幻冬舎文庫(今ちょっと問題起きてますね…)版です。
超大型台風接近中の日本。国際空港の入管で突如11人が別室に連行された。時間だけが経過し焦燥する彼ら。大規模な通信障害で機器は使用不能。その中の一人の女が「当局はこの中にテロ首謀者がいると見ている。それを皆さんに見つけ出していただきたい」と言った。女は高性能AIを持つヒューマノイドだった。10人は恐怖に戦おののきながら推理を開始する。
北米からの帰国者に感染力の高い新型肺炎の疑いが生じる。連行は細菌兵器ゆえの隔離、ヒューマノイド対応だったのか。
テロ集団はなぜ「破壊」でなく「消滅」という用語を使うのか。様々な憶測が渦巻くが依然、首謀者が誰か摑めない。やがて孤絶した空港に近づく高潮の危険。隔離された10人の忍耐と疲労が限界を超え「消滅」が近づいた時、爆発音が!
テロ集団はなぜ「破壊」でなく「消滅」という用語を使うのか。様々な憶測が渦巻くが依然、首謀者が誰か摑めない。やがて孤絶した空港に近づく高潮の危険。隔離された10人の忍耐と疲労が限界を超え「消滅」が近づいた時、爆発音が!
上・下とあったので、時間はかかりましたがその分読み応えありました。
そして恩田さんらしいSF作品となっています。
あまりに現実離れしすぎということではなく、
もしかしたら近い将来で起こりうるかもしれないこと。
それは人間に限りなく近いヒューマノイドのキャスリンの存在や、
大規模な台風(気候変動の問題)、システム障害、新型肺炎、などなど、
今起こってもおかしくないようなことが次から次へと出てきます。
それも、空港というどの国にも属さない狭い空間で…
何が消滅なのかは、最後の最後までわからないです。
テロリストとは誰なのか、それも下巻の最後で判明します。
それまで、登場人物同士のやり取りだけで推理するのですが、
本の中で言っているように、誰もテロをするような人には思えないんですよね。
何なら本人も知らぬうちにテロに加担している可能性が…
ちょっとずつ明らかになることが、本当に真実に近づいているのかもわからず、
先の見えない推理を繰り広げなければならない皆さん、
相当なストレスで疲労されることでしょう。
非常にワクワクしながら読める本でした!
そのワクワク・ドキドキに対して、結末が満足できるかどうか、
そこは人それぞれかもしれません。
正直「え?そういうこと??」って思わなくもなかったですが、
よく考えてみると、現代日本人の課題に切り込んでいるなぁという気もするし。
それにしても、キャスリン。キーパーソン(そもそも人間なのか?)。
彼女の存在感はかなりのものです。
ヒューマノイドなので感情は無いはずなのに、
本作品内ではまるで感情を持っているかのように見えるシーンがたくさん。
だんだん親しみを持つ登場人物たちも、
彼女が何でもお見通し(体温計れる、火薬探知できる、など)なので、
時々、ふっと怖れを抱くこともあります。
何なら最強兵器にもなり得るのです。
この作品だけで終わらせるのはもったいない気もするので、
どこか別の場所で活躍するキャスリンのお話を読みたいなぁ。