『待たせたかな?』
『いえ、先ほど来たばかりです』
『さっ美佐江、挨拶しなさい』
顔を上げない美佐江
下を向いたまま
『始めまして美佐江です』
『おや?美佐江、彰君を前にしたら緊張したか?』
『美佐江の母です、この度はわざわざ足を運んで頂いて有難う御座います』
母親の挨拶が済んでも顔を上げない美佐江
写真の彼が目の前に居る
『美佐江どうした?』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』
友達になら、キツイ言葉でも飛ばして言える、だけど顔を上げる事が出来ない。
『この子ったら、恥ずかしがりやで』
その時だった、美佐江が顔を上げ
『私、今日の為に必死でダイエットして2㌔痩せました』
アイドルの松田聖子メイク&カットで頑張った美佐江
美佐江が顔を上げた瞬間、彰は意識が遠のく気がした
威圧感と存在感
彰の為に綺麗になろうと努力したであろう美佐江の化粧
直ぐに美佐江は顔を下に向けた
彰の真っ直ぐな瞳にクラクラ
『美佐江ったら2時間も化粧に時間を掛けてたのよ、オーホホホホッ~』
衝撃を受けたのか?沈黙の彰を何とか盛り上げようとする母親
彰は引きつった声で
『女性は素顔が一番だよ!!』
『美佐江、パパの言った通りだろ?美佐江の素顔が一番だよって』
『美佐江・・・顔洗ってくる』
そう言うと部屋を出て行った
滴り落ちる汗は冷や汗
『美佐江は素直な子だろ?』
父親の言葉など耳に入らぬ彰
彰は将来の自分を想像してた
美佐江と一緒に買い物している自分
美佐江と一緒のベット
美佐江にソックリな子供
部屋の隅で丸くなる自分
迷走が妄想となり
『俺・・・済みません、やっぱり無理です、このまま帰らせて下さい』
『そうか・・・』
父親の乾いた声
『せめて娘を傷つけない為に食事だけでも一緒にしてくれ』
『は・・い』
父親の自分でさえ美佐江の化粧した顔は不気味
化粧を落とし美佐江はスッピンで帰ってきた
彰はウルトラマンが好きだ
中でも人間と友好的な珍獣のピグモンが好き
" 美佐江はピグモンに似てる "
『化粧を落としたらサッパリしたわ~』
メイクを落とし戻った所で偶然、両親と彰の会話を聞いた
こんなにカッコイイ人が自分と結婚を前提に付き合ってくれるはずもない
気が楽になった
そう思った途端にお腹が空いて
『何で誰も食べないの?こんなに美味しいご馳走なのに』
ふっきれた
自分は一生、結婚なんかしなくったって良い
何事も無かったように、さっきまでの恥ずかしがりやの美佐江は消えた
ざっくばらんの美佐江に戻って笑顔で目の前の膳料理をパクパク
『美味しい~♪パパママ食べて、彰さんも食べて美味しいよ』
とびっきりの笑顔で彰に語りかけた
『私、好き嫌いがないのよ、きっと彰さんは食わず嫌いでしょう?』
"食わず嫌い?"
ピグモン似の美佐江の笑顔
俺は食わず嫌いか?
『美佐江さんて・・・性格美人だね』
するりと彰の口から出た言葉
唐突な言葉に美佐江も両親も唖然
(ノ⌒∇)ノ*:・'゜☆。.:続く*:・'゜★゜'・:*:.。.:*:・'゜:*♪