まあちゃんのエッセイです、読んでね!

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リーダーシップをとりたいおばさん

2012-11-27 09:15:19 | 自治会活動

【花植え作業でリーダーシップをとりたいおばさん】

●土づくりを終えて一か月後

  10月はじめは土づくりだった。昨年の花壇の枯れた花を取り除き、根っこ
を抜いたり切ったりして、次の花の植え付けに備えた。
スコップや鍬でかたくなった土を掘り起こしやわらかくした。カのいる作業だ
ったので参加していた数人のお父さんたちが活躍してくれた。「は一い、それじ
ゃ花壇ごとに腐葉土をまいてくださ一い」と、リーダーさんから声がかかり、
大きな袋にはいった腐葉土をばらばらと土の上にまいていく。枯れ葉などのく
さった臭いがして、小さいころ育った田舎の田んぼを思い出した。腐葉土と土
がよく混ぜ合わさるようにスコップでなんどもかきまぜ、その上にパラパラと
白い丸い肥料をまいて花壇の土づくりは終わった。

(花 1)

  あれからひと月、自治会の花壇担当者から緊急のチラシがポストに入ってい
た。「花の植え付け作業、ご協力のお願い。急な日程となりよろしくお願いしま
す」。「え一、11月の終わりって聞いてたのに、今週の土曜日だなんて!しか
し何とかしよう。共同作業は大事なことだから」と、私はスケジュールをあけ
て参加した。

(花 2)

●根切り虫の幼虫って土にいいのよ

 平坦になった花壇にスコップを入れると土がやわらかい。「いや一、こんなに
掘りやすいと思わなかったわ」と、声が聞こえる。「そうなんや、やっぱり腐葉
土や肥料を入れて手間ひまかけて準備したからやな」と、私も思いながら土掘
りをしていった。「チューリップの球根はまあるくなった方を外側にむけて入れ
てください。土は深く掘ってね。お願いしま一す」と指示がでる。穴掘りが浅
いと水やりをしたとき球根が土の上にでてしまい、赤くなって芽を出さなくな
ってしまう恐れがあるとのこと。 

 「今年は根切り虫が多いわね」と、年配のおばさんが言った。土を掘りおこ
すと2cmくらいの白い幼虫がま一るくなって眠っている。「あ、これ根切り虫
の幼虫なんですか」。私はこんな形の幼虫が小さい頃から大きらいで、ポンポン
と土の上にほりだしていた。「土にはいいんだって、こんな虫って息もするでし
ょう」「あ、そうなんですか。しらなかった。じゃ戻しといてあげようか」と、
私は掘り出した根切り虫の幼虫をまた土の中に戻しておいた。土にはいいけど、
成虫になったら根を切るんだから悪い虫になるんじゃないかと、思ったけど「ま、
いいか。冬さむいもんね。土のなかで眠ってるんだから」と、そのままにして
おいた。

(がんじきと紅葉したもみじの、 桜の葉っぱをかき集めました。)

●リーダーシップをとりたいおばさん

 こんな小さなグループ作業のなかでもリーダーシップをとりたい人がいるん
だな。けっこうそんな人の言い方ってきついのよね。

 「ほら、そこの花、もっと間隔あけないとダメじゃないの。しっかりしてよ」
と、パンジーを指してえらそうな口調で言ってきた。
 「せっかく私が穴掘りして植えたんだから、そんなことあんたに言われる筋
合いないわ」と言いたいところだが、そこはじっと我慢。
 「あ、そうですか。狭いですか?もう10cmほどこちら側にうつしましょう
か?」と従う返事で対応する。
 「そうそう、パンジーはこれからいっぱい葉っぱ広げて花咲かすからね」と、
急にやさしい声で説明してくれる。
 「なるほど、パンジーはそうなんですか」と、納得しながら私は植えかえた。
 「初めっからやさしく言ってくれればいいのに」と思ったけど、すぐに気が
ついた。

(パンジーの花苗を皆で植え付け作業)


 女の人は「このグループでは私が上に立ちたいわ」と思ったら、まずは上か
ら目線の言い方をしてそれが通じる相手か見定める。素直に従う相手とみたら、
「うん、これはくみしやすいぞ。じゃやさしく出てもだいじょうぶ」と思うの
か急にやさしくなる。「私が上で、あんたは下よ」という序列が定着すると満足
げな笑みが浮かんでくる。自治会でいろんな行事のお手伝いをしているうちに、
私はだんだんとわかってきた。多分女性には社会的にきちんとした立場や役職
がないことが多いから、リーダーシップを取りたい人は自分の勢いで取るしか
なくて、こういう言い方になるんだろうな。はじめは「なんでこんなえらそう
な言い方するんだろう」と、ムカついていた。しかしその心理がわかってから
は、腹がたたなくなった。私は行事の手順や花の植え付け作業がわからないの
で、素直に従う立場にまわることにしている。

●見渡すと色とりどりのパンジーの花

 花の植え付け作業は終わった。花壇を見渡すとそれぞれ担当者の性格がでて
いておもしろい。整然とならべて植えてある花壇、チューリップの上には黒い
さん箱がかぶせてある。チューリップを真ん中にパンジーがまあるく植えてあ
る花壇もある。私の植えた所はどうかなと遠くから見てみると「あれ、なんか
バラバラやな。それに黒いさん箱かぶせるの忘れてるし。いつも必死でやるん
だけど、どこか抜けてるからいつもドジ美ちゃんっていわれるんやな。無理も
ないな一、でも、まっいいか」と、いつものように受け流す。

 来年の春がきてこれだけの色とりどりのパンジーが咲き乱れ、そのあいだに
チューリップがすらっとした茎をのばして花を咲かせると見事だろうな。「一月
ほどしたら芽摘みの作業があります。みなさんご協力よろしくね」と、リーダ
ーさんの声が聞こえた。パンジーは茎や花がいっぱい増えて、ま引きしないと
大きなきれいな花が咲かないのだそうだ。それを芽摘みというらしい。

