絢爛豪華たる安土桃山文化の主座を占める茶の湯。それは、死と隣り合わせに生きる武士たちの一時のやすらぎだった。茶の湯文化を創出した男とその弟子たちの生き様もまた、武士たちに劣らぬ凄まじさをみせる。戦国時代を舞台に繰り広げられる“もう一つの戦い”秀吉対利休。果たして実際の勝者はどちらなのか。傑作時代長編。
おのれと豊臣家の末路を見据えながら、鬼気迫る『明知討』を舞う秀吉の胸に、かつて自らが排した千利休の声が響く。「殿下、共に崖から身を躍らせましょうぞ」―- 現世の天下人となった秀吉、茶の湯によって人々の心の内を支配した千利休。果たして勝者はどちらなのか。そして、利休の死の真相は―ー? 細川忠興、牧村兵部、古田織部、瀬田掃部ら、千利休を継ぐ弟子たちを通し、二人の相克と天下人の内奥が鮮やかに浮かび上がる。今もっとも勢いある作家が写しだす、戦国を生きる人間たちの覚悟と懊悩、その美しさ。卓抜したストーリーテーリングで読ませる傑作長編!