犬も花粉症になる──これを初めて聞いたとき、何かの冗談かと思った人もいるかもしれない。が、事実は小説よりも奇なり。スギやヒノキの花粉が舞い踊る春、犬たちもまた、くしゃみや目のかゆみに苦しんでいるのだ。いや、それどころか、彼らの場合、主戦場は皮膚。かゆみとの闘いが始まるのである。
花粉の季節になると、犬もくしゃみをし、目をこすり、そして体をカリカリ掻く。人間の「花粉症あるある」がそのまま犬にも適用されるわけだ。違いがあるとすれば、犬は「目がかゆい」とか「鼻水が止まらない」と言葉で訴えられないことくらいだろう。だからこそ、飼い主の観察力が試される。「最近やたらと体を掻いているな」と思ったら、ただの癖ではなく、スギ花粉の陰謀かもしれないのだ。
では、どうするべきか。まず獣医に相談するのが鉄則だ。アレルギー検査で原因を特定し、必要ならヒスタミンを抑える薬やステロイド治療が検討される。ただし、これらの薬を使うかどうかは症状の重さ次第。軽症なら、スキンケアが主な対応策となる。シャンプーを使い、保湿を徹底し、花粉との接触を極力減らす。散歩から帰ったら、ウエットタオルでしっかり花粉を拭き取る。そう、犬の花粉症対策とは、もはや「犬の美容ケア」なのである。
だが、ここでふと思う。人間は花粉症がつらいと言いながら、マスクをし、目薬をさし、薬を飲み、どうにか春をやり過ごしている。一方、犬はどうか？ 彼らはただ、かゆみと戦いながら耐えるしかない。なんという忍耐力。いや、もしかしたら彼らは「春の風物詩だな」と割り切っているのかもしれない。そう考えると、犬こそが真の悟りの境地に達しているのではないか──と、花粉症に苦しむ我々人間は、鼻をすすりながら思うのであった。