(花壇のコーナー、 パンジーの花苗、 黒いさん箱の下にはチューリップの球根が植えてあります。)

 水やりとか草取りとかこれからもまだまだ役目はまわってくるだろうけど、
自分で植えた花だからそれも楽しみになりそうだ。


自治会の会計さん奮闘記

2012-10-29 21:14:15 | 自治会活動

【マンション自治会の会計さん奮闘す】

 「は一い、じゃ後期の会計さんお願いしますね」というかけ声と一緒に手渡
された金庫。ブルーの20cm四方の小さな金庫だけど、お金がつまっているの
かずっしりと重い。10月から私がマンション自治会の会計をつとめるのだ。

 まず初めに取り組む仕事は、11月に行われるボーリング大会の経費を銀行か
ら引き出してくること。「なんでもないや、お金引き出すことくらい。おちゃの
こさいさいやわ」と思っていた。それがいざやってみると時間がかかって。「え
一っと、通帳に登録してある正式の名義はなんだっけ」過去のノートなどを
開いてさがしたり。引き出すお金15万円のうち、万札、5千円札、千円札、各
何枚づつにすればよいか。500円玉、100円玉、10円玉など各何個づつに
小分けすればいいか。合計金額が15万円になるようにするのに、朝の9時から
奮闘して2時間かかってやっとできた。「あれまー、こんなにかかってしまって。
よし、行くぞ」と地域の信用金庫めざして出かけていった。

 ウインドウには『ミズノのバッグをお誕生日にプレゼントします』と大きく
書いてある。え、銀行がこんな宣伝してるの?と思ってよくみると、「公的年金
をわが金庫でお受け取りのお客様へ」とあったので、ああそうか、年金を受け
取る人への誘いだとわかった。それにしてはどこかうす汚れた感じのバッグが
二つ、へしゃげて長い間おかれっぱなしみたいだった。

 

 なかに入ると「振り込め詐欺撲滅運動」のたすきをかけたおじさんが案内し
てくれる。しばらく椅子にすわっていると、「そんで退職してしばらくはどうす
るん」と大きな声で誰かと話をしている。さっきのフロアー係りのおじさん
の声だ。知人がやってきたのかな。勤務中にそんな話していいんかよ 

どれもこれもが田舎っぽいなー」と私はつぶやきながら待っていた。

 「○○マンション自治会様」と呼ばれていってみると、窓口の女性が「あの
ー、51枚から手数料がかかるんですけど」と言う。「はあ手数料」私は
おどろいた。「そんなこと前任者から聞いてなかったぞ」。細かいお金をぜん
ぶあわせて50枚(個)までなら無料、51枚からは手数料がかかるというのだ。
知らなかった私が朝から2時間もかけて札数個数を念入りに決めてきたこと
が無に帰すのか。それ以上に私は自治会のお金が出ることについては敏感なんだ。
ほんの数10円でも出金は明記しなくてはならない。来年3月末に行われるマン
ションの総会で会計報告がある。「これはなんですか支出をおさえる工夫はさ
れなかったんですか」って、数字に鋭いおばさまから突き上げられるかもな
んだ。なかば私はパニクっていた。「あのー、どうしたらいいですかとにかく
手数料がかからないようにしてください」と叫ぶように言うと、窓口さんは
笑いながら「大変ですね、こちらでやりましょうか」って言ってくれた。「あ
りがとう。お願いしま一す、ヤレヤレ・・・」

 汗いっぱいかいてお金15万円を受け取って出てくると見なれた風景が待って
いた。不動産屋さんといつも通うクリーニングやさん。その隣にある公園から
は金木犀の香りがながれてくる。「あー、会計ってこんなに大変な役割だったん
だ」。一仕事終えた私は大きく深呼吸をした。見上げた空にはすじ雲が勢いよ
くサーッサーッと流れている。もうすぐお昼だな、おなかが急にへってきたぞ。

 


ガン君も中学生に成長したのね!

2012-09-25 21:21:46 | 甲状腺ガン

 

■甲状腺がん検診の前夜

  昨晩は眠れませんでした。夜は10時に寝たというのに、寝付いたのは
3時ごろ。1時間おきに目が覚めてしまって。

「がんが大きくなって、気管支に寄ってきましたね。とった方がいいかも。
次回決めましょう」

という前回検診でのドクターの声が、目を閉じると頭のなかをクルクル回
っていました。

 朝5時におきてテレビのスイッチをいれると、チャイコフスキーの6番
「悲槍」が流れてきます。「さすが今朝ばかりは重ーい気分になるなー。
ちょっと他のチャンネルにしようか・・・」と思いながら、いつしかメロディ
に聞き入っていました。「あ、こんなことしてたら遅れてしまう。早く用意
しなくっちゃ」と、あわてて起きあがりました。

■甲状腺の初期はシコリ感がある

 

 一歩一歩重い足取りでモダン寺の坂をのぼります。がんは甲状腺の
上に二つできています。今は7ミリと5ミリですが、そのどちらかが10ミ
リを超えたら手術することになっています。

 甲状腺の症状としては痛くもかゆくもありません。ただ初期のうちはシ
コリ感がありました。だから飲み込むのがちょっと違和感があって、
「ひょっとして私、食道ガンかしら」と何度も思ったことを覚えています。
食道ガンにしては、食事がスムーズにできるので、「やっぱり違うんだ」
と思ったり、「それじゃこのシコリはなんなんだろう?」と疑問をもったり
しました。

 2006年に受けた人間ドックの一つに含まれていた「簡易脳ドック」で
みつかったんです。長いあいだ不思議に思っていた症状がガンだとわ
かったときのショックは忘れられません。晴天の霞震、死の恐布・・・に
打ちのめされたのを思い出します。しかしその後のドクターの専門的な
説明で、これはガンのなかでも一番たちの良いおとなしいガンであるこ
とがわかってきました。

