工房のオーナーさんに許可を頂きましたので、書きます。
昨日、麻乃の尻尾を弓にしてくださる事を引き受けて頂き、
お邪魔した工房さんは「自由ヶ丘ヴァイオリン」と言う工房さんです。
場所は東京の自由が丘にあります。
私が何故、こちらにお願いしたかったかと言うと
ネットで工房さんを探している時に、偶然こちらのオーナーさんが書かれた
ブログを読んだからです。
それは馬の毛の記事でした。
こちらのオーナーさんはご自分のお仕事に関わる事にとても研究熱心な方で
ブログからもそれが伝わってきました。
その記事の内容も
「お客さんでJRA栗東所属の獣医さんがいらして(チェロを弾かれるそうです。)
その方に廃馬になったサラブレッドの尻尾を分けてもらい、それで弓を作ってみた。」
と言う内容だったのです。
それには「毛を分ける苦労」「毛の長さ毎にどんな楽器の弓が何本取れるか」
「それを実際演奏家の皆さんに使用して頂た時の消耗度」などが
とても丁寧に書かれていらっしゃいました。
更に、毎年7000頭生まれては消えていく競争馬の事にも
触れられており、そこにとても優しさを示されていたのです。
それで私は「ああ、この方だったらもしかしてお願いしたら
やってくださるかもしれない。この方にお願いしたいなぁ。」と
思っていたのです。
それで、先日麻乃の毛を分ける前に勇気を出して電話を掛け、
経緯を話しお願いしました。
電話の向こうのオーナーさんはとても感じの良い方で、
快く引き受けてくださいました。
そして昨日、麻乃の尻尾が揃ったので工房に伺った訳です。
オーナーさんは電話の感じそのままの穏やかでユーモアのある方で
奥様もとても優しく温かい方で、
こんな見ず知らずの私の我儘な注文にも熱心に対応して頂き、
また、お嬢さん(ヴァイオリンの先生をなさっていらっしゃいます。)
にはヴァイオリンの運指のちょっとしたコツや
弓の色々な事を教えて頂きました。
あーちゃんの尻尾で弓は2本取れそうとの事で、
1本は北海道から戻ったら取りに伺い、
もう1本分はクリスマスまで預かって頂き、
私がクリスマスに演奏する時に頂く事をお願いしました。
それも、私の我儘でしたが、オーナーさんも奥様も
快く承諾してくださいました。
オーナーさん、奥様、ご面倒ですみません。
最初、私はあーちゃんの弓はそのまま形見として
取っておこうと考えていました。
だから鳴らなくても良いと思っていたんです。
いや、むしろ麻乃の弓が鳴ると知った方が驚きでした。
でも、、。使えるとなると違う問題が。。
それは、ヴァイオリンの弓の毛は消耗品なので
定期的に新しい毛と交換するんです。
だから、麻乃の弓で永遠に弾ける訳ではないんです。
それで私は使えると知っても躊躇したんですけど。。
するとオーナーさんや奥様、そしてお嬢さんも
「弾いてあげてください。」とおっしゃったんです。
そのほうが麻乃が喜ぶと。。
そしてお嬢さんがご自分のヴァイオリンで「いつくしみ深き」を
弾いてくださったんです。
その音色が余りにも美しく、胸の奥深くに流れこみ
涙がこぼれました。
ああ、私もあーちゃんと又会う日まで
下手でも頑張って
ずっとヴァイオリン続けようと思いました。
帰りがけにオーナーさんと奥様が玄関まで見送ってくださり、
その時にあーちゃんの事を
「本当に幸せなお馬さんですね。」と言ってくださいました。
あーちゃん、
何故あなたはいつもこんな優しい人達ばかりを
磁石のように引き寄せるのだろうね。
あーちゃんは天国にいってからも
こんなに素敵なご家族とのご縁を
私に残してくれました。
ありがとう、あーちゃん。ヴァイオリンがんばるね
「自由ヶ丘ヴァイオリン」の皆さんの優しさにあまりにも感動してしまい、
帰りは放心状態でフラフラと自由が丘駅まで向かい、
あっ!この町並みを撮っておきたいんだった。と思い出し
撮った2枚です。
新横浜駅で新幹線を待っている時も。。
新幹線に乗ってからも何だか胸が震えて。。
雲が流れる様をただただ眺めていました。
心にはあの美しい「いつくしみ深き」がいつまでも流れていました。