ブラックユーモアの効いた恩田さんらしい作品。
ストーリー:
原発事故で汚染された地域を巡回する
ロボットたちのもとに、謎の女が現れた――。
彼女の目的は一体何なのか!?
立入制限区域をパトロールするロボット「ウルトラエイト」の居住区に現れた、国税庁から派遣されたという謎の女・財護徳子。だが、彼らには、人間の訪問が知らされていなかった。戸惑いながらも、人間である徳子の命令に従うことにするのだが・・・・・・。(朝日新聞出版:錆びた太陽)
近未来SF作品のようだけど、現実に起こりうることにも思える不思議な作品。大規模な原発事故(テロ)が起こり、立入制限区域内では、同じ形をしたロボット7体が区域内のパトロールを行っている。そこにはかつて人間として暮らしていたはずのマルピーと呼ばれるゾンビたちも存在していて、完全に人間の住む世界とは隔離されている。どうやら、人口減少&大規模事故のツケを払わなければならない人間世界はジリ貧のようで。ある日、国税庁から派遣されてきたという謎の女が登場し、ボスらロボットたちは振り回されることに…。
この徳子という人間の若い女の子が何を目的に危険な場所までやってきたのか、その謎がつまりこの作品で伝えたいことのような気もして。人間ではないものたちが住む世界で、人間らしい振る舞いをすることが逆に当たり前じゃない感が面白いなぁと。それと、マルピーたちの描き方が独特。もともと人間だった時の記憶があるのか定かじゃないけど、やっぱり人間だったんだな…と思うところがあって、ゾンビ度合いが異なる個体がいるのも設定として面白い。
ところどころで、私の世代よりは上の方たちならわかるであろうネタが散りばめられていて、きっとハマる人はハマるんだろうな。「太陽にほえろ」とかわからないもんね😅
こんな世界は嫌だなぁと思うけど、読んでいた期間が福島の原発事故が起こった時期とも重なったことで、現実味も感じられるお話。もしかしたらボスみたいなロボットが活躍する世界がすぐそこまで来ているかもしれない。ボスらになら会ってみたいかも。あ、でも私たちはマルピーになっちゃう可能性があるのか…うーん…やっぱり駄目だね、そんな世界は。