■前回の「バクダン診断」にビクビクして

まず血液検査と超音波検査。のど全体にぬるぬるしたゼリーをまんべ
んなく塗ります。平たいへらみたいな機械をのどにすべらせるようにあて
ていきます。こちらは首を伸ばしてじーっとしていればいいので、検診と
はいえとても楽です。

 半年ごとの検診も今年で6年目になるので、過去12回超音波検査を
受けてきました。発見時のガンの大きさは5ミリと2ミリでした。それが今
では「7ミリと5ミリ」。「ガン君も中学生くらいに成長したのね。お願いだ
からずーっとそれくらいでいてちょうだいよ」と、私はいつも言い聞かせ
ているのですが。

 なんでこんなに手術したくないかというと、「仕事をやめたくないんで
す」「卓球の練習と試合を半年も休みたくないんです」。
手術したらこの二つができなくなります。

■モニターに映し出された私のガン君たち

プルルルルーと呼び振動があり、診察室に入ります。半年ごとにお会
いする先生は少しスリムになっておられました。

 先生の机上のモニターには、ほんの1時間前に検査した結果がすで
に映しだされています。血管や気管支に食道、真ん中には甲状腺があ
ります。そこに白<まあるいものが二つ、はっきりとわかります。これが
6年にもわたり私ののどに共生してきたガン君たちです。

 「あ一、もうダメだ。手術って言われるに決まっている!」。目の前に映
像を突きつけられては、もう私はまな板の上の鯉の心境です。そんな私
の気持ちを察してか、先生のお顔には笑顔が・・・「あ、ひょっとして大
丈夫かも」。やはり「藤原さん、7ミリと5ミリです。前回と同じです。大きく
なっていません。よかったですね」と、天からの声が。

 「あーよかった、手術しなくてもすんだんだ。やれやれ」と、一安心の
気持ちを抱えて診察室をあとにしました。いかついお顔の先生ですが、
このときばかりは福禄寿の神様のようなあたたかいお顔に見えました。


極楽トンボなドジ美ちゃん!

2012-09-09 15:58:34 | 自治会活動
 
【極楽トンボなドジ美ちゃん!】 
 
●きれいな花壇って誰が世話してるん
   だろう?
 
 今のマンションに引っ越して10年に
なります。
一番気に入ったのが真横にある円形
花壇です。
引っ越したのが冬だったので、その花
壇に色とりどりの花が咲くと知ったの
は2~3か月後のことでしたが。
 
 季節のなかで一番好きなのが春。
玄関を出て見上げると桜の花が雲の
ようにひろがっています。 
足元にはチューリップやパンジー、
サクラソウどがきれいに植えられ、
色とりどりの絨毯のよう。花壇の美し
さに見とれ、私は春から初夏にかけ
て、毎朝夢見ごこちで出勤していま
した。
 
 ある日ふと「こんなにきれいな花壇、
誰が手入れしてるんだろう?」と、
気になりだしました。
気をつけて見ていると、5~6人の作
業服を着た人たちが水をやったり花
を植えかえたり・・・
夕方には草取りをしたり、
落ち葉を集めたりしています。
「あ、やっぱり手入れする人がいる
んだ。でもあの人たちはどこの人?
 市役所のシルバー人材センターか
らくる人たちかな。ま、私には関係な
いか。 でもこんな感動的な景色をシ
ーズンごとに見せてもらって、感謝
感激だな・・・ 市民税のなかに含ま
れているから、ま、いいか」
 
 極楽トンボの私が、この花壇は地
域の人たちの手で守られていると知
ったのは、
今年になって自活合役員の当番が
まわってきたときでした。
 
 
●自治会役員の資料のなかに花壇の
 当番表が
 
 今年我が家は自治会の役員をする
ことになりました。有体にいえば当番
が回ってきたのです。
 「え、花壇の手入れ当番表!?
 これって何の当番ですか?」
「あら、エントランスの横にあるで
しょ。 あの花壇のことよ」 
「え、当番って、何するの?」 
「水をやったり花を植えかえたり
するのよ」
「私たちが?あれって市役所とか
シルバー人材センターの人たちが
やってくださってるんじゃないん
ですか?」 
「何言ってるの藤原さん、私たちが
するのよ。地域の人たちと共同で、
当番決めて順番にね」
 ドヒャー、知らなかった!自治会
役員の人たちが順番に世話をして
たなんて。
住んで十年になるのに・・・私って
なんて極楽トンボなんだろう。
それ超えて、「私ってほんとうにボ
ンヤリよね。
 小さい頃からドジ美ちゃんって
よくからかわれてたけど、
〇十年たっても変わってないのね」
 
● "がんじき" を持って落ち葉あつめ
 
 とうとう当番の日がやってきました
ジーパンをはいて、長袖の作業着を着て、
軍手をはめました。そして手にしたのが
"がんじき" でした。 
熊の手みたいに大きな竹の手のついた
道具をわたされて「は一い、一班さんは
これで落ち葉をかき集めてください」 
と班長さんの声が響きます。 
芝生の上に散らばっている落ち葉をガリ
ガリとかき集めて、ゴミ袋に入れて。
「そういえば小さい頃こんなことやって
たな一。庭の落ち葉を集めてお風呂を
沸かすところまで持って行って。
長い間すっかり忘れてたな一」。
毎日仕事に追われる日々になって、
土のにおいのする作業なんてすっかり
思い出のかなたに行ってしまっていました。
 
●蝉の亡骸があちこちにちらばっていた
 
 かき集めた落ち葉のなかに蝉の亡骸
がころがっていました。
取り上げてみるとぱっくりと口を開けています。
のぞいて見ると人間の声帯によく似ています。
まっくろになってしまった蝉、半分に
ちぎれた蝉。がんじきの指に五匹ほど
かき集められてきました。 
みんな集めて木の根っこに持って行って
やりました。
「蝉ちゃんたち、ごくろうさんでした。
仲よくお話しながら成仏するんだよ」
と、声をかけて見送ってやりました。
 
  暑い夏の自治会当番の仕事も、
こうして一つ一つなんとか無事に終わ
てゆきます。

おばさんはどこへ?

