昼下がりの繁華街は静寂
夜のネオンの明るさと違い太陽照らす真昼間
1人の背広姿の男
自販機の下を覗いてる
自販機でジュースを買い、お釣りの小銭が下に転がったのか
背広姿の男は歩道に這いつくばって必死に自販機の下に手を伸ばす
つい見とれて見入ってた私
同じ状況なら
人通りが少ないなら
私も同じく這いつくばり
根性賜物を披露するかも
1円を笑うものは1円で泣く
男は自販機の下に手を入れ無造作にまさぐってるよう
ふと視線を感じたのか私に気づき自販機の下から手を抜き探すのを止めた
背広に付いた砂や埃を手で払いのけ何事もなかったかのように歩き出した
男の手にはスーパーの袋
3本程のペットボトルが透けて見える
私に見られて恥ずかしかったのね?
真昼の繁華街
スッピンで歩ける時間帯
時折、酒屋さんが配達で車を止める程度
何事も無かった顔で立ち去った男
自販機の下が気になる
覗きたい衝動
自販機の下に何を落としたんだろう?
私が見ていたせいで諦めて立ち去ったから、まだ落ちてるかもしれない
好奇心1000%
買ったものをカウンターに置くや否や
一目散にビルの外に走って出たら
さっきの背広姿の男が再び自販機の下に手を入れて
汗水ダラダラ必死に、まさぐる
『何か落としたんですか?』
いたたまれず声を掛けた
『指輪』
『えーーーーっ指輪?』
何でこんな所に指輪なんか落とすのよ
心で叫びながら
『長い棒か何か持ってきますか?』
『別にいいです・・・。』
『困った時はお互い様よ』
そう言って店に戻り長い棒を探した
店にある長い棒は箒しかない
『これできっと取れるよ』
数秒後
取れた
BUT
それは
指輪でも小銭でも無かった
自販機から取り忘れた小銭や下に落ちてる小銭を拾い生活しているホームレス
自販機の下に白く光る空き缶のプルタブが指輪に見えたらしい
背広を着たホームレス
自販機から缶コーラを2つ買って背広の男に
『お疲れさん』
そう言って差し出した
背広の男は黙って受け取り一気に飲み干して
『ごちそうさん』
にっこり笑って次の自販機の釣り銭口や下を覗く仕事に戻った
背広を着たホームレスさん
あれから5年
雨降りや寒い冬に鍵の掛かってないビルの階段で寝てたりした背広姿の男
今はどうしてるかな?
今日も暑いよ~´´(;´ρ`A)アチィ