『這い上がり』
―ある「顔」の喪失と再生の半生記―
古市佳央著(ワニブックス 本体1429円+税 A5判190頁)
人は変われる―そう確信させてくれる久しぶりの好著に出会う。もし事にあたって「変われない」「できない」と感じているとしたら、著者が紡ぐこの物語に触れた時、その思いは一変するだろう。はかりしれない勇気を与えてくれたことに感謝したい。
8月20日、楽祥さん主宰の「Thanks&Harmony!の会」に講演に呼ばれ、東京・台東区民会館に赴く。会開催の前、開館のロビーで、颯爽と歩く、ブルーのシャツを着た長身で金髪のサングラスの男性とすれ違う。「ただもんじゃねえな」と直感でわかる。オーラと言ってもいいし、雰囲気といってもいい。過酷な、そして凄惨な道のりを歩いてきた人が発する特有の匂いだ。
そして講演。彼は会場にいた。壁に背を貼り付けるように静かに座っていた。休憩時間、静かな声で話しかけてきたのは彼だった。
「私も単車乗っていたんですよ。事故で燃えて、こうなったんですけど…」
彼の顔は重度熱傷を負い、そしてなんとか再生の試みを繰り返したきた風貌だとわかる。私は嬉しかった。普段、誰にも話さない過去を、用意してきた話をとりやめてぶちまけた後の第一声が彼だった。ありがとう。
少しく話した後、彼はこう言った。
「こんな目にあわなければ、私はわからなかったんですよ」
この言葉。私は今まで生きた中の最もつらい出来事を思い出し、そう言えるだろうか。「これでちょうどよかったんです」と言いたいと思いながら、言えない自分を発見する。頭が下がる。高校一年でバイク事故。炎上。体表面の41%を重度熱傷。過酷な入院生活と再生手術の連続。信じていた自分の「姿」を喪失。その事実に向き合った、そして向き合わざるえなかった彼の煩悶の物語を『這い上がり』で謹んで分けてもらった。どうか、著者のサイト古市氏のサイトを見て欲しい。そして、その後の彼の取り組みを分かち合ってほしい。
『這い上がり』で綴られる古市氏の言葉。まずもって「率直」の力に心を打たれた。どれだけ、私たちはこの「率直」を失い、再生の力に歯止めをかけているだろうか。著書の前書きで古市氏は
なぜ、死んでしまわなかったのか。どうして生き続けているのか。なぜ俺だけがこんなつらい仕打ちを受けるのか。俺よりひどいことをしてきた人間を野放しにして、なぜ、なぜ、なぜ…。
でも、あるとき僕は思った。生き残ったことに、何か意味があるのではないかと。もしかしたら、僕にはやるべきことがあるのかもしれないと。
勉強でも運動でも、やれば一番になれた。負けず嫌いで誰よりも一番でいたかった。100人の女がいれば、全員を自分に振り向かせることができると信じていた。やりたいことをやっていた。何も怖いものはなかった負けず嫌いの青年が、一瞬にして人生のすべてを失ったかのような体験をする。長い入院生活、30回以上の皮膚再生手術。死んでいてもおかしくはなかった事故と、そして限りない体の痛み、顔や手の容姿を大きく失ったことへの深い喪失感。まさに体も心も死地にいた彼が、同じ入院患者や看護婦、周囲の人々と、そして家族との触れ合いで再生していく。そのおかげさまの階段をのぼったのは、なによりも、彼のもつ「負けず嫌い」の力、彼の持つ命そのものの力だったのだろう。
現在、中古車販売業の経営を手がけ、忙しい毎日を送りながら、「オープンハートの会」を主宰し、同様の苦痛を抱える人々が安心して集まれる場、そして施設設立を目指して活動している。社会復帰の困難さ、周囲の視線や偏見、今もなおそれと戦い続ける彼のメッセージ
「僕も頑張っている、だからみんなも頑張れ」
古市佳央さんが下記講演会でお話しします。私も参加します。
今月17日 NPO読書普及協会埼玉支部主宰
「埼玉ほんのするめ~灯火」
時間 13時半~17時
場所 埼玉県労働会館(JR北浦和駅西口下車徒歩5分)
費用 会員1,000円、非会員2,000円
第1部
笑顔配達人 紺野大輝さん
「ありのままを受け入れる~それが本当の自分だから」
~自分らしさを取り戻したいあなたへ~
第2部
「三人三様 なぜそうなるの?」
おじさん(埼玉支部顧問 キャリアカウンセラー 虻川さん)
美女(埼玉福支部長 会社員 武田さん)
若者(埼玉支部学生代表 学生 高橋さん)
第3部
古市佳央さん
「君の力になりたい」