2012-08-15 17:01:20 | 売店

20年続いた売店が閉店に…おばさんはどこへ?

●あれ、売店の様子がおかしいな

「あ一あ、やっぱりおしまいやったんや」閉じられた売店のドアをみて、心のなかをチョッピリさびしさがよぎった。
いつもエネルギッシュにせかせかと動いていたおばさん。
大きな声で「ありがとう」とだれにでも声をかけていたおばさん。
そのおばさんの姿も声も消えてしまっていた。ここは地下鉄梅田駅ホームの上。
私が仕事で毎日乗り換える駅だ。

 前日仕事帰りにみたとき、売店の品物がやけに少なくなっていた。新聞や週刊誌が補充されていず、あと5~6部でおしまいっていう状態だった。「あれ、閉店かな? いやそんなことない。だってこの売店よく売れてるもの。棚卸なんやわ」と私は軽く考え、乗り換える阪急電車のほうにむかった。

●売店の新聞や週刊誌の見出しが物知りのソース

 この売店のおばさんとはもう20年近くのおつきあい。とはいっても話をしたことは一度もない。目と目とかわすだけの間柄にすぎない。
私は毎朝このホームに着くと電車がくるまで売店の店先に並べられた新聞や週刊誌をながめていた。表紙を楽しんだり、見出しをみたりしてその日のトピックスや芸能ネタを仕入れていた。読まなくてもなんとなくわかる気分になるから不思議だった。それがけっこう「藤原さんで忙しいのによく芸能人のこと知ってるわね」という称賛? の言葉をもらえるソースになっていたのだ。

 あんまり毎日私が長いあいだ見出しを眺めているのに気づいて、おばさんは良い気がしなかったんだろう。ある日新聞や週刊誌のスタンドが斜めに向きを変えて置かれていて、私のほうからは読みづらくなっていた。「あ、私がいつもただで見出しを読んでるからやろか。悪いことしたな、ごめんねおばさん」と、心のなかであやまった。それからあまり売店のほうを見ないようにしていた。

そして

 新聞や週刊誌それにガムなんかほしいときは、必ずその売店で買うようにした。
「ありがとう。いつも買ってくれて」とおばさんは、一段と大きな声で言ってくれた。私は「あ一、お返しができたな」と、ちょっぴりほっとして買った週刊誌を電車のなかで読んでいた。

 いつの間にか新聞や週刊誌が並べてあるスタンドは元の見やすい角度に戻されていた。

●毎朝、目と目でかわすお礼の言葉

 「おばさん、いつもみせてくれてありがとう」。私は毎朝売店のほうをチラッとみて目でお礼をいった。するとおばさんも「いいよ、どうぞ読んでください」。そんな言葉を目で返してくれていた。

 それがもう終わりになってしまった。朝階段を下りても閉ざされた売店しか待っていない。元気なおばさんの声はもう聞こえない。

 おばさん、どこへ行ったのかな。また別の売店でお仕事見つかってるといいけど。長い間、新聞や週刊誌を見せてくれてありがとう。


夏祭り

2012-07-26 21:35:17 | 夏祭り

【自治会役員として地域のお祭り準備に参加して】

 お祭りは毎年この時期に開かれる。それが今年のお祭りは、私にとってまた違っ
た意味を持つものになった。

■はじめは気が重かった「あ一あ、準備だなんて、しんどいよ」

 小学校にやぐらを組んでお祭りの準備をする役にあたった。朝8時にぞうきんを
持って集合。

 炎天下で熱中症にかからないようにしなくては。帽子を二つもかぶり、ひんやり
タオルを首にまいて、スポーツドリンクを腰にぶら下げ準備万端。

 私の役割は「やぐら立てと飾り付け作業」と書いてある。「えらいカのいるとこ
ろやな、このご老体になにをせよとおおせなんや」と、つぶやきながら小学校の校
庭に自転車でかけつけた。もうすでに30名ほどの老若男女が集まっている。

 見るとやぐらは運動場のまん中に、すでに組まれて形ができあがっていた。女性
軍の半数はどうやらその柱に赤白の布を巻き付けていくらしい。あとの半数は提灯
つけ。私はこちらのほうを手伝うことになった。

■提灯をつるす電線を延ばしていく

 グルグル巻きにまとめられた電線がどさっとおかれた。みるとソケットが等間隔
につけてある。どうやらここに電球を取り付けていくようだ。

 「は一い、これを運動場いっぱいにノバしてくださーい」と、リーダーさんのか
け声から作業はスタートした。「意外に重いわ、この線。ちょっと持ちあがらない
よ」「いっしょにもとうか」、「あ、お願い、助かるわ。よ一しいくわよ。あの藤
棚の下までノバすんですって」 ヨイショヨイショ…

 「ごくろさんやな、重かったやろ」と、藤棚の下にいたおじさんが笑顔で電線の
はしを受け取ってくれた。トンカチトンカチとおじさんの打ち込む杭の音が心地よ
くひびいている。やぐらからのびた電線は、運動場のはしにある藤棚の下にこう
してしっかりと杭に打ち付けられた。

■提灯ってなかに電球が入ってるのね

 電球を電線についている一つ一つのソケットにはめていく。作業は簡単だけど、
けっこう数があるので時間がかかる。

 汗をかきながら「この炎天下、続けて作業してるとやぱいぞ。ちょっと日陰で休
もうか」と、つぶやきながら現場を離れて校舎のかげに避難した。するとうちの地
区会長さんも休んでいて、思わず顔をみあわせてにっこり。「うわーきれいねー!」
 ふと見ると地べたに赤い花が運動場いっぱいに咲いているような、そんな光景が
目の前に広がっていた。

 「60wの電球は使わないよ。40wだけねー!」と、リーダーさんの声。
私は「そっか、最近の節電事情がこんなところにも影響してるのか」と、へんなと
ころに感心してしまった。電球をネジリながらソケットにはめていき、そこへ赤白
の提灯をかぶせ針金でしっかり留めていく。

