すでに多くのブログで取り上げられているが、9月3日付の『朝日新聞』朝刊〈私の視点〉に「脱原発『なぜ』の徹底議論を」と題する小論が掲載されていた。吉田文和・北海道大学教授とミランダ・シュラーズ・ベルリン自由大学教授の共同による投稿だ。シュラーズ氏は、ドイツで首相が設置した「より安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」の一員として、「2022年までに原発全廃」という方針の決定に参加した。投稿記事は、その要点と、そこから日本が学ぶべきことを端的に指摘している。以下は、その部分の引用である。
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① 原発の安全性は高くても,事故は起こりうる。
② 事故になれば,ほかのどんなエネルギー源よりも危険である。
③ 次世代に放射性廃棄物処理などを残すのは倫理的問題がある。
④ より安全なエネルギー源がある。
⑤ 温暖化問題もあるので,化石燃料の使用は解決策ではない。
⑥ 再生可能エネルギー普及とエネルギー効率の改善で段階的に原発ゼロに向かうことは,経済にも大きなチャンスになる。
ここから日本が学ぶべきことは、手段としての原子力の評価だ。発電という目的に対して,地震国での原発のコストとリスク,事故被害の大きさ,将来世代への責任などについて,他の発電手段との比較評価を行うことである。
その上でなにを選ぶかは,社会の倫理的価値判断に基づいて決めるべきことだ。
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政府は、エネルギー政策の決定にあたって、一部の専門家や経済界の意見を重視するのではなく、論点を明確にした上で幅広い国民的議論を促すべきだろう。そして、倫理的価値判断について国民の合意が形成されるまでは、現存する原発の稼働を最小限に抑えておくべきことはいうまでもない。
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