ポコアポコヤ

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「九年前の祈り」ネタバレ感想

2015-06-23 | 小説・漫画他
図書館から、この本が届いたというお知らせが来た時、すっかりリクエストしたことを忘れていて、はて・・どんな本だったっけ?と、検索してみて、思い出したというありさま・・・。最近の自分のボケぶりは、かなり深刻だ・・。多分、芥川賞を受賞した時に、この本の内容に興味を持って、リクエストしたんでしょうね。

読み始めてすぐ、大分の方言がなかなか手ごわくて、読み難くかったです。
感想としては、メインのさなえと、その息子のケビンよりも、私が印象に残ったのは、障害があるらしい息子を持つ、みっちゃん姉でして。このみっちゃん姉に幸あれ!!と願わずにはいられない気持ちになりました。
カナダに行く飛行機の中で、泣き止まない子供に対しての対応や、深夜ホテルの窓から見た、ゴミ回収の様子に感心しながら、さなえと会話するんです。息子と夫が、かつてゴミ回収の仕事をしていて、今はもうその仕事もできなくなって、息子の将来を不安に思う姿とかね、教会で長いこと祈っていた姿とか、なんかもう胸の奥がツンとしてしまいましたよ。

で、タイトル作を読んだ後、暫く放置していまして・・・。
その後、後に載っている3編を読んだら、なんと全部繋がってるお話だったんですね。
タイトル作の1つだけ読んだだけだったら、普通・・な印象だったのですが、他の3つも全部読んだら、結構ズシンと来て。
田舎の小さな集落で生きるということの、しがらみや、物悲しさや、そして変な迷信やら(ガルシア・マルケス的)・・・。
そして障害を持つ子供を持つ母という目線がプラスされていていました。
この小説を書いたのが男性と知って、驚きました。

最近、脳腫瘍でお亡くなりになられた、優しいお兄さんがいらっしゃったそうで、
そのお兄さんを思い浮かべて書かれたとのこと。
肉体労働で稼いだお金で学生時代の小野さんを支えてくれて、一生独身だったそうです。
こちら

今日は、完全ネタバレで書いています。まあネタバレとか、そういう感じの小説ではないのですが・・。
みっちゃんの障害があるらしい息子(脳腫瘍で入院中)=タイコー=伽ですよね。
もしかしたら、このタイコーが軸になっているのかな。

「ウミガメの夜」
大学生3人、今野一平太、下川徹、佐藤雄真が、大分にふらりと来て、ウミガメの産卵を見ている。
一平太は幼いころ祖父に連れられて、ここに来た記憶があり、父である日高誠の実家を探すのだが、見つからない。
一平太の母は、現在脳腫瘍で入院中である。

「お見舞い」
トシは子供の頃、3歳年上の日高誠(マコ兄)を慕っていた。東京の大学に行くような憧れの存在マコ兄だったが、現在は自暴自棄な生活で酒におぼれ、どうしょうもないヤツという存在になり果てていた。トシは、そんなマコ兄の面倒をみていた。マコ兄のお酒の付き合いに車を出すのはトシの役目で、そのついで?に外国人女性たちと逢瀬を交わしたりしている。
トシと伽(みっちゃんの息子)は、かつて同級生だった。何かと疎んじられバカにされる存在だった伽。
トシも、校庭を永遠と走らせらせる命令などしてしまった事もあったのに、その後も伽は恨むわけでもなく、笑顔で優しく接してくるのだった。(ここらへんの描写が辛いわ・・)今、伽の入院している病院にお見舞いに行こうとしている。
その途中、旅行に来ていた大学生(母の病気が心配だから、帰ろうとしている一平太)を、途中まで車で送って行くことになる。
すぐ側に、一平太が探していた父(マコ兄)がいるのになー!!お互い気がつかないまま、すれ違ってしまう。

「悪の花」
千代子は75歳を過ぎてから膝が悪くなって、買物は民生委員の渡辺ミツ(みっちゃん)と夫の浩司が買物してくれたり、墓参りにはミツの一人息子タイコーが行ってくれていた。また、墓に生えて来る花をむしってくれたり、とても良くしてもらっていたが、タイコーが入院してから、渡辺夫婦は病院のそばにつきっきりで、家に戻って来ないのだった。千代子はピン札の1万円の入った封筒を持って、折り畳み椅子に座って、みっちゃん夫婦が家に戻るのを待ち続けていた。
千代子は、子供が出来ない事が理由で離縁されたお家に嫁に行ったが、自らも子供ができなかった。離縁された元妻が自殺してしまったこともあったりして、村人から有りもしない淫乱な噂をたてられていた過去がある。

九年前の祈り 小野正嗣 (2014/12/16)
三十五になるさなえは、幼い息子の希敏をつれてこの海辺の小さな集落に戻ってきた。希敏の父、カナダ人のフレデリックは希敏が一歳になる頃、美しい顔立ちだけを息子に残し、母子の前から姿を消してしまったのだ。何かのスイッチが入ると引きちぎられたミミズのようにのたうちまわり大騒ぎする息子を持て余しながら、さなえが懐かしく思い出したのは、九年前の「みっちゃん姉」の言葉だった──。

・・・・・・・・・・・
その後、「獅子渡り鼻」も読みました。
2015-07-06

こちらも、故郷の海岸沿いの田舎を舞台に、少年を通して描かれたお話でした。

獅子渡り鼻 2013/1/19 小野正嗣

内容紹介
入江と山に囲まれた土地を舞台に、その母の故郷を頼ってやってきた10歳の少年「尊(たける)」を主人公に、ある夏の彼の生活を描く。都会で心身不自由な兄と、男にだらしなく家に寄りつかない母と暮らしていた尊は、母の親戚に連れられ、母が大嫌いだった田舎へとやってきた。豊かな自然、素朴な人々、現実を超えた霊的な存在に触れ、尊は再生していく。児童文学、神話、近代小説、叙事詩……あらゆる形式を超えた奇蹟の物語です。
(群像2012年11月号掲載)
内容(「BOOK」データベースより)
か弱き者の上に、光は降りそそぐ。入り江と山に囲まれた土地で、10歳の少年が見出した「希望」の物語。芥川賞候補作。

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