 今日はじめて会った小学校区内の人たちだけど、こうして助け合って作業してい
ると、いつの間にか仲良しになっていた。

■提灯つけが終わって、ウワーツと歓声が

 提灯がぜんぶつけられて、「そーれ、いくぞー」という男性軍のかけ声とともに、
赤い花はいっせいに引き上げられていった。

 やぐらを中心に八方に持ち上げられた赤白の提灯。「ウワーツ、きれいなー!」
とあちこちから歓声があがっている。
盆踊りや祭りでよく見られる光景だが、自分たちで準備したやぐらと提灯は又格別
の感動があるものだ。

 ここへ引っ越してきて10年になるけど、一度もこんな地域の行事に参加して
こなかったなあ。今夜の盆踊りはみんな浴衣きて楽しいひとときを過ごしてくれる
かな。今まで「仕事は楽しい、地域行事はめんどうなもの」と、思い込んでいた。
「食わずぎらい」だったのかな、私は。

■自治会役員になってよかったな

 「はーい、みんな暑い中ご苦労様です。冷たい飲み物ありますよ。一本づつおと
りくださーい」と自治会長さんの声がひびきます。氷がいっぱい入れられた大きな
バケツのなかには、ペットボトルのお茶がプカプカ浮いています。ゴクンゴクン飲
むと、そのお茶のおいしかったこと!。

 氷のかけらを二つもらってハンカチにくるんで帽子の中に押し込んでみた。ひん
やりとした頭に心地よさを感じながら、後半の作業についた。

 空をみあげながらしみじみと今年は自治会役員になってよかったなー。10年間
仕事が忙しいことを理由に参加してこなかったお祭りに、今年は準備委員として参
加した。

    


>■ストレスをたため込んでいませんか?

2012-06-24 23:03:36 | ストレス

■ストレスをたため込んでいませんか


【目に見えるストレスは出しやすい】

 

  「あ一、疲れた、もうこの仕事はいつ終わるんだ!(イライラ)
そうか次の日曜日はゴルフだったなあ。しんぼうしんぼう」
と言い聞かせながら、ストレスを乗り切るお父さん。気の合う仲
間との丸一日のプレーを楽しみにしながら自分を励ますお父さん
です。
 「私仕事でイライラした時は、帰りに泳いで帰るの。スカツと
してみんな忘れてしまう」と由貴さん。ジムの会員になってから
スイミングはいつでも寄っていけるし一人で思いっきりできるの
で、すっかりストレス解消になっています。
 最近は男性も女性もストレスを解消することに積極的で、自分
にあった方法を持っている人が多いように思えます。

 目に見えるストレスは、大きくても自覚もできるし対策もとり
やすいですね。問題は「え、そんなことがストレスになるの?!」
と思えるような小さなストレスです。目に見えないだけに、
ブーブー文句いうのもおこがましいし、騒ぐのも気がひけるし、
「ま、いいか」と流してしまいがちです。こんなストレスを
日々ため込んでいくと・・・。
           

  
【目に見えないストレスはたまるとこわーい】

●テレビがこわれチックがでだした卓也君(小一)


 こんな話しを聞きました。卓球仲間のお母さんからです。
「ね一、うちの卓也がね、目をクシャッとさせたり頬をヒクヒク
させたりするのよ。だいじょうぶかしら」 「なんでそんなこ
とするの?」と卓也君に聞いても「え一、なにそれ 僕そんなこ
としてないよ」という返事しか返ってきません。自分がそんなこ
としてるとは気がついていないようです。
 「う一ん、チックみたいね。ひょっとしてお母さんが卓球しす
ぎで、僕のことかまってくれないっていう欲求不満がたまってる
ことない? 小さい子によくあることなんだけど」。お母さんはこ
れを聞いてうなだれました。「好きな卓球のやりすぎで・・・、
私のせいで卓也が・・・」と思ったのでしょう。「いや、ちょっ
と聞いてみただけよ。そんなにしょんぼりしないで。それより家
庭のなかでなにか変化はなかった? 卓也君に影響を及ぼすよう
な。家族のなかで誰か病気になったとか、はでな夫婦げんかした
とか。卓也君、なにか言いたいことがあって、でも言えない、
言っても仕方ないって思いこんでることってないかしら」

 話しを聞いていくとお母さんの卓球しすぎではなく、つい一月
前に大好きなテレビがこわれたということがありました。「次の
日曜日お父さんと買いに行こうね」と約束したのですが、お父さ
んの都合で来週に伸びてしまいました。それを聞いて卓也君が
「え一、テレビ買うののびるの しょうがないなー」と言いなが
ら目をパチパチさせたので、「あれ、へんなことするな?」とお
母さんは首をかしげました。それから間もなく目をクシャッとさ
せるようになったそうです。
日を追うごとに回数が増え、クシャの仕方がひどくなってきます。
クシャックシャ、パチパチを繰り返し、そのあとに頬をヒクヒク。
「これはいけない。頬まで動かし出したわ。でもどうしたらいい
のかしら」。途方にくれたお母さんは、卓球の練習の合間に話
しだしたということです。


            
「八八ーン、テレビかもしれないわね」話しを聞いた私はこう
思いました。「え、テレビ テレビの故障と卓也のチックがど
んな関係があるの」。 お母さんは半信半疑でしたが、「お父さ
んに相談して早くなんとかするわ」ともういても立ってもいられ
ない様子です。 それでも真っ暗なトンネルのなかで灯りが見えて
きたような表情になりました。

 それから次週の練習日、お母さんはうれしそうにこう言いまし
た。「ありがとう、あれからお父さんに言ってね、すぐにテレビ
を買いに行ったのよ。もう卓也のうれしそうな顔ったら。テレビ
の周りを飛び跳ねてるの。こんなにガマンしてたんだねって、主
人と顔を見合わせてね。テレビがきてまだ三日したたってないの
に、卓也が目をクシャッとか頬をヒクヒクとかさせなくなった
の。もうホツとしたわ。あなたの言うようにやっぱりテレビだっ
たのね」。

