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And This Is Not Elf Land

映画『ヘアスプレー』~マイノリティーの生きる道♪~

いくらなんでも、もう終わりでしょ(笑)


上映回数激減にもめげず、中学生sを引き連れて鑑賞してまいりました。でも、大きなスクリーンの部屋で観ることができたので、幸せ度も↑でございました。


ホントにこれねぇ…もっともっと中高校生に観てほしいですよ。とてもわかりやすい話だし、何よりも「人として正しい」ということを、最高のエンターテインメントにユーモアや洒落を交えながら伝えているし…十代の純粋な心に響くものはあると思うんですけどね。

ところで、
私のごく限られた体験の中から言うと、アメリカ人の「凄いな」と思うところは…
例えば、日本人なら「よほどの体験をした人じゃないと、ここまでは考えないだろう」みたいなところを、日ごろからごく普通に考えている点です。

例えば、この映画にも描かれているような、社会的マイノリティーに関する話題になったときでも、日本人なら「すいません。そういうこと考えたことがないのでわかりません」とおっしゃる方が多いけど(社会的地位とか教育レベルとは関係なく…)、あちらの人はどういうバックグラウンドの方でもしっかり自分の意見も持っている。

『ヘアスプレー』の日本公開以来、ネット上にある感想をザッと見渡してみると、重い人種問題はエンターテインメントに合わないんじゃ?…とか、あんな軽く取り上げてもいいのか?、、とか、はたまた「人種問題もあるけど、重苦しくなっていなくて良かった」とか…

あんたたち、マジですか~(笑)

いや、今ブロードウェーでやってるミュージカルを見渡したって「マイノリティーの生きる道」がテーマになっているものが多いでしょ。日本でもやってるWICKEDとか、AVENUE Qなんてそのまんま。JERSEY BOYSにしてった非WASPの貧しい若者たちのサクセスストリー。

そういう観点で言うと、特にWICKEDは面白いですよ。

緑の肌を持って異端としてこの世に生まれたエルファバと、光り輝く髪をもった美少女、ガリンダは「最初から異なる世界観を持っていて当たり前」みたいに描かれているのが好きだな(?)いや、現実としてそうでしょう…?エルファバは、悲しい運命とともにある人たちのことを無視できない。その分、不器用な生き方しかできなくなっていく。

(で、そういう人を「生まれながらの悪者」にしていいのか…ってところを、「国の威信を賭けて(?)」元本を見直したような感じですよね)

でも、二人が交流をもつ中で、「全てが備わっている」はずのガリンダも自分に欠けているものに気付くんですね。それは、恋人がひたむきに生きるエルファバに愛を感じ始めていると気づいたときから。そこで、ヤギの先生が「ガリンダ」と発音できずに「グリンダ」となってしまうのを見て、敢えて恋人の目の前で「ええ、私はグリンダでいいわ」とヤギ先生に言うんですよ。恋人に、自分も「マイノリティーの気持ちが分かる」人間だと分かってほしかったのです。しかし、もうすでに恋人には通じないんですよ。

でも、聞いた話では、日本版ではこのプロットは削除されているというか…最初からグリンダはグリンダなんですって?
なんで?
私、ここ一番好きなのに(?)

話がずいぶんそれたけど、映画『ヘアスプレー』で嬉しいのは、元は悪趣味なテイストで有名だったジョン・ウォーターズのカルト映画だったことですよ。みんなが目をそむけたくなるものをスクリーンに持ってきて、風変わりな人たちへの偏愛も露骨で…「見た目に違和感」のあるものを「これでもか」と引っ張り出してくるような~ま、世間一般には受け入れられにくかったでしょうね。

でも、そういう要素って、人間愛とか多様性を認め合う社会とか、そういう人類の普遍的な理想にまで、もしかしたら、転化するor(昇華する/大化けする)可能性を秘めたことだったんじゃないでしょうか。私は、けっこう昔から、そう考えていた人間なんですよ。他者に対する、ちょっと無責任で下世話な好奇心とか、そういうものを完全否定しちゃいけないと。(そういう中で生きるって、確かにタフなことではありますけどね)でも、最初から「こうあるべき」というところから出発したものは本物にはたどり着けないというか…。(ガリンダのポーズと同じ)

ですから、ジョン・ウォーターズの「カルト映画⇒舞台ミュージカル⇒映画」という一連の流れは、ま、作品論的には欲を言えばきりがありませんが、社会心理の側面から見れば、正しい「進化」の道を歩んでいるように思えるんですよ。

コメント一覧

Kumiko
http://www.mtvjapan.com/cinema/feature/hairspray/index.html
インタビューはMTVのページにありました。

たしかに、日本では無理そうですね。それこそ「重苦しく」なってしまいそうな…
master of my domain
Kumiko様、

来日インタビューでそんなことを言っていましたか…っていうか、そういうボケた質問をする側もちょっと(笑)

ブロードウェーでオープン間もない頃、主要キャストがTVに出ていて、キャスターが「このショーは社会の基準と外れる人たちのことがテーマなのよね」なんて言うと、トレイシー役のマリッサ・ジャレットが悪戯っぽく"What do you mean?"と切り返していたのが思い出されます。シーウィード役の子も、役にかける思いや人種差別の体験などを普通に語っていましたし。

とにかく、すべてが自然体でいいなぁと思いました。日本ではちょっと無理ですね。「遅れてる」とかそういうことではなく、基本的に違うというか。
Kumiko
またまたおじゃまします。

そういえば、来日時のインタビューで、ザックとニッキーが「この映画は人種問題を扱っていますが、そういうことについては調べましたか?」と訊かれて、アメリカの学校では公民権運動についてもちゃんと習うから、もともと結構詳しいんだよ、って答えてました。小学校から習い始めて、学年が上がるごとにだんだん突っ込んだ話も教わるようになるのですって。

今年のアカデミー賞でエレン・デジェネレスが「ユダヤ人と黒人とゲイがいなけりゃアカデミー賞なんて成り立たないのよ!」と言ってましたが、アメリカのショービズ界ってもともと、マイノリティの生きる道ってところがあるのでしょうね。「ヘアスプレー」も、関わった人の多くはマイノリティだろうし。映画版の監督もゲイだし。

「ヘアスプレー」のラストを見ながら、ずっと闘ってきた、これからも闘ってゆくつもりの人たちだからこそ、底抜けに楽天的になる資格もあるんだろうな~とか思いました。

とりとめない長いコメントでごめんなさい。
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