617332a76

ガロア―天才数学者の生涯 (中公新書): 加藤文元
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cfdc31385bef53baf2bf1b81c98d77f3


 

 


群の発見:原田耕一郎」(オンデマンド版


はじめに
本書の読み方
記号/用語について

第1章 シンメトリー
- 正多角形のシンメトリー -- 巡回群、2面体群
- 集合のシンメトリー -- 対称群、交代群
- 正多面体のシンメトリー
- 空間のシンメトリー

第2章 代数方程式の解法と群の誕生
- 方程式の解
- 3次、4次代数方程式の解法
- 代数方程式の根の置換(対称群と根の関係)
- 5次方程式の解法の不可能性

第3章 ガロア理論
- 体のシンメトリー
- ガロア拡大
- ガロア対応

第4章 群論の基礎
- ラグランジュの定理、コーシーの定理
- シローの定理
- 準同型定理
- 対称群の共役類
- ガロア理論 -- 第2部 --

第5章 ガロアの最後の手紙
- 行列と変換群
- 射影変換群
- 有限体上の射影変換群
- 楕円曲線

第6章 アーベルとガロア
- アーベルの歩み
- ガロアの歩み

群の発見の歴史
あとがき
問一覧、研究課題一覧
索引

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