「失はれる物語 (乙一)」以前発表された作品を含めて再出版された作品を含む6つの短編集。
私は、乙一さんの本、最初に読んだのが「暗いところで待ち合わせ」で、面白かったから、他も読んでみようと思って、次に手に取ったのが、この「失はれる物語」でした。
たまたま予備知識もなく、図書館で借りただけだったのですが、偶然にも、この短編集の中にある「Calling You 」と「しあわせは子猫のかたち」の2作が、「暗いところで待ち合わせ」を含めて、3部作とされている作品だったんですね。
たしかに、「しあわせは子猫のかたち」を読みながら、あれ~っ、何か「暗いところで待ち合わせ」と少し似た小説だな・・・?と思っていたら、あとがきに、上記の様に書かれていて、納得!
それと、最後の「マリアの指」では、電車のすぐ側に家がある・・という設定がまた出て来て、そこも「暗いところで・・」に共通する部分だな・・って思いました。
6つの短編集のタイトル・内容、一言感想
*Calling You
学校で常に孤独な主人公の女の子、頭の中に妄想した携帯電話。何故かその携帯電話で、やっぱりある孤独な男の子と友達になり・・・(面白かったけれど、ラストが・・・)
*失はれる物語
事故によってほとんどの感覚を失って、寝たきりになっている夫と、ピアノを弾くことが好きな妻の話。 (これは、最近読んだ読んだ本の中で、一番怖かった・・・。あ”~~~!本当に一番怖い状態かもしれない(T_T)恐すぎるよ・・・)
*傷
酒飲みで暴力をふるう父に背中につけられたアイロンのアザを持つ少年。ある時彼の通う特殊学級に転入生がやって来た。彼は、傷を自分の身体へ移動させる不思議な力を持った少年だった。(なんだか、辛すぎた・・)
*手を握る泥棒の物語
泥棒と泥棒に入られた部屋にいた女性との壁越しの手だけでの・・・(普通 落ちが想像ついてしまった(^^;))
*しあわせは小猫のかたち
孤独な主人公は、あるお家に引っ越して来る。そこに以前住んでいた女性は、写真を撮るのが好きだったらしい。その女性は、玄関先で殺されたらしい。そこの家で暮らすにつれて、不思議な存在が同居していることに気がつく・・
*マリアの指
美しく変わった存在のマリア、彼女が電車で自殺を計ったらしい。彼女の体の指の部分が・・・(意外なラストだった)
まだ乙一さんの本は、2冊しか読んでいないのですが、内向的で孤独で、人づきあいが酷く苦手な主人公を書くのが、凄く上手い人だな・・・と思いました。下の「暗いところで待ち合わせ」の処でも書いちゃってますが、実体験をこういう風に後々小説として昇華出来るのはすごいなって思います(体験していた渦中の頃は、凄く辛かっただろうけれど)
(追加)
この記事書いたのは2006年11月だったのですが、つい最近(2008年1月)「失はれる物語」の文庫本版に、単行本には入ってない短編が2つ追加になっていたことに気がつきました。「ボクの賢いパンツ君」「ウソカノ」っていうんですが、それが個人的に結構好きでね~。(2つ読んでも5分か10分で読めちゃう短さ)
思わず、涙が落ちそうになっちゃいました。
特に「ウソカノ」は、なんかグッと来てしまいました。
乙一さんの作風、ちょっとだけ明るいというか、希望が持てる様なラストのある方へと変わって来たのかな・・?(個人的に好きです。)
それとも、、この「失はれた物語」が悲惨な短編ばかりなので、文庫化する際、意図的に明るい感じの2つを混ぜたのかな?^^ いずれにしても、その2作品は凄く好きでした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「暗いところで待ち合わせ」乙一 すっごく面白かったです。
(内容・あらすじ)
視力をなくし、独り静かに、殆ど引きこもり状態で、暮らしているミチル。
かたや、学生時代から、そして現在の職場でも、常に上手く対人関係を築けず、孤立しているアキヒロ。
駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、盲目のミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった
この小説で一番面白かった部分は、盲人のミチルの家の中での2人の心理描写でした。息をひそめて、自分の存在を悟られないように、緊張しているアキヒロと、途中で気配に気が付くミチル・・・その後の2人が、少しつづ、気持ちが近づいて行く様が、素晴らしく面白かった!!!それと、ミチルと、アキヒロは、結構似た者同士というか・・・孤独で淋しい人同士なんですよね・・・。特にアキヒロの中学生時代~社会に出ても、孤立していく状況や、その心理状況が、凄くリアルで、上手く表現していることにビックリ。