 「よかった、チックが早い段階でおさまってよかった」と私は
思いました。卓也君はまだ小学一年生だから、自分にかかるスト
レスをはかれなかったのでしょう。それだけに口に出して言えな
くて、ため込んでいたと思われます。
 小さな子どもにとってのテレビはゲームやドラマなどが大きな
楽しみであり、友だちとのコミュニケーションの命綱だったりす
ることがよくあります。「大人からみると小さなストレスでも、
子どもにとっては大きなストレスになることがある」というコメ
ントを子育ての本で読んだことがありますが、卓也君のことはそ
の一例かなと思いました。
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●質問いっぱいのお母さん、もうしんどい

 お母さん、次のような小さな質問をくせのようにしていませんか?
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*「腹筋してるのね。あと何回やるの」「そんなことわから
 ないよもうじゃましないでよ」。
*「アイスクリーム、買いにいく」「いい、今はほしくない。
 自分で行ったら?」
*「おばあちゃんち、行くけどどうする」「なんでいちいち
 私をさそうの」
*「ベル(飼い犬)のシャンプー、いつ連れていこう」「なん
 で私に聞くの、自分で決めたらいいじゃない」
*「出かけるの 何時くらいに帰ってくる?」「わからない」
*「遠くまで行くの」「・・うーん」
*「だれといっしょなの どこへ行くの」「・・・」
*「途中までいっしょに行こうか」「ほっといてよ」
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 イエスかノーで答えられる質問はまだいいのです。が、なにか
答えをださないといけない質問は子どもにとってはしんどくてイ
ライラしてしまうことが多いようです。

 「うるさい、ほっといて」と言える子どもはまだストレスとし
て残らないのでいいでしょう。 小さい子に多いのですが、「お母
さんの聞くことにはちゃんと答えないといけない」と思っている
まじめな良い子にはけっこうストレスになります。実際に元気が
なくなって、あくる朝起きてこれない、学校行きたくない、と言
い出したりする子もいます。

 
            
 小さな質問をちょこちょこというのは、子どもの芽を摘んでし
まうおそれがあると聞きますが、けっこうストレスになるんです
よね。
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●主人ったら、私の言うことみんな否定形で返してくるの

 「明日は晴れるんですって」「でもまだ雨残るんじゃないか」
 「やっと梅雨明けかもね」「あと一週間続くって」
 「このスカーフ、似合ってるでしょ」「ちょっと子どもっぽいな」
 ご主人との会話で「私の言うことみんな否定形で返してくる
の。もうがまんできない!」。友だちにこんなことを言う人がい
ます。ささいなことばかりで言い返すのも大人げないし。かと
いって文句も言わないとイラつくし。

 
 
 「まいいか、私がガマンしてればそれでまるくおさまることだ
から」と、その人はなにも言わず自分の中に収めてきました。
 こんな小さなストレスがたまりにたまったからか、Aさんは不
眠症になってしまいました。夫がなにか話しかけてくると、腹痛
まで出だしたりするそうです。「あ一あ、これって夫婦ストレス
ですよね」と、Aさんはぐちぐち言うのですが。「こんなささい
なことにいちいち反論してるなんて、みっともないしねー。私の
心が狭いからかしら。悪気がないってわかってるんだけどねー。
もっと大きな心をもって主人を包み込んであげられるといいんだ
けどねー」。

 だけどもう一人の自分が叫んでいるそうです。「そんなこと
できるもんですか。腹立たしいのは事実なんだから」


こわーいお話

2012-06-17 12:57:07 | こわいい話
 今朝地下鉄のホームで火災事故がありました。

 朝の9:05分に発火し、電車は全面ストップ。乗っていた人た
ちはおろされ安全な場所に避難誘導されたそうです。

 開通したのは夕方の4時30分。ちょうど私の出勤から退社ま
でのあいだ、電車はストップじていたことになります。

 仕事帰り、ホームに降りたとたん化学成分が燃えたようなつ一
んと鼻をつくような臭い。「うわーっ、これはなに?!」一瞬わ
けわからず鼻を抑えました。「焦げ臭い、きな臭い・・息苦し
い・・早く地上に出なければ何かたいへんなことがおきそう!」
不安感がわいてきました。

 「そうだ、今朝9:05分ごろ駅ホーム上で火災があったん
だ。'すっかり忘れてた。私が電車に乗ったのは、9時ごろ。とす
ると、間髪で難を逃れたことになるなー。天井や壁はうす黒く
すすで汚れてるし、目を開けてるとショボショボしてきて痛さを
感じます。巻き込まれた人たちは恐がっただろうな。もう9時間
もたっているのにこんな状態だなんて。オーこわ、オーこわ」

  

 あとでわかったことですが、階段の下にある三角倉庫が燃えた
らしいです。掃除道具とか集めたゴミなんかを入れておく所。そ
こから出火!! 一番西の階段下にある倉庫から。それを知って
ゾッとしました。私が毎朝降りる階段です。あと一電車遅かった
ら火災発生のベルがけたたましく鳴って、電車はストップ、私も
巻き込まれていたにちがいありません。煙をすって救急車で病院
へ運ばれた人も何人かいたといいます。


 ふと我にかえって辺りを見回すと、やけに背中をまるめた掃除
のおじさんたちがホームの上を走りまわっているし、ガードマン
の人たちもあちこち立っていて緊張感がみなぎっています。その
おじさんたちの誰かが、タバコの火を消しそこねたのが原因らし
いとわかったのは、夕刊をみてのことでしたが。



 間髪で火災にまきこまれずに済んだ運のよさ、よかった、ほ
んとうによかった。ボケーッとした安心に包まれた日常のなか
で、突然何が起きるかわからない恐さを体験しました。


『災害は忘れる間もなくやってくる』。普段から防災準備をおこ
たらないようにと以前は言われていました。が、このごろは『災
害は忘れる間もなくやってくる』ような気がします。

 こわいなー、首都直下型地震!

