古事記 上つ巻 現代語訳 二十四
古事記 上つ巻
天の石屋・神々の議り
書き下し文
是を以ち八百万の神、天安の河原に神集ひ集ひて、高御産巣日神の子、思金神に思はしめて、常世の長鳴鳥を集め鳴かしめて、天安河の河上の天の堅石を取り、天の金山の鉄を取りて、鍛人天津麻羅を求ぎて、伊斯許理度売命に科せ、鏡を作らしめ、玉祖命に科せて、八尺の勾たまの五百津の御須麻流の珠を作らしめて、天児屋命、布刀玉命を召びて、天の香山の真男鹿の肩を内抜きに抜きて、天の香山の天の波波迦を取りて、占合ひ麻迦那波しめて、天の香山の五百津真賢木を根許士爾許士て、上枝に八尺の勾たまの五百津の御須麻流の玉を取り著け、中枝に八尺鏡を取り繋け、下枝に白丹寸手、青丹寸手を取り垂でて、此の種種の物は、布刀玉命、布刀御幣と取り持ちて、天児屋命、布刀詔戸言祷き白して、天手力男神、戸の掖に隠り立ちて、天宇受売命、天の香山の天の日影を手次に繋けて、天の真拆をかづらと為て、天の香山の小竹葉を手草に結ひて、天の石屋戸にう気伏せて蹈み登抒呂許志、神懸り為て、胸乳を掛き出で、裳緒を番登に忍し垂れき。尓して高天の原動みて、八百万の神共に咲ふ。
現代語訳
ここをもちて、八百万の神は、天安の河原に神集(つど)い集いて、
高御産巣日神(たかみむすひのかみ)の子、思金神(おもいかねのかみ)に思案をさせて、
常世長鳴鳥(とこよのながなきどり)を集めて鳴かせ、
天安河の川上の天の堅石(かたいし)を取り、天の金山の鉄を取って、
鍛人(かぬち)の天津麻羅 ( あまつまら )を求めて、
伊斯許理度売命 ( いしこりどめのみこと ) に科して、鏡を作らせて、
玉祖命(たまのおやのみこと)に科して、八尺の勾玉の五百津之美須麻流之珠(いおつのみすまるのたま)を作らせて、
天児屋命(あめのこやねのみこと)、布刀玉命(ふとだまのみこと)を召んで、
天の香山の真男鹿(まおしか)の肩を内抜(うつぬ)きに抜いて、天の香山の天の波波迦(ははか)を取って、占合ひ麻迦那波(まかなわ)しめて、
天の香山の五百津真賢木(いほつまさかき)を根許士爾許士(ねこじにこじ)て、
上枝(ほつえ)に八尺の勾玉の五百津之美須麻流之珠を取りつけ、
中枝(なかつえ)に八尺鏡を取りつけ、
下枝(しづえ)に白丹寸手(しらにぎて)、青丹寸手(あおにぎて)を取り垂らして、
この種種の物を、布刀玉命(ふとたまのみこと)は、布刀御幣(ふとごへい)と取り持ちて、
天児屋命は、布刀詔戸言(ふとのりとごと)祷(ほ)きもうして、
天之手力男神(あめのたぢからおのかみ)は、戸のわきに隠れ立って、
天宇受売命(あめのうずめのみこと)は、天の香山の天の日影(ひかげ)をたすきにかけて、天の真拆(まさき)を縵(かづら)として、天の香山の小竹葉(ささば)を手草(たくさ)に結いて、天の石屋戸にうけ伏せて、蹈み登抒呂許志(とどろこし)て、神懸(かむがか)りして、胸乳(むなち)を掛き出で、裳緒(もひも)を番登(ほと)におし垂らして。
しかして、高天の原動(とよ)みて、八百万の神々は共にわらいました。
・堅石(かたいし)
質の堅い石
鍛人(かぬち)
刀工(とうこう)は、刀剣、特に日本刀を作る職人
・真男鹿(まおしか)
オスの鹿
・波波迦(ははか)
うわみずざくらの古名
・根許士爾許士(ねこじにこじ)
根掘(ねこじ)は樹木などの根のついたまま掘り取ること
・白丹寸手(しらにぎて)
楮の樹皮の繊維で織った布のぬさ
・青丹寸手(あおにぎて)
麻のぬさ
・和幣/幣帛/幣(にきて)
榊 (さかき) の枝に掛けて、神前にささげる麻や楮 (こうぞ) で織った布
・手草(たくさ)
歌ったり舞ったりする時などに、手に持つもの
・登抒呂許志(とどろこし)
轟かし
明日に続きます。
読んでいただき
ありがとうございました。
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