何気に出た言葉
別に意図は無かった
なのに美佐江の表情が明らかに変わった
『今日、初めて会ったのに・・・私の事が好きなのね?』
『はっ?』
『初めて言われたわ、性格美人なんて』
『いや、性格が良いだけじゃ・・・』
そこまで言って黙った彰
しまった!!・・・誤解させる事をいってしまったかも?
『私、もっと料理の勉強をするわ、それにパパの仕事も手伝う』
『美佐江、まだ彰君は付き合うって言ってる訳じゃないよ』
『そんな事はないわ私は性格美人なんだもん』
やばい
『そろそろ失礼します』
『この料理を一緒に食べてからでもいいでしょ』
断れない彰
『そうでした、では頂きます』
思い込みの激しい美佐江
『彰さんの食べてる姿もカッコイイわ』
美佐江に見つめられて食事も喉を通らない
グラスのビールを一気に飲み、口の中の料理を飲み流す
気が付けば、美佐江が隣に座りお酌を始める始末
『こらこら美佐江、彰君が食べにくいよ』
『性格美人って言ってくれたお礼よ』
美佐江が怖い
食った飲んだ
『俺、これで失礼します』
立ち上がった瞬間、緊張してたのかクラクラする
隣に居た美佐江が支えた
『済みません、ちょっと酔ったかな?』
笑ってごまかす彰に
『まだ美佐江と一緒に居たいんじゃないの?』
美佐江は彰が自分を気に入ってくれたと思い込んでしまっていた
彰は父親の顔を見て
『今日は失礼させてもらいます』
『今度はいつ会えるの?』
美佐江の甘えた声
背筋が凍る錯覚を覚える彰
『で・電話します』
『パパ聞いた?彰さんからデートの誘いの電話をもらえる』
そんな・・・・・。
『彰君、今日は有難う、美佐江を気に入ってくれて良かった良かった』
美佐江の父も性格美人のひと事で誤解したか?
そして次の日、さっそく美佐江の父から電話が入った
『いや~彰君、君は見る目があるよ、美佐江を気に入ってくれて有難う』
『その事なんですが、今回の話は・・・・』
『大丈夫、君の将来は薔薇色だよ』
彰の話に耳を傾けない父親
口は災いの元
直接、父親の会社に行って断る
それが一番
翌々日、彰は美佐江の父親に電話し
『これからそちらに行っても大丈夫ですか?』
『彰君なら、いつでも大歓迎だよ』
スーツを着て礼儀正しく丁寧に、そして穏やかに断る
その後、俺は自由の身
会社の事務所に行くと、社長は自宅で待ってるとの事
嫌な予感がしたが気持ちは固まっている
深呼吸し、会社に隣接する自宅玄関のチャイムを鳴らした
ドアの向こうで返事が聞こえた
『はぁ~い♪』
美佐江の声だ
スッピンの美佐江が出迎えた
『彰さん、さっそく遊びに来てくれたのね』
『今日は、社長に用事があってきました』
『彰さんたら私に直接電話するのが恥ずかしいの?』
『いえ今日は社長に話があってきました』
『うふっ、パパの言った通り恥ずかしがりやなのね』
まさかとは思うが、この親子に罠を掛けられた気がする
『社長は?』
『パパならちょっと出かけたの、でも直ぐに戻るわ、上がって待つ?』
どうする?事務所で待つか?自宅で待つか?
ここまで来たのだから、後は本音を言って終わりだ
『上がらせてもらいます』
『そんなに堅苦しく言わないで』
美佐江の顔が怖い
客間じゃなくリビングに通され
『ちょっと待ってね、冷たいお茶を持ってくるから』
『いえ、お構いなく』
『だから堅苦しい言葉使わないで、私達は夫婦になるのよ』
美佐江の言葉に心臓が破裂しそうだ
『美佐江さん、話って言うのはその事なんです、結婚は無理です』
言えた
彰は内心ホッとした
" 結婚は無理 "と直接、美佐江に伝える事が出来てサッパリした
『知ってる、彰さんは借金が終わるまで結婚しないんでしょ?』
『別に借金は関係ありませんが』
『大丈夫、借金はパパが返すって言ってたもん』
『いや借金は自分が・・・』
その時やっと美佐江の父がリビングに入ってきた
『おっ、彰君、さっそく遊びに来てくれてたか』
『社長、社長と二人で話しをしたいんですが』
『別に美佐江が居たって良いじゃないか』
『わかりました』
本人の目の前で一度は断った
誤解しないように素直に断ろう
たったひと事で済むのだ
むやみに良い話に乗った事を後悔している
もう2度と金に目がくらむなんてしない、心に誓う
『実は銀行に行ってたんだよ、彰君の借金の事でね』
そう言って彰の目の前に800万を置いた
(ノ⌒∇)ノ*:・'゜☆。.続く:*:・'゜★゜'・:*:.。.:*:・'゜:*♪