山の案内 歩き日記 今日の猫たち | ||||||||||||||||||||||||||||||||
私は、20年くらい前に、山本周五郎作品に夢中になり、古本を買い、読みふけっていた。沢山の単行本が書棚に並んでいる。 今、再度、読み返しているが、歳のせいか、重たい話しに、疲れを感じる。やはり、ハッピーエンドで終わる人情話がよい。人情話を読み、登場人物の言葉に涙すると、不思議に心が安らぐ。 |
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◆作風 山本周五郎作品は、心の奥深くまで、突き詰めて行く、表現で物語を展開する、重たく暗い、作品がおおい。市井に生きる庶民や流れ者、浪人者、武家社会のヒューマニズムを描いた作品である。 人生のつらい思いや、苦しさを知り尽くした、登場人物の言葉ひとつひとつに、人間が生きる上での重要な意味が含まれる。 かといって、重たい作品だけではない、笑いと涙の人情話も、傑作がおおい。物語の展開のうまさ、ラストシーンでの、登場人物の言葉に涙する演出、周五郎の卓越した、技量を感じる。 |
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◆日々平安 今、「日々平安」を読んでいる。この本は、11編の短編集で、重たい作品と、人情味のある作品が混在している。その中で、重たい作品は「ほたる放生」と「しじみ河岸」で、昨夜読んで、暗く心が沈み、疲れた。 ほたる放生の登場人物は、娼婦(主人公)と、その”紐”、娼婦を一途に愛する男、”紐”が連れてきた少女(紐の新しい娼婦)、娼婦宿の女主人である。娼婦は”紐”に騙され(騙された振りをして)、あちこちの娼婦宿に売られる。 話しは、此処まで娼婦は”紐”に尽くすのか、此処まで”紐”は冷酷に娼婦をだませるのか、此処まで男は、娼婦を愛せるのかに尽きる。 ラストシーンは、娼婦が”紐”の裏切りに気づき”紐”を殺害しようとする直前に、男が、愛する娼婦の幸せを願い”紐”を殺害する。そこで娼婦は・・・・・・ それぞれの登場人物の心の葛藤を、見事に描いた、作品だが、重く心が沈んでしまう作品でもある。「娼婦と男を幸せにしてやれよ」と、山本周五郎に言いたくなる作品である。 しじみ河岸は、殺しの嘘の自白をする娘、自白に疑念を抱き、真相解明する、与力の話しである。娘は、病気の父親と、魯鈍な弟(直)との生活に疲れ、家族の面倒を一生みる約束で、権力者の息子の身代わりとなって、殺しを自白するのである。 最後の娘の言葉、暗く、切なく、何とも云えない、陰鬱感が残る。 「それで清太郎の身代わりになったのか」 「あたしは疲れてました、しんそこ疲れてきってました」・・・・・「お父つぁんや直が、安楽に暮らしてゆけるなら、自分はどうなってもいい、・・・・・・もう躯も続かない、なんでもいいから休みたい、手足を伸ばして、ゆっくり休めたら、それで死んでもいいと思ったんです」 日々平安には、表題の「日々平安」や「水戸梅譜」など、藩の騒動をユーモラスに解決する話しや、人情味溢れる話しの短編もある。 水戸梅譜は、人情味溢れる、ハッピーエンドの作品で、涙もろい私は、不覚にも泣いてしまった。ラストシーンは、万感胸に迫る。 「そのほうの父を死なせたのは余の不明であった、ゆるせ・・・・」ゆるせと云いながら、はじめて光國の眼から涙があふれ落ちた。・・・・・・・・・・ 光國の心にはかって覚えたことのない感動が去来した。今日見いだした野の梅は二本だったが、ほかにたぐいまれな名木をたずね当てたのである。 日々平安は、読みかけで、ぼちぼち、完読したいと思っている。その他、沢山の単行本も、ぼちぼち、完読したいと思っているが、どうなることやら。 |
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◆小説の不思議さ 山本作品を読むのは、20年ぶりくらいで、小説の内容は、殆ど忘れている。ところが、読み進むと、あらすじが脳裏に浮かび、記憶が蘇ってくるのである。不思議な現象だ。 脳のどこかの引き出しに、読んだ本の記憶がしまわれいるのだろう。脳の神秘である。 |
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◆山本周五郎作品・・・数ある作品のほんの一部を紹介。詳しくは新潮社山本周五郎を見て下さい。
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