あとがき等を読んだら、実際この作者の乙一さんも、学生時代に、そういう時期が長らくあったとか・・・。トンネル時代があったにせよ、それを今、こうやって文章にして、人を感動させられるっていうのは、凄いことだし、その経験が小説を書くのに役立った?訳で。人生悪いことばかりじゃ無いよな!って思いました。
(小説の中の部分、一部抜粋)
これまで自分は、人との接触を避けるようにして生きてきた。会社の同僚とも、クラスメイトたちとも心を通わせなかった。心のどこかでは、回りで群れている人達を軽蔑していた。そのくせに、孤立して攻撃されると、深く傷つくのだった。中略回りで群れている者達に対して抱いた軽蔑は、仲間に加わるのを諦めるため、そして、憧れを抱かないための選択だったように思う。だからといって話を避けていても、哀しいことしかないというのに、そうやって身を守るしかできずにいたのだ。会社でも、教室でも、どこにいても、自分のいていい場所は、ここではないという気持ちがしていた。居心地が悪く、緊張し、息のつまる思いを常に味わっていた。
こういう表現が何度も出て来るのだけれど、ほんとにリアル。
ただ、最後の方は、★以下ネタバレ★文字反転して下さい
ちょっと都合良い・・?というか、アキヒロが、ミチルが「おかあさん!」と電車の方に向かって叫んでいた処を見ていたとか、そのお母さんが隣に偶然乗り合わせていたとか、はたまた、ミチルの友達?のハルミが、犯人だったとか偶然が多すぎて、ちょっと・・・。そこだけ残念だったな~
でも、とても引き込まれて読んだし、こういう暗~い小説は好きです。今度、乙一さんの他の小説も読んでみようかな?と思いました☆★以上
「暗いところで待ち合わせ」映画化について・・・・・・・・・・・・・・
今度11月25日から、この小説「暗いところで待ち合わせ」が、映画化されるそうなんです。
ミチル役は、田中麗奈。(頭の中でイメージしたら、違うな~って思ったのだけれど、映画の中の写真を見たら、雰囲気出てた)主役のアキヒロを演じるのは、チェン・ボーリン。
映画では、小さな頃は中国で育ち、その後日本に渡った日中ハーフというキャラクターに変更したそうです。彼も、明るいイメージがあったので、どうかな?と思ったのだけれど、写真見ると、すっごく良さそう!!!というか、こういう暗い役を見てみたいっ!!!
続きはこちら ⇒「暗いところで待ち合わせ」映画キャスト、情報など
>内向的で孤独で、人づきあいが酷く苦手な主人公を書くのが、凄く上手い人だな
私もそう思います!グロテスクな話でも、そういうところがしっかりしているから、痛みとか感じて読んでしまうのです。
ところで乙一さんは、あとがきも好きです。
「暗いところで待ち合わせ」未読なのですが、3部作だったのですね!読まなきゃ!
グロテスクな、黒乙は、まだ読んだことがないので、今度是非読んでみますね!
今まで(と言っても2冊だけですが^_^;)白乙なので、ドキドキですが・・・。
そうそう!あとがき、私も好きです。お人柄を感じました、何か身近な感じ?とでも言いましょうか・・。
ほんと、読んだ本の内容って、暫く経つと、すごく忘れてしまったりしますよね。
だから、ブログで少し、読書記録を残す様にしています(^^;)
読みたいと思ってるんですけどね。
この『失はれ…』は、白乙ですよね。
ぜひ、黒乙もお薦めします。
『ZOO』あたりが、いいかと思いますww
デビュー作の『夏と花火と私の死体』も怖いです。
高校生が書いたとは思えない作品です。
チュウも、乙一さんは、去年知った作家さんで…
今、はまっています。
ちょっとずつ、読破していく予定です(o^-^o)
一杯コメントとか、TBとか、ありがとうございます
すっごく嬉しかったです!
ところで、今、チュウさんちに行って、1つコメントとTBは貼れたものの、その次に、別の記事に、次々コメント投稿しようとしたのだけれど、何度トライしても、エラーになっちゃうんです。
yahooが混み合っているのかな?
後程or明日の午前中に、また改めて、ゆっくりお伺いしますね~
で、『失はれた』のトラバできなくて…
あきらめていたんだけど…
今、できましたv(^∀^*)
1回に1個ずつ?!ww
私の方も、ちゃんと出来ました!
かえって、何度もすいませんでした^^
チュウさん、また、これからも、宜しくお願いしまーす
しかも真犯人が判明して
無実が証明されるところなどは、
たしかにご都合主義といえるかもですが
私としてはやっぱりそれでよかったです。
ハッピーエンドでほんとによかったって思って。
息がつまる感じ、とても共感してしまいました。
そうですね、推理小説としては、それほど絶賛って感じじゃないのですが、(そんなに推理小説に詳しいって訳じゃない私が言える立場では全然無いのですが!)
それ以外の部分が大好きで、素晴らしい作品だと思います
この小説が私にとっては、初乙一さんだったのですが、これを最初に読んで良かったな、って今では思っています。