『これでいいのか!』

2012-06-15 23:38:50 | これでいいのか!
『これでいいのか!』私が体験した三つのできごと 

先日悲しいようなびっくりするような体験を三つ続けてしました。
一つひとつはまったく別のできごとなんですが、この三つはどこか
でつながっているような気がしてなりません。


◆体験1:久しぶりに神戸で大学時代の友人雅代に会いました。

十年ぶりかな・・・雅代の結婚式以来です。「まあ雅ちゃん、相変
わらずきれいね。今どうしてるの」と、私はさりげなく聞きました。
そのとき雅代の顔がちょっと曇りました。「・・・じつわね・・・
私離婚したの。もう三年になるわ」「え一、離婚!なんで、あなた
が離婚だなんて・・・信じられないわ」「うん、みんなそう言う
・・・彼のDVなの。こんなこと人に言えないでしょう」「それで
美代ちゃん(娘〕はどうしたの?」「うん、私がひきとってる。
でもたいへんだったわ。 まだ赤ちゃんだったし。向こうは渡さな
いって言い張って。とうとう裁判になってしまって。二年もかかっ
たのよ。娘をこちらにひきとれるまで」。「DV・・・なの」と、
私は息をのみました。「まさか、あのかしこそうでやさしそうな彼
が、DVだなんて」。

 雅代の結婚式の様子が思い出されます。一流大学を優秀な成績で
卒業、一流の職場に就職。結婚してすぐに海外勤務について。
みんなの羨望のまなざしだった雅代。幸せいっぱいだった雅代の表
情をいまでも忘れられません。それがDVで離婚だなんて、私は信
じられませんでした。

 「体のあちこちにあざができてね・・・警察に何度もかけこんだの。
こわくてこわくてとうとう我慢できず8か月の美代をつれて実家に
戻ったの」「よく美代ちゃんがこちらにとれたね」「なんとかね、
2年かかった。'あちらは法律の知識ばっちりでしょ。『僕はこの子
の父親だぞ。経済カもあるし、子育てにはおふくろが全面的に協力
するって言ってるし。子どもはこっちのものだ』ってやってくるし。
私だって絶対にわたさないって必死で対抗して。

 お互いに弁護士をつけて、最後に決め手になったのは、私が青あざ
赤あざでなんども警察にかけこんでいた事実だったの。
おかげで美代は私の手にもどってきたわ。でもなんでこんなめにあ
わなくっちゃならないの」。
彼女の目から涙がぽろぽろとこぼれました。

 有名・・大学の法学部出身で、エリート官僚で・・・彼のお母さ
んにとっては自慢の息子さんであるはずなのに、その彼がね一。
自分の思うようにならないと怒狂い、妻にDVふるっていたなんて
。背筋がさむ一くなってきました。



◆体験2:京都小旅行からの帰りの電車のなかで

 私の前の席に幼稚園か小学一年生くらいの男の子とお母さんが
座りました。男の子はすぐに窓にしがみつくように外の景色を眺
めています。「思いだすなあ。私もこんなころ電車に乗るのが楽
しみだったな。家や畑があとへあとへと飛んで行くのがめずらし
くて。そんな童謡もあったっけ。この子あの歌知ってるかな?」
と、私は男の子のようすを見ながらぼんやりと昔をなつかしんで
いました。

 そのときお母さんの声がしました。「卓也君、はい、これ」。
座るなりお母さんが取り出したのは、問題集のようでした。
「答え書いといてね。あとでみてあげるから」。「・・・」
男の子は黙ってスーッと手を出して受けとりました。
「え一と、15になるのは・・10と5、それに10たしたら
・・」「シー声ださないのよ」「ママー、この答え25やろ」
と、男の子はお母さんの顔を見上げて問いかけます。「ママは
あとでね、自分でやりなさい」。あ一あ、ママにふられちゃった。

 男の子はしばらくして大きなあくび。「180円のお菓子、
140円の.あめと・・・90円のキャラメルとではお菓子の代金
は合計いくらでしょう?」。男の子はたいくつそう。またあくびが
でました。とうとう男の子は上半身をくねらせ、また窓の外をちら
ちらと横目で見始めました。家や工場が飛ぶように後ろへ後ろへ飛
んでいきます。その間から海が見えてきました。面白いのか首を伸
ばして追っかけるように見ています。「この景色をみたいんだろう
な、計算するよりも。電車の中からみる景色はぜんぜん違う面白さ
があるものね」と、私は心のなかで語りかけました。

 その時またお母さんの声がしました。「ほらちゃんと前向いて座
りなさい! できたところ見せてごらん。卓也君、もっときれいに
書かないとダメでしょう」。男の子は前に向き直りながら私のほう
をちらっと見上げてバツの悪そうな顔つきをしました。「お母さん
に叱られたから、自分が悪いことしたと思ったのかしら。
そんなことないよ。あなたはちっとも悪くないよ。窓の外の景色、
もっと見てたいよね。だってまだ幼稚園(小一?)だもんね」。
私は心の声で卓也君に語りかけながら、笑顔を返してあげました。



◆体験3:仕事がえりの地下鉄で、恐怖の「ヒーッ!」という母親の叫び

 ドヤドヤーッと今にも発車しそうな電車の入口から母親と男の子
が駆け込んできました。「はやく席とって、座るのよあんたは」と、
母親は息子にむかって叫びました。びっくりして見ていると、お母
さんのほうは私の隣があいているのを見つけて猛然とダッシュ。

 ドカッと座ると「あ一よかった」とたくさんの荷物を膝の上におい
て汗をふきはじめました。大きなボストンバックにハンドバック、
それにリュックサックもあります。私の膝にも荷物がせりだしてき
ました。

「あの一、荷物が・・・」と、言いたいのを抑えていると、お母さ
んが斜め前にたっている男の子に呼びかけました。
「あんた、なんで席とらなかったのよ。座らないとダメじゃない」
「いいよここで」「よくはないでしょ。すわらないと疲れるじゃない」
「だいじょうぶ」「だいじょうぶなわけないでしょ。はい、これチーズ。
食べて」と白い物を手渡しています。二人のあいだで喧嘩でもはじま
るんじゃないかと、ヒヤヒヤしながら息をつめていると、お母さんが
また話始めました。「英語や数学の授業があるんだから。今度の日曜
日は模試テストがあるんだもん。あんたそんなことでどうするの? 

