１匹が遠い…

深夜2時、とある川岸に私は来ていた。

そう、夜勤帰りのナマズ釣りである。

空は分厚い雲に覆われ、ついには針のような雨も降り出した。

これから天気は下り坂、纏まった雨が降るようである。

その割に空が暗くないのが不思議だ。

月齢は全く確認していないが、満月かそれに近いのであろうか？

ともあれ、本格的に雨が降り出す前に方を付けてしまいたい。

例年であればとっくに釣りあげて、テンションアゲアゲで繰り出しているところだが、今年は全く良いところが無い。

反応が無い訳でもないが、とにかくバラすのだ。

乗らないというのなら、まだ救いがあるが、フッキングしてからのバラしが多過ぎる。

何本かは獲ったと思ったら足元でバラしている。

そうこうしてる内に、4月も終わりを迎えようとしている。

来週はもう5月だぞ！ゴールデンウィークが始まってしまうではないか！

焦りを抱えたまま、車からタックルを取り出す。

今日の相棒は

タクティクス　スーパーノヴァにタトゥーラ。

ルアーはTバドのクリアパトカーカラー。

深夜パトロールだぜ！と、遊び心を発揮する程、心に余裕は無いのだが…

とりあえず岸辺に立ち、対岸のボサに向かってキャストを始める。

反応は無い。

それでは岸沿いにと、下流側に向かってキャスト。

張り出したボサを避けながら、スローに巻いてくると、

バフッ！

激しい捕食音と共にルアーが引き込まれる。

乗った！しかもかなり良いサイズだ。

ロッドを支える腕にかかる重量感が半端ない。

リールが巻き取れず、竿で耐える。

これは70あるんじゃないか？

少しニヤけた時、

プンッ

重みが無くなる。

まさか？バラした？

もしかしてこっちに向かって走ってるだけかも？

慌ててリールを巻くが、手に伝わるのはルアーの振動のみ…

嘘だろ？またバラし？

がっくり肩を落とす。

何故だ？何がいけない？完全にルアー持っていっただろ？向こうアワセでガッチリ乗ってたはず…

竿の角度がいけなかったのか？もっと立てた方が良かったか？

ハァ〜、溜息しか出ない。

これでは次のブログタイトルは「1匹が遠い」とでもするしかないか…

そんなことを考えながら、フォローキャストしてみるが、あそこまでファイトしてしまっては出るはずも無い。

憂鬱なまま、今度は上流側の岸沿いにキャスト。

投げやりな気分で引いていたルアーに

チャプ…

おっ？なんか出た！

音からしてチビ助か？

もう小さくても何でも良い、とりあえず1匹釣りたい…

出た付近にもう1度投げ込む。

チャプ！

ルアーが引き込まれた！

フッキング！

しかし、乗らずにそのままルアーが飛んでくる。

よっぽどチビさんか？フックに触りもしないし…

もう1回出るかな？

移動した事も考え、コースを変えて通してみる。

チャプ…チャプチャプ

追い食いの後、ルアーを引き込む。

よし乗った！最初の奴と比べたら全然軽いけど、1匹は1匹だ！

逃がしてなるか！と、一気に引き寄せ抜き上げにかかる。

が、想像以上に竿がしなり、抜き上げきれない。

ヤバい、落とす…

ええい、ままよ！

竿を更に立て、同時に後ろ向きにダッシュする。

何とか抜き上げられたナマズはそのまま草叢へ着地。

抜き上げた時に気付いていたが、ヘッドライトで確認。

うん、全然小さくないね…

フィッシュグリップを掛け、ルアーを外す。

よっっっしゃ〜〜〜！獲ったど〜〜！！

写真を撮った後、メジャーで測ると62cmの腹パンで綺麗なナマズだった。

沢山卵を産むんだよと、急いでリリース。

どうにか4月中に今年初ナマズを獲る事が出来た。

しかも美個体だったし、サイズも良かった。

となると…

最初のヤツはいったい…

いずれ逃走中の犯人は確保せねば。

70オーバー容疑でね！