薄くかかった雲の間から星が瞬いていた。
いや、雲の間という表現は間違いか?
6割方は晴れている。
星の瞬きの間を、薄い雲が流れて行くといった風情か?
時刻は深夜2時、街灯も疎らな田園地帯の水路脇で、私は空を見上げていた。
今週は、週の始めから、すっきりしない天気が続いている。
秋は終わり、かといって本格的な冬が始まったとは言えない初冬の12月初旬。
普段なら、雨上がりの風に冷たさが籠る季節なのだが、今年は暖冬のようだ。
この時間でも、気温は10℃を超えている。
そよ吹く風にも、冷たさは感じない。
少し早かったか?
そう思いながら水路を覗く。
雨の影響なのか?以前来た時より、水位が10センチ以上あがっていた。
深い部分のみに溜まっていた水が水路全体に行き渡っている。
と言っても、浅い所の水深は10センチ程度しかないのだが・・・
しかし、エビが移動するには充分な水深とも言える。
現に、ヘッドランプに照らされた水中に、ちらほらとエビの目が光っている。
バケツに水を汲み、深場に網を入れてみる。
前回は溜まっていたエビがまとめて入ったのだが・・・
やはり移動してしまったようだ。
こちらも移動して、少し先の深場を探る事にする。
ヘッドランプを点けたまま、ポイントに着くと、ライトに照らされた水面が沸騰したかの様にざわつく。
どうやらエビではなく、魚が溜まっているようだ。
それでも壁際にエビが居ないかと、なるべく魚を掬わない様に網を入れてみるのだが・・・
これでも半分以下の量なのだ。
網を上げた時には、大量のフナで埋め尽くされていた。
その気になれば、バケツ一杯分のフナを捕る事など容易だろう。
しかし、私の目当てはエビなのだ。
網の中のフナを逃がし、ゴミを取り除いていくと、エビではなく、タナゴがまとめて入っていた。
こいつは頂いていくとしよう。
バケツにタナゴを入れようと網を少し持ち上げると、明らかにタナゴとは動きの違う魚が、
ここでドジョウを掬ったのは初めてだ。
普段はぞんざいに扱われているマドジョウだが、こんな時は、少し嬉しい。
さて、エビの代わりにタナゴでも・・・
少しはそんな事も考えたりもしたのだが、また大量のフナを取りだし、ゴミを取り除きと思ったら、やる気が失せてしまった。
また来れば良い。
今日の所は
これだけ頂くとしよう。
もう少し冷え込まないとエビは集まらないようだ。
さあ、早く帰って寝るとしようか。