「耳に棲むもの」小川洋子 山村浩二アニメ

耳に棲むもの

山村浩二さんのアニメーション動画と小川さん小説のコラボ作品

今回は普段よりも小川さんの気持ち悪い表現が結構多めな小説になっていました。
面白かったけれど、文章だから読めたけど映像だったら見るのを躊躇しそうだ。
山村アニメ版では、そういうシーンがあるのだろうか？
山村さんのアニメは幻想的だけど、少し可笑しみがあるんですよね。
パクシとかバベルの塔みたいのとか、子供が小さい頃NHKの5分番組でやっていて知ったアーティストさん。

カイロウドウケツの中に閉じ込められて一生を終えるドウケツエビのつがい。
どんな形なのか？検索してみましたが不気味だった・・・。透明で小さくて美しいと言われているけれど、こういうのが耳の奥に棲みついているとかゾッとしてしまう。
あつまれ動物の森に出て来るらしい。

５つの章、骨壺のカルテット　耳たぶに触れる　今日は小鳥の日　踊りましょうよ　選鉱場とラッパがおさめられていて、最後の章以外は補聴器販売員さんが全て登場します。

★以下、ネタバレあらすじと感想で全部書いているので注意です！★


「骨壺のカルテット」
補聴器販売員の娘さんが最近亡くなったばかりの父を、子供の頃から行きつけだった耳鼻咽喉科の老医者と回想する。父はいつも古びたクッキー缶を持ち歩いていた。
最近まで父と交流があった医師は父の骨壺を開けて中の骨等を器具で探り、骨壺から4つの骨のかけらを取り出す。耳の中に棲んでいた(カルテット)

「耳たぶに触れる」
秋祭りで開催された早泣き競争で優勝した補聴器販売員。その涙の瞬間を写真で捉えた青年がいた。補聴器販売員は、スコップで砂を掘り、ダンゴムシの亡骸を缶におさめる。
　音楽家がその涙の形を音符にして音楽を奏でる（涙の楽譜って素敵だな）二小節目は飛び立つ鳥たち、三小節目は木漏れ日


「今日は小鳥の日」
小鳥ブローチの会
小鳥の亡骸を、正確に1/3スケールにして、小鳥のブローチを作る者たちがいた。補聴器販売員は、ある出来事で瓦礫の下に埋もれてしまった小鳥のブローチを土から掘り出し、缶におさめた。この小鳥ブローチの会初代会長さんが喉に小鳥を詰め込み自殺する。その描写が異様にグロテスクでホラーじみてびっくり。

「踊りましょうよ」
補聴器販売員は、サービス付き高齢者住宅へ出向く。そこで出会う老人たちの補聴器をメンテナンスするために。亡くなった老人の大事なもの一つだけを例の缶にこっそりと収める。
彼は、大学生の介護助手の釣り合いの取れた耳の女性とベンチで会話する様になっていて、彼女に彼の耳の奥に棲んでいる者たちの音を聞かせようと耳と耳を密着する（すごいな、これ）

「選鉱場とラッパ」
鉱石工場の側に母と2人で住む孤独な少年は、輪投げの景品のラッパが欲しかった。
景品係のおばあさんが倒れたごたごたに紛れて少年は景品のラッパを勝手に持ち出してしまう。工場の裏口で社員食堂で残った残飯等を痩せた野良犬にあげていたのを目撃し、その犬を追って行きお腹を蹴り上げる。後日、その犬が死んでいて腐敗しているのを見つけ、土を掘って埋める（ここらへんも結構衝撃的な描写だった）
この少年は、補聴器販売員の少年時代なのか？　それとも特に無関係なのかな。

山村アニメ動画をちょっと見たところ、大人になり補聴器で営業している最中にご老人から、土砂災害で一人暮らしの老いた女性が亡くなった事を聞き、訪ねた古く朽ちたアパートの部屋にしまわれていたラッパを見つけ、中に入っていた紙からその音楽を子供の頃穴を掘っていた時に聞いた曲だと解るのだけれど・・・

オタワ映画祭VR部門最優秀賞・アヌシー映画祭公式出品
世界を席巻したVRアニメから生まれた「もう一つの物語」
https://neuu.jp/posts_c/MyInnerEarQuartet

耳に棲むもの 2024/10/10　小川洋子


小川洋子
「耳に棲むもの」
「からだの美」
「掌に眠る舞台」
遠慮深いうたた寝
「そこに工場があるかぎり」「科学の扉をノックする」
「アンネ・フランクの記憶」
「密やかな結晶」
「小箱」
「約束された移動」
「あとは切手を、一枚貼るだけ」
「口笛の上手な白雪姫」
「シュガータイム」
「不時着する流星たち」
「琥珀のまたたき」
「注文の多い注文書」
「いつも彼らはどこかに」
「ことり」「とにかく散歩いたしましょう」 感想
「最果てアーケード」「余白の愛」小川洋子
刺繍をする少女
人質の朗読会
妄想気分
原稿零枚日記」
「ホテル・アイリス」「まぶた」「やさしい訴え」
「カラーひよことコーヒー豆」
小川洋子の偏愛短篇箱
猫を抱いて象と泳ぐ
「偶然の祝福」「博士の本棚」感想
妊娠カレンダー、貴婦人Aの蘇生、寡黙な死骸 みだらな弔い
薬指の標本　５つ☆　＋ブラフマンの埋葬
「おとぎ話の忘れ物」と、「凍りついた香り」、「海」
「ミーナの行進」「完璧な病室・冷めない紅茶」感想