車の窓を全開にすると少し冷気を帯びた爽やかな風が車内に充満した。車の外気温計は１５度を表示していた。私は今、標高１０００ｍを越える峠道を川上村に向けて走っているのだ。
今シーズンも残り僅かとなったこの日、バンブーロッドでノンビリとした釣がしたくなり、千曲川上流部の川上村を目指した。バンブーロッドを持ち出すと雨に祟られた今シーズン、雨ロッドの汚名を晴らすのも目的の一つだった。
体育館前の尺イワナポイントでは、一人のＦＦＭが今シーズンを惜しむかのようにロッドを振っていた。橋の上より暫くの間見学していたが、ライズも無くロッドが曲がることは一度としてなかった。それにしても本流筋でこの水量とは、少なすぎる。目的の渓は・・・いやな予感がふと過ぎった。
悪い予感が的中してしまった。一滴の水も流れていないのだ。峠を越えた秩父の渓も減水状態とは聞いていたが、ここまで水が無いとは・・・この渓に棲む渓魚達は果たして無事なのだろうか。。。
別の支流に移動したがこの渓も減水の影響か全く反応が無かった。バンブーロッドにとって初めての晴間にロッドは気持ち良さそうなのだが・・・。今度は「ボーズロッド」の汚名を着せられてしまうのだろうか。。。
今日は、もう一つの目的のため１４時には帰路に着きたかった。陽は高く１２時を回っていたが、学校下流部より本流を釣り上がった。水温は１６度と最悪な条件の中、少し水深のある流れから６寸程のヤマメがロッドを曲げてくれた。「ボ」を覚悟していただけにとても嬉しい１尾だった。
１尾の渓魚に出会えたことで今日は何故か満足だった。１４時もう一つの目的のために帰路に着いた。
道端には秋桜が咲き乱れていた。
帰路は三国峠越えを選択した。これがもう一つの目的だった！
前回走ったのは何時頃だったろうか？２代前の車「パジェロ」の時だから、かれこれ１５年程前だろうか。オフロードバイクの時から数えると何度この道を走っただろう。昔ほど林道の凹凸が少なくなりとても走りやすかった。
峠を３０分程下った場所に現れる最初の建物が王冠キャンプ場。誰か居るかと覘くと見覚えのある白髪交じりの角刈り頭。Ｍ先輩だった。キャンプ場は定休日のはずだがオーナー夫婦の顔も見えた。
一寸休憩のつもりが他愛も無い話で長居をしてしまった。大自然に囲まれたこの場所は心を和ませてくれる。また、三国峠を越えよう。
今シーズンも後半月あまりで禁漁となる。最後の渓は何処にしようかな・・・。
