みゆきな日々

チワワのチェリー女の子&私・年金暮らしのジッちゃんに絶賛親孝行活躍中

結婚願望【俺の道】

2011年07月15日 | インポート

                彰の心が音を立てた

         錆びたゼンマイ時計を巻いてるような鈍い音

                    目の前

                  800万の札束

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                      更に

         『別に用意した金だ、何かの足しにと思って』

               分厚い銀行のロゴ入り封筒

          『この親父、いったい幾ら用意したんだ?』

                   揺れる気持ち

             『封筒の中は好きに使いなさい』

            『えっ?好きに使いなさいって・・・。』

       『ボロい車を廃車にして新車でも買えばいいじゃないか』

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                『分相応の車なんですが』

         『そんな事を言わずに、中を確かめてみなさい』

            震える手で、封筒を手に取り中を確認

                裸で出された金額と同じ?

                 帯の付いた札束が8つ

                  合わせて1600万

   『美佐江に車を買ってやりたいが、あいにく免許を持ってないんだよ』

    『だって~私、機械音痴なんだもん、車の運転なんて無理だわ』

       『やっと車を買ってやれる息子が出来たみたいなもんだ』

                 豪快に笑う美佐江の父

             『美佐江、パパにも冷たいお茶くれ』

                     『はぁ~い』

             美佐江が席を外した間に彰に小声で

         『結婚式費用の心配もするな、新居も建ててやる』

                『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』

        この他に結婚式まで身辺整理の金を500万用意してある

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                    頭が真っ白の彰

               こんな事が世の中にあるのか?

                 バブル真っ只中の世の中

      " 美佐江と結婚してくれたら愛人の1人や2人は目をつぶろう

           美佐江の幸せな顔を見れるだけで良いんだ

                出来たら孫の顔も見たい "

                 『少し考えさせて下さい』

                     声が震える

               『いや、たった今返事が欲しい』

                 この一言がカチンときた

                 俺の人生を金で買うのか

             そして俺も金が欲しいから迷ってる?

         美佐江と結婚すれば、贅沢三昧の人生が待っている

            苦労は苦ではないが楽に生きたいのも本音

            しかし金と結婚したと世間の噂になるだろうな

        いや世間の噂より美佐江と一緒にやって行けるだろうか?  

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                    美佐江との結婚

        『もしOKならば、この指輪を美佐江にはめてやってくれ』

                 なんとも用意周到の父親

                 婚約指輪まで用意してある

                  今日の今日、今の今?

                  いきなり婚約しろと?

                  俺は断りにきたのだ

         世の中は金目当てで結婚する奴もいるが俺は違う

                    『失礼します』

       彰はそれだけ言って逃げるように玄関から飛び出していた

            『彰君、待ってくれ話し合おうじゃないか』

             焦って引きとめようとする美佐江の父

          美佐江の悲鳴にも似た泣き崩れる声を背中に

           車に乗ってどこをどう走ったのか記憶にない

             市内を一望出来るホテルの駐車場

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       金に目が眩んだ男と結婚して彼女が幸せになれるはずない

        先月別れた真弓の "貧乏は嫌い" の言葉が頭を巡る

                  俺だって貧乏は嫌いだ

           しかし美佐江の両親のようにはなりたくない

             金で買われる男に成り下がりたくない

                      俺は俺だ

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             その頃、美佐江は泣きじゃくっていた

      『パパが急かすから彰さんは怖くなって帰っちゃったのよ』

        美佐江の父は金に物を言わせないやり方を恥じた

               『美佐江、彰君は諦めてくれ』

       これ程の大金を前にしても首を縦に振らなかった彰

                   そして数年後

    真面目に仕事をこなし不屈の精神で職場の社長に認められ

            小さい建築会社の社長となった彰

       『みゆきと美佐江が同級生だったのはビックリだよ』

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             『世の中は広いようで狭いものよ』

            『あの時の選択は間違ってなかったよな』

   『この間、田舎銀行でバッタリ会ったのよ、ちっとも変わってなかったし』

                    『あのまま?』

    『うん、あのままだった、話かけたら子供が二人いるって言ってた』

         『へぇ~金に目が眩んだ誰かと結婚したのかな?』

                 『噂ではそう聞いてるよ』

    『いいじゃない、彰だって美人の奥様と娘が二人いて幸せなんだし』

                      『まぁね』

           スナックママ時代に、ちょくちょく顔を出す彰

              お客様の昔話を聞くのが好きな私

               たわいない会話でお酒が弾む

        男と女の出会いや恋愛&結婚はサスペンスストーリー

      暫くして田舎新聞の、お悔やみ欄に美佐江の名前を見つけた

                      衝撃が走る

                    美佐江が死んだ?

         田舎銀行で言葉を交わしたのが最後となったのだ

       バブルがはじけ建設関係の仕事も芳しくない時代に突入

   寂しそうに銀行のロビーの椅子に座ってた美佐江を見つけ声を掛けた

               『美佐江しばらく、どうしてた?』

                 『みゆきじゃない暫くだね』

               『お父さんの仕事の手伝い?』

 『景気が悪くて会社も大変なの、従業員がすくないから手伝いしてるの』

       『結婚願望の強い美佐江だったよね、で結婚したの?』

                『結婚して二人の子供がいるよ』

                    『ご両親は元気?』

 『経営が苦しいから必死で働いてる、たまにパパは現場で大工さんもしてるの』

           お嬢様時代はバブルと一緒にはじけたよう

             『美佐江は全然昔と変わってないね』

       『皆に言われる、私ってそんなに昔のまま変わってない?』

        『全然変わってないよ、すぐに美佐江って分かったもん』

                   『同窓会やりたいね』

            『本当だね、同級生の皆と会いたいな』

          この会話が最後となるとは思ってもみなかった

              偶然にも美佐江と私は同級生

                   彰とも古い友人

       私がスナックママしていなかったら知らなかったエピソード

         二人の子供と両親と夫を残し癌で亡くなった美佐江

                   今から5年前の話

             絶大なインパクトを残し旅たって逝った

                      通夜の夜

        『器量よしに生まれたら、もっと長生きしたかもしれない』

                     父親の言葉

            人の運命とは終わるまで分からないのです

                      美人薄命

             きっと美佐江は私って美人薄命だったのね

                あちらから叫んでるかもしれない

                 美佐江のあだ名はピグモン

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               確かに不美人で性格がキツク我侭だった

            けど彼女は沢山の同級生の中でも印象が強い人

                  骨になれば美人もブスもない

                   中学時代の美佐江の夢

                  "大恋愛して早く結婚したい"

           美佐江の口から本物の恋愛経験が聞きたかったよ

                        バイバイ

                       ~美佐江~

           

           (ノ⌒∇)ノ*:・'゜☆。.FND:*:・'゜★゜'・:*:.。.:*:・'゜:*♪