さっさと席とれば座れたのに・・ヒーッ!」突然悲鳴に近いお母さんの声。
周りにいる人たちは一斉に身を乗り出してこちらを見つめています。
そりゃあの悲鳴には誰だってびっくりするよね。どうやら息子は中学三
年生で、受験生(有名私立高校?)のようです。あくまでも推測ですが。



 私は自分の膝の上にボストンバッグが半分以上せりだしていることも
忘れて思わずお母さんと男の子の顔を交互に見てしまいました。
するとお母さんが抱え込んでいるリュックサックは男の子の荷物か。
「受験生の息子にこんな思い物を持たせては、テストの点数にひびくわ」
と、思っているのかもしれません。なかには男の子が勉強する本や参考
書が入っているのでしょう。お母さんはハンドバックよりもしっかりと
抱え込んでいました。

 「どうなってるのかしら、このお母さんは」。
そう思いながら降りる駅についたので、私は電車をあとにしました。



                    (写真はイメージ図です)

【やせた女性は美しい?】

2012-06-15 23:28:13 | 拒食症
【やせた女性は美しい?】


●やせすぎたモデルはノー

 先月朝日新聞で,「やせすぎたモデルは使わない」とヴォーグ誌
が宣言したという記事を目にしました。(2012.05,27朝日天声人語)
ヴォーグ誌は世界的に有名な女性のファッション誌で元祖的な存在
です。


 世界を席巻する「女性のやせた体型は美しい」とする長年の風
潮に、一石を投じる内容だけに注目を集めているそうです。

●ダイエットして、私もやせたい!

 若い女性の多くはきれいなモデルさんの姿を写真や週刊誌で見
るにつけ「私もこんなスマートな体になりたいわ」と思い、
「よーし、ダイエットしてなってやるぞ!」と決心したりします。


 自分が考えたカロリーの低い食事をすることで、体重は確実に
減ってきます。55キロだったのが54、53、52キロに。顔もほっ
そりしてきたし、なによりもウエストがひきしまって今まで着れ
なかったワンピースやスカートが入るんです。その手応えがう
れしくて「このあたりでいいか」と思うのですが、ストップがか
からなくなり、だんだん「やせ礼賛」にのめり込んでいくようで
す。



●売っている洋服が入らなくてがっかり

 私自身の感想を言わせてもらえば、いつのころからかデパート
で売られている洋服などが入らなくなりました。「お似合いです
よ」と店員にすすめられ、「ヨッコラセ!」と着てみるのですが、
決まってウエストまわりでアウトです。「色もデザインもいいの
にな一」とあきらめきれず横目で眺めながら、売場をあとにする
という体験を重ねているこのごろです。

 「太ってしまったんだわ。このお腹の肉をなんとかしなくて
は」と、自分の体型を恨んでいました。しかし最近気がついたの
ですが、「いやまてよ、最近の洋服って極端にスマートに作られ
てない? これじゃ若い人たちがなんとかやせなくてはと必死でダ
イエットするのもむりないな」と、思い初めていました。

●「うちの子、ひょっとして拒食症?」

 やせに関する私のお笑い体験とは違って、もっと深刻な相談を
うけました。卓球仲間の一人である高田さん(仮名)が娘さんの
ことで相談にやってきました。長女で高校年生の咲希さんの
ことです。「このごろおかしいのよ。やけに食べ物のカロリーに
こだわりだしてね、『あっさりしたおかずにしてね、酢の物と
か』って言うの。『わかめやしらす干しでないと私食べないよ』
って言ったり。食べるのは低カロリーの物ばっかり。それでね
『やせたい、やせたい』って口癖みたいにいうのよ」と高田さ
んは心配そうです。

 「そりゃ高一といえば思春期真っ直中だし、スマートできれい
になりたいつて思う年頃よ。ダイエットするなんてめずらしいこ
とじゃないわよ」と、私はやんわり返しました。

 「うん、私も初めはそう思って気にしてなかったんだけど。今
月になって3キロもやせたって、喜んでるの。一月で3キロは多く
ない? どこか病気じゃないかしら?」「咲希さんそんなに太っ
てたっけ?」「いいえ、もともとほっそりしてたわよ。それがな
んでダイエットなんかに懲りだしたのかしら。さらにやせてるの
に『私太ってるでしょ。ほらこの腕、こんなにお肉がついてる。
もっとやせないと』って鏡の前で言うの。おかしいと思わない?」
「えー、それわねー。 ひょっとして拒食症?  一度お医者さ
んに診てもらったほうがいいかもね」「拒食症・・じつは私もそ
うじやないかと心配でね。あれ大変な病気だって聞いてるわ。も
し咲希が拒食症だったらどうしょう」。高田さんは青い顔をして
いました。



●行きすぎダイエットの歯止めになれば

 摂食障害(拒食症・過食症)の入口は、「私もやせたスマート
な体になりたい」という思いからダイエットを始め、だんだん
はまりこんでいくことから陥ることが多いと聞いています。
美しいスマートなモデルさんの体型にあこがれて・・。



 あこがれがこうじて「やせることは私の生きがい。何ものにも
代え難い。絶対に手ばなさないわよ」と、まで信じ込んでしまう
摂食障害という病。ヴォーグ誌の「やせすぎたモデルは使わない」
という宣言が、この流れに一石を投じる役割を果たしてくれるの
ではないだろうか? そして一人でも拒食症や過食症に苦しむ若い
女性たちが減ればいいな思っています。