京丹後のサツマイモ農家「竹田農園」が、「さつまいも・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。これがどれくらいすごいことなのか、サツマイモに詳しくない人向けに説明すると、たぶん「全日本さつまいもチャンピオン決定戦」みたいなものである。もう少し詳しく言うと、日本中のサツマイモ農家が自慢の芋を持ち寄り、蒸し芋にされた状態で味だけをガチ審査され、その中で「最もおいしい」と認められたものが選ばれるのだ。そこには「ブランドの力」とか「売り方の上手さ」などの余計な要素は一切入らない。ただ、純粋に芋としての実力勝負。その厳正なる審査をくぐり抜け、竹田農園の「ふくむらさき」が「その他部門」で頂点に立ったというわけである。
竹田農園といえば、昨年も「紅はるか部門」で受賞しており、これで2年連続の快挙。つまり、「違う品種でもうまい芋を作れる」ということであり、偶然の一発屋ではないことを証明してしまった。これはサツマイモ界において、「この農家、ガチでうまい芋作ってるぞ」と認定されたも同然だ。
ちなみに授賞式は埼玉県のさいたまスーパーアリーナの「けやきひろば」で行われた。なんとも絶妙な会場である。スーパーアリーナと言われると格闘技か音楽ライブのイメージがあるが、けやきひろばの雰囲気は「ちょっといい感じの屋外イベントスペース」。サツマイモの授賞式としては、ちょうどいい塩梅なのかもしれない。
さて、ここまで読むと「そんなにすごい芋なら食べてみたい」と思うのが人情だが、問題は「ふくむらさき」という品種自体があまりメジャーではない点。紅はるかのようにスーパーに大量に並ぶタイプではないので、手に入れるのは少し難しいかもしれない。しかし、そんなレア感こそが、今回の受賞の価値をさらに高めているとも言える。「食べたら忘れられない、でもなかなか手に入らない」という食材は、だいたい後世に語り継がれるのだ。
つまり何が言いたいかというと、「さつまいも・オブ・ザ・イヤー」に輝いた竹田農園のふくむらさきは、おそらくめちゃくちゃ美味しい。そして、きっと入手困難。サツマイモマニアなら、手に入れるべく全力を尽くすべきだろうし、そうでない人も「なんかすごい芋があるらしいよ」と誰かに話してみるのもいいだろう。そうしているうちに、気づけばあなたも立派なサツマイモ愛好家の仲間入りを果たしているかもしれない。