―ある「顔」の喪失と再生の半生記―
古市佳央著(ワニブックス 本体1429円+税 A5判190頁)
人は変われる―そう確信させてくれる久しぶりの好著に出会う。もし事にあたって「変われない」「できない」と感じているとしたら、著者が紡ぐこの物語に触れた時、その思いは一変するだろう。はかりしれない勇気を与えてくれたことに感謝したい。
8月20日、楽祥さん主宰の「Thanks&Harmony!の会」に講演に呼ばれ、東京・台東区民会館に赴く。会開催の前、開館のロビーで、颯爽と歩く、ブルーのシャツを着た長身で金髪のサングラスの男性とすれ違う。「ただもんじゃねえな」と直感でわかる。オーラと言ってもいいし、雰囲気といってもいい。過酷な、そして凄惨な道のりを歩いてきた人が発する特有の匂いだ。
そして講演。彼は会場にいた。壁に背を貼り付けるように静かに座っていた。休憩時間、静かな声で話しかけてきたのは彼だった。
「私も単車乗っていたんですよ。事故で燃えて、こうなったんですけど…」
彼の顔は重度熱傷を負い、そしてなんとか再生の試みを繰り返したきた風貌だとわかる。私は嬉しかった。普段、誰にも話さない過去を、用意してきた話をとりやめてぶちまけた後の第一声が彼だった。ありがとう。
少しく話した後、彼はこう言った。
「こんな目にあわなければ、私はわからなかったんですよ」
この言葉。私は今まで生きた中の最もつらい出来事を思い出し、そう言えるだろうか。「これでちょうどよかったんです」と言いたいと思いながら、言えない自分を発見する。頭が下がる。高校一年でバイク事故。炎上。体表面の41%を重度熱傷。過酷な入院生活と再生手術の連続。信じていた自分の「姿」を喪失。その事実に向き合った、そして向き合わざるえなかった彼の煩悶の物語を『這い上がり』で謹んで分けてもらった。どうか、著者のサイト古市氏のサイトを見て欲しい。そして、その後の彼の取り組みを分かち合ってほしい。
『這い上がり』で綴られる古市氏の言葉。まずもって「率直」の力に心を打たれた。どれだけ、私たちはこの「率直」を失い、再生の力に歯止めをかけているだろうか。著書の前書きで古市氏は
なぜ、死んでしまわなかったのか。どうして生き続けているのか。なぜ俺だけがこんなつらい仕打ちを受けるのか。俺よりひどいことをしてきた人間を野放しにして、なぜ、なぜ、なぜ…。
でも、あるとき僕は思った。生き残ったことに、何か意味があるのではないかと。もしかしたら、僕にはやるべきことがあるのかもしれないと。
勉強でも運動でも、やれば一番になれた。負けず嫌いで誰よりも一番でいたかった。100人の女がいれば、全員を自分に振り向かせることができると信じていた。やりたいことをやっていた。何も怖いものはなかった負けず嫌いの青年が、一瞬にして人生のすべてを失ったかのような体験をする。長い入院生活、30回以上の皮膚再生手術。死んでいてもおかしくはなかった事故と、そして限りない体の痛み、顔や手の容姿を大きく失ったことへの深い喪失感。まさに体も心も死地にいた彼が、同じ入院患者や看護婦、周囲の人々と、そして家族との触れ合いで再生していく。そのおかげさまの階段をのぼったのは、なによりも、彼のもつ「負けず嫌い」の力、彼の持つ命そのものの力だったのだろう。
現在、中古車販売業の経営を手がけ、忙しい毎日を送りながら、「オープンハートの会」を主宰し、同様の苦痛を抱える人々が安心して集まれる場、そして施設設立を目指して活動している。社会復帰の困難さ、周囲の視線や偏見、今もなおそれと戦い続ける彼のメッセージ
「僕も頑張っている、だからみんなも頑張れ」
古市佳央さんが下記講演会でお話しします。私も参加します。
今月17日 NPO読書普及協会埼玉支部主宰
「埼玉ほんのするめ~灯火」
時間 13時半~17時
場所 埼玉県労働会館(JR北浦和駅西口下車徒歩5分)
費用 会員1,000円、非会員2,000円
第1部
笑顔配達人 紺野大輝さん
「ありのままを受け入れる~それが本当の自分だから」
~自分らしさを取り戻したいあなたへ~
第2部
「三人三様 なぜそうなるの?」
おじさん(埼玉支部顧問 キャリアカウンセラー 虻川さん)
美女(埼玉福支部長 会社員 武田さん)
若者(埼玉支部学生代表 学生 高橋さん)
第3部
古市佳央さん
「君